異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第35節 檻の中の少女

 俺はこの時、檻に閉じ込められた少女をはっきりと認識した。
 腰まで届く金髪に碧い瞳。綺麗な顔立ち。薄汚れた服装が逆に少女の高潔さを際立たせる気さえする凛とした姿勢。
 知性と度胸を兼ね備えているような自信に溢れた表情。とても奴隷が見せる顔ではない。


「セシル、この子はいくらだ?」


「えーっと、ちょっと待ってくださいね……。金貨五枚ですね。アイリス・ロウ。父親がトール人、母親がタイン人の混血。年齢は二十五」


「二十五!?」


 俺より年上じゃねぇか。年上ロリとか……。いやまぁ……うん。


「価格が安い理由はタイン人の身体能力と魔力量が引き継いでいるため。どうやら、労働力としての価値は低いようですね。身体能力は母親から引き継ぎ、魔力量は父親から引き継ぐはずですが……妙ですね」


 身体能力は母親に似て、魔力は父親に似るのか。


「ちなみに母親と父親の値段は?」


「母親はロージー・ロウ、同じく金貨五枚。父親はハリソン・ロウ、こちらは金貨十枚。こちらはおおよそ相場どおりですね。所有者は私の兄ですので、購入されるなら私が仲介しますよ」


「ああ、ありがとう」


 俺がアイリスを買う算段をつけていると、


「旅人様、一つお願いがあります」


 アイリスが俺に歩み寄り、上目遣いをしてきた。年上の美少女に見上げられ、お願いされる。何かこう、いけない気分になる。


「なんだ?」


「私の父と母も旅人様に買い取っていただきたいのです」


 いや、別にいらんけど。


「その代わり、旅人様と絶対服従の契りを交わす事を約束します」


「「アイリス!」」


「絶対服従の契り!?」


 突如、アイリスの両親とセシルが大声を上げる。逆にこっちが声を上げそうになる。
 両親の二人がアイリスを抱きしめ、そんなことはやめろと諭している。それは放っておいて。


「なんだ、その絶対服従の契りって?」


「え、えーっとですね。奴隷との契約は普通、服従の契約を行います。奴隷は主人の命令に従いますが、自身の命を失うような命令には従わなくてもいいんです。ですが、絶対服従の契りは例え何を命令されようと主人の命令に必ず従います」


 文字通り、命を差し出すって事か。


「普通の奴隷ならば、主人の死後は開放されるのが通例ですが、絶対服従の契りを行った奴隷は従者と呼ばれ、主人が死ぬと従者自身も死にます」


 こわっ。忠犬か!


「絶対服従の契りは死の危険が伴う契約です。なので、どれだけの権力者でも従者を所有する者は少ないです」


 まぁ死ぬかもしれない契約はしたくないだろうな。


「服従の契約と絶対服従の契りを交わす方法ってのは違うのか?」


「服従の契約はれっきとした契約なので、奴隷という身分に落とされ、主人の所有物となり自由や権利を剥奪されます。一方、絶対服従の契りは魔宝石の力により従者に命令を強制させる事ができます」


 ここでも魔宝石か。万能だな魔宝石。


「大体分かった。セシル、今から商品を用意する。買い取ってくれるよな?」


「はい。もちろんです」

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