繋がりのその先で
1-7秘密の研究
「話って何ですか??」
時雨さんが俺に話すきっかけをくれた。
俺は先生にあったあと、つまりは放課後に俺、昴、時雨さん三人で噴水の庭のところで話すことにした。テストの解答の件もあるが、今は断然『数値化』の問題の方が優先度は高い。さらに、前に時雨さんが言っていたように、この二人はかなり賢い。だからこそこの二人に話して、一緒に考えるべきだと判断した。 
「...今からする俺の話は、到底信じられない事なんです。が、俺はそれを身にもって体験した。そしてそれを信じてもらうために、今から言うことをやってもらっても良いですか??」
時雨さんと昴は最初はポカーンとしていたが、俺の話が進むにつれ、真剣な表情になっていった。時雨さんがコクコクと首を縦に振る。
「では、まず時雨さんの『お願い』を俺に聞こえないように昴に教えて下さい。」
二人は不思議そうな顔をしながらも、俺の言葉通りに動いてくれた。...時雨さんのお願いを聞いたとき、昴はポーカーフェイスだったが、驚きを意図的に押さえていたのだろう。そこまで俺の言葉に従ってくれたのだ。
「では次に、何のためにやってもらったのか、説明します。」
二人は息ぴったりにゴクリと唾を飲み込んだ。
「えっと、まず。俺が昼休み、ぶっ倒れたんですよね??俺がぶっ倒れる前、本当はまぁぶっ倒れたわけではないんですが、もうすでに時雨さんのお願いを聞き終わっていたんですよ。どういうことかというと、時雨さんが『お願い』について話をしていたら、急に世界が『数値化』したんです。...あの、『事件』の時のように。」
二人は息を飲む。
「そして、多分ですがすべての物質が『数値化』され、昴や時雨さんの記憶も修正されたんだと思います。...一応確認ですが、二人ともそのようなログは残っていますか??」
二人は困った顔をしてから、「無いですね」「無いよー」と答えた。
「そうですか...。じゃあ、『既に時雨さんのお願いの話をした』ってのをとりあえず証明しますね。話が進まないので。時雨さんが願ったのは『この三人で時間跳躍の研究がしたい』であってますか??」
俺の言葉を聞いた瞬間、二人は目を見開き、そしてすぐにもとの顔に戻った。多分二人は俺がそれを知ることが出来た方法を探しているのだろう。が、 数十秒後、二人ともため息をつき、俺に「...合ってます。」「...合ってるよ。」と言った。
「...これでわかってくれましたか??」
二人とも、それぞれに縦に振る。そして、時雨さんが手をあげた。
「ちょっと質問して良いですか??」
俺は「どうぞ。」という。この質問が意外にも俺の盲点を突いてきた。
「ええと、世界が『数値化』したんですよね??では、春樹さんも数値化したんですよね??なら、何故その記憶があるんですか??そもそも、今まで手付かずだったのは『数値化』後に『数値化』前の記憶を保持している人がいなかったからですよね??」
俺はギョッとする。今度は俺が驚く番だった。何で今まで気づかなかったんだ。そもそも、『何故俺が記憶を保持しているのか』という根本的な問題に気づけていなかった。
「...そこは盲点でした。何で俺は記憶が改善されてないのか。それは正直、俺にもわかりません。」
そうだ。何故俺は『数値化』されなかったんだ??もしかすると、俺も『数値化』された後なのかもしれないとも考えたが、二人が『数値化』されている時、俺の体には何の異変もなかった。
...これじゃ、証明出来ない。
俺は俯く。
「...すみません。証明でき」
俺の声を遮るように彼女は言った。
「あの、私、信じます!!だって、私の『お願い』を事前に知っている事実は変わりないので。」
彼女は笑っていた。隣の昴もうんうんと首を縦に振りながらこっちを見ている。
...俺は本当に、恵まれているなと思った。
俺はネガティブになるのをやめ、前向きに考えることにした。
「「あの、そこでなんですが...」」
ん、声が重なった??
