異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第4節 商人とのお喋り

 村長が俺のために用意してくれた部屋でくつろいでいると訪問客がやってきた。扉を開くとセシルが立っていた。
「こんばんわ。カンザキさん」
「ああ、こんばんわ。セシル」
「さっきの話の続きですけど、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
 さっきというと魔石とか魔族の話だったか。
「ああ、時間なら大丈夫。俺も聞きたいことがあったし」
 俺が使っている部屋はコートハンガーとサイドテーブルとベッドだけといった、いかにも泊まるためだけの内装だ。自然、腰掛けるならベッドとなる。よって俺とセシルはベッドで隣り合って座ることになった。男同士で気色悪い。しかも、セシルが童顔で中世的で美形だから腹立つ。こいつでもヒゲとか生えんのかな。
 そういう俺も童顔だけどさ。
「確か、魔族の話が最後でしたね」
「そうそう」
 魔宝石の説明を求めて、魔族の話になったはずだ。
「魔族は魔石、カンザキさんが手に入れたアレですね。あの魔石を核にした者達を魔族といいます。人間で言えば、脳や心臓のような代替できない物ですね」
 魔石を持つ者が魔族と。
「魔族には大きく分けて三つに分類できます。知性を持たない魔獣、人間と同じく知性を持つ魔人、そしてその魔人を使役できる魔王です」
 魔族には魔獣、魔人、魔王の三種類がいる。
「カンザキさんが追い払ったのは魔石の大きさから見て魔獣でしょう。大まかに言えば魔石の小さい物が魔獣、中くらいのが魔人、大きいのが魔王ですね。といっても、私は魔王の魔石を見たことがないんですが」
 魔獣よりも魔人、魔人よりも魔王の魔石が大きい。
「そして、魔石は魔法を使う時に魔力の代わりとして使うことができます」
 魔石は魔力の代わりで魔法が……え。
「魔法!?」
 俺はついセシルの説明を中断させてしまった。
「ええ、カンザキさんは魔法を見たことがないですか?」
「ないない」
「少し脱線しますが、魔法についても説明しますね。魔法は人間だれしもが持つ魔力を代価にして現象を起こす方法です。火をつけたり、水を生み出したり、風を起こしたりですね」
「俺にも使える?」
「使えるはずですよ。どれぐらい魔力を持っているかは個人の才能によりますが、明日の朝にでもお調べしましょうか?」
「魔力の量なんて調べられるんだ?」
「ええ、魔力を操れない人でも調べる方法がありますよ」
「それはどんな方法?」
「魔力を吸い取る石を口の中にしばらく入れると、吸い取った量によって石が光るんです。魔光石と呼ばれる鉱石なんですけど、それが明るければ明るい程多くの魔力を持っているということになります。魔力が操れる人なら触れるだけで調べられるんですけど、操れない場合は体内にしばらく入れる必要があるんです」
「なるほど」
「明日には魔光石を用意しますので、楽しみにしていてください」
「では、魔宝石の話の続きです。魔宝石は魔王や魔人が落とす魔石をある特殊な方法で魔宝石へと変質させます。その方法に関しては私も詳しくは知らないのですが、噂では専用の魔法があるそうです」
「魔獣の魔石じゃダメなのか?」
「そうですね。魔獣の魔石は魔力の代わりに使うぐらいしか使い道がないですね。あとは魔石そのものが綺麗なため、装飾品として加工されることもあります。いざという時に魔力の代わりとしても使えるのでお守りみたいな物ですね。魔宝石を埋め込んだ品々を魔具や魔装、魔剣と呼びます」
「なるほど。じゃあ、この耳飾りと首飾りに付いている魔宝石も元は魔人の核だったんだな」
「そういうことになります。ちなみにその耳飾りは銀貨50枚。首飾りは銀貨30枚で私は買いました」
 合わせて80枚。俺の手持ちは8枚……少ないなぁ。
「はい。私は商人ですから、カンザキさんのように言葉が通じない相手とは交渉が成立しないこともありますので、重宝しています」
 確かに、商人は商品と口先が武器だ。その口先が使えないと困るってことだろう。
「ありがとう。魔族や魔石や魔宝石については分かった」
「いえいえ。では、こちらからの質問もいいですか?」
「俺に答えられることなら」
