異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第40節 奴隷の引き取り①

 オルコット商会は昨日と変わらない活気を見せている。
 人の出入りと同じく、物の出入りも激しい。
 俺は表に回り、中に入る。昨日と同じ受付嬢にセシルを呼んでもらう。




「カズキさん、おはようございます」


「ああ、おはよう。セシル」


 朝は冷えるため、俺もセシルも少し厚着をしている。


「これが奴隷所有の書面です。これを役人に届けることで奴隷の所有権がチャド兄さんからカズキさんに移ります」


「そういうシステムなんだな」


 セシルから紙を受け取る。紙といっても俺が知ってる紙とは違う。生まれて始めてみるが、これが羊皮紙というものなのかもしれない。


「どうかなさいましたか?」


「ん? ああ、俺の国の紙とはやっぱり違うんだなって思ってね」


「ニホンではこれとは違う紙を使ってるんですか?」


「まぁね。今、手元にはないけど、リコさんの所で俺の国の紙を売ったから暇があったら見てみるといいよ。これぐらいのサイズの紙で1枚50エルグだってさ」


 俺は指でメモ帳サイズを形作る。


「そのサイズの紙で50エルグですか。少し値が張りますね」


「まぁこの紙に比べたら破れ易くて折癖がつきやすいけど、薄くて丈夫で俺の国では安価に手に入るものだから。ちなみにこの紙っていくらする?」


「安くて銀貨1枚、上質な物だと2枚ですね」


 安くて100エルグ、高くて200エルグか。メモ紙2枚で羊皮紙1枚に相当する。微妙な比較だな。驚く程高いというわけでもないし。元々、羊皮紙が高いのか?


「まぁ手間隙かかってたら値段も上がるか」


 と、勝手に納得する。


「これから役所に向かいますか?」


「ああ。すぐ行こう」


「なら、奴隷達を連れて行きますね。ここで待っていてください」


「ん? ああ」


 役所の手続きに奴隷も同伴する必要があるのかな。
 少しすると三人を連れたセシルが戻ってきた。
 昨日は付けていなかった濃い茶色の首輪を付けている。


「セシル、この首輪は?」


 俺は背の高い色白の奴隷、名前はハリソン・ロウだったか。そいつの首元を指差す。


「それは奴隷身分であると同時に誰かの所有物である証です。簡単に言うと、その首輪を付けていない奴隷は殺されても文句は言えません」


 まぁ死人に口無しだしな。まぁこの場合は用途が違うんだろうけど。


「この首輪の下には奴隷の印が刻まれています。もしも、首輪をしていない奴隷がその印を人に見られると命の保障はありません」


 おっそろしー。


「じゃあ、今の三人は大丈夫なんだな」


「はい。茶色の首輪は奴隷の証であり、その首輪に所有者の名前を刻むのが通例です。今はチャド兄さんの名前が刻まれているので、あとでこれにカズキさんの名前を刻みましょう」


 そういってセシルは用意していた首輪を三つ取り出した。


「それはいくら?」


「これはチャド兄さんからです。昨日の楽しい時間に対するカズキさんへのお礼だそうです」


「そっか」


 俺はそれを受け取り、リュックに入れる。


「カズキ様、私のお願いを聞いていただきありがとうございます」


 俺の胸に届くか届かないか程に小さなアイリスが俺に歩み寄り、深々と頭を下げる。


「気にするな。最初で最後の頼みになるだろうからな。お前はもう俺の物だ」


 俺はアイリスの頭をガシガシと荒っぽく扱い、髪をボサボサにした。


「はい。アイリスはカズキ様の物です」


 アイリスの背後には父親のハリソンと母親のロージーが険しい表情で俺を睨んでいる。


「アイリスとの約束は二人を買い取るまでだ。その後に俺が二人を転売しても何も問題は無いからな」


 一応、二人に釘を刺しておく。すると二人は視線を外し、俯いた。


「じゃあ、セシル。行こうか」


「はい」

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