「では、率直にお尋ねするんですが、カンザキさんはあれ程の治療道具をどうやって手に入れたんですか?」
 セシルは救急箱に関心を持っているようだ。
「あれはニホンで売っているものだよ」
「カンザキさんが手当をした他の村の方々から見せてもらいましたが、あのような生地を私は見たことがありません」
 ああ、包帯のことか。たぶん、取引できるなら取引したいってことだろうか。
「包帯のことだな」
「あれが包帯ですか?」
 認識の違いか。
 それにしても、現代アイテムを異世界で売ったらお金持ちになるんじゃなかろうか。まぁいくら儲けても現代で使えるお金じゃないと困るわけで……現代で物々交換なんて難しいし。魔石を質にでも出せばいいのかなぁ。
「どうやら、私が知っている包帯とカンザキさんが知っている包帯は全く違うもののようですね」
「まぁそういうこともあるだろうな。それより、あの包帯だったらどれぐらいで売れるんだ?」
「実物を見せてもらってもいいですか?」
 実物というと本来巻かれている状態のあのロール状の物か。
「どうぞ」
 俺は救急箱から新品の包帯を取り出す。
「これがニホンの包帯……」
 Made In Japanの包帯です。
「1ロールの長さは4.5メートルです」
「4.5メートルですか」
 何故かメートルで伝わっている。たぶん、翻訳で向こうの単位に変わっているのかもしれない。こっちの単位は知らん。
「……。これをまとめて仕入れる事は可能ですか?」
 薬局に行けば可能だろうけど、俺の預金残高による。こっちの金を円に変えられると一番手っ取り早いのになぁ。
 マジで魔石を質に入れてみるか。もしくはこっちの貴金属って手も有るな。金とか銀とか。
「大量に仕入れるには問題があるかな」
「問題とは」
「単純な話、元手がないんだ。ニホンとこっちじゃ通貨は違うし、為替が存在しないから両替もできない」
「そうですか……」
「ただ、金とか銀とかならニホンでも買い取ってくれる人が居るから、金細工とか銀細工があれば資金は作れるかな」
「金細工や銀細工ですか……」
「俺の手元にある魔石二つと銀貨四枚で用意できる金細工か銀細工はある?」
 まぁ無理ならこの銀貨をそのまま持っていくんだけど、不純物がどれだけあるか分かったもんじゃないしなぁ。
「そうですね……。これなんてどうでしょうか?」
 セシルは自身が指に嵌めていた金の指輪を俺に見せる。
「……これってマジもん?」
「純金の指輪ですよ。どうでしょうか?」
「これって、銀貨八枚以上の価値じゃない?」
「銀貨二十枚ぐらいの価値はありますね」
「これなら向こうで換金もできるだろうけど……銀貨8枚しかないぜ?」
「差額はそちらの箱に入っているものでどうでしょうか?」
 ああ、確かにこの中の物ならお金になるかも。
「この中にはどんなものがあるんですか?」
「えーっと、何が入ってたかな」
 風邪薬、解熱剤、胃薬、消毒薬、絆創膏、目薬等々。
「これなんてどうだ? 胃薬」
「この小さくて丸い物が?」
「腹痛や食あたり、下痢等のお腹に異常を感じた時に飲めばいい」
 黄色い箱に描かれたラッパのマークの有名なお薬。
「それはすごいですね。それも大量に仕入れることはできますか?」
「簡単だな。資金さえあれば。極端に言えば、お金さえあれば食料だって無尽蔵に供給できるし」
「では、よければその薬も仕入れてもらえませんか?」
「数はどれぐらい?」
「まずは十個」
 ぜんぜん大量じゃないじゃないか。
「いつまでに仕入れればいい?」
「早ければ早いほどいいんですが、何日ぐらいかかりますか?」
「明日の朝にでも用意できますよ」
「明日の朝!?」
「セシル、アニーが起きるから大きな声は厳禁」
「……すみません」
「まぁセシルが知っている魔法に近い事が俺にもできるから、それでニホンに戻れるんだよね」
「……分かりました。今日はこれぐらいにしておきましょうか」
 セシルは混乱しているせいか、話を中断した。
「じゃあ、明日の朝に」
「はい。よろしくお願いします」
 セシルは笑みを浮かべて去っていく。儲け話になりそうだと喜んでいるに違いない。

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