「お?どうしたの二人とも、息ぴったりじゃん。」
昴は相も変わらずいじってくる。
「あ、すみません、どうぞ。」
俺は時雨さんに先に言ってもらうよう促す。
「ええと、そこでなんですが、やっぱり三人で時間跳躍の実験をしませんか??春樹さんがもし『数値化』後にも『数値化』前の記憶を保持出来るのであれば、新しい何かが発見できるかもしれません。」
「...俺も似たようなものですが、俺自身、何故『数値化』後に『数値化』前の記憶があるのか、知りたいですし、『数値化』の現象の謎を調べてみたい。...なので、やらせてくれませんか??」
意見は一致した。
「...ん、まとまった??ったく、二人とも僕を除け者にして話すもんだから、入るタイミングが難しかったよ。...えっと、じゃあ研究はどこでやる??流石に公共の場では出来ないでしょ??」
昴が珍しくまともなことを言った。と、俺が思ったのがわかったのか、昴は俺を一瞬睨んだ。
「...そこが一番困りますね。何せ私の家もそこまで広くはないですし、ましてや研究となるとそれなりの部屋が必要です。」
時雨さんが考え込む。その横で昴は「あ、思い付いた!」と言わんばかりの仕草で顔を上げる。
「あ、そういえば春樹の家に研究室みたいなところがあったんじゃなかったっけ??ほら、お父さんが使ってたっていう。」
それを聞いた時雨さんは、急に顔をあげ、目を輝かせながら俺の方を向いている。
...あぁ、確かにお父さんがロボットを作っていた研究室みたいなところはあるな。
「...てか、よくそんなの覚えてるよな。ってロボットに言ってもあまり意味ないけどさ。」
自分で自分に突っ込みを入れるというのは少し変な気分だったが、昴に馬鹿にされるよりはマシだ、と思った。
「多分使えると思いますよ。」
それを聞いた時雨さんは、今までに無いほど喜んでいた。...何だろう、飛び跳ねたりしてる。こんなキャラだっけ??
「じゃあさ、夏休みまでには研究を始めて、夏合宿とかやろうよ!!」
昴がまた調子の良いことを言い出す。
「おお!!良いですね!!やりましょう!!」
時雨さんもそれに乗った。...そうなると、俺は断れなくなる。
「わかりました、やりましょう。」
ったく、部屋を片付けるのは誰だと思ってるんだよ。
「そういや、まだ春樹のお願い聞いてないよね??」
喜んでいた昴が、急にこっちを向いて言った。...正直忘れてくれているのなら、そのままやり過ごそうと思っていた。流石昴、そういうところはめちゃくちゃ鋭い。
「あ!!本当ですね。忘れてました!!」
時雨さんは本気で忘れていたらしい。...やっぱり昴がいらんこと言わなければ良かったのに。
さて、と。今頃になって俺はお願いを考え始める。お願いってなんだ??そもそも俺がして欲しいことなんてそう多くはない。...ん、例えば。
「...例えば、せっかく皆で『研究』するんだから、これからは敬語無しで、タメで話しませんか??」
言ってから、自分ながら良いお願いだなと思った。
「え、そんなことお願いで使うの??本当、春樹って変わってるよね。あ、コミュ障なだけか。」
俺がある程度考えて出した答えを、平気で貶す奴がここに一人いた。
「...まぁ、もっと自分のために使えば良いのにって思いますよね。流石にそれは...フフ」
...否、二人だった。
「...あーもう二人とも。今からは敬語無しで!!はいっ!!スタートっ!!」
俺は手で合図し、同時にこの瞬間が心から楽しいと思った。
これからの日々が楽しいものになるだろうと俺は思った。それと同時に、『数値化』の謎を探ることで、消えてしまった雪人の行方を探すことが出来るんじゃないかとも期待していた。
...記憶にはない、兄の存在。
一度でも良いから、会って話してみたい。
そんな思いが、俺の新しい一歩への力になっていた。
時雨さんが俺に話すきっかけをくれた。
俺は先生にあったあと、つまりは放課後に俺、昴、時雨さん三人で噴水の庭のところで話すことにした。テストの解答の件もあるが、今は断然『数値化』の問題の方が優先度は高い。さらに、前に時雨さんが言っていたように、この二人はかなり賢い。だからこそこの二人に話して、一緒に考えるべきだと判断した。 
「...今からする俺の話は、到底信じられない事なんです。が、俺はそれを身にもって体験した。そしてそれを信じてもらうために、今から言うことをやってもらっても良いですか??」
時雨さんと昴は最初はポカーンとしていたが、俺の話が進むにつれ、真剣な表情になっていった。時雨さんがコクコクと首を縦に振る。
「では、まず時雨さんの『お願い』を俺に聞こえないように昴に教えて下さい。」
二人は不思議そうな顔をしながらも、俺の言葉通りに動いてくれた。...時雨さんのお願いを聞いたとき、昴はポーカーフェイスだったが、驚きを意図的に押さえていたのだろう。そこまで俺の言葉に従ってくれたのだ。
「では次に、何のためにやってもらったのか、説明します。」
二人は息ぴったりにゴクリと唾を飲み込んだ。
「えっと、まず。俺が昼休み、ぶっ倒れたんですよね??俺がぶっ倒れる前、本当はまぁぶっ倒れたわけではないんですが、もうすでに時雨さんのお願いを聞き終わっていたんですよ。どういうことかというと、時雨さんが『お願い』について話をしていたら、急に世界が『数値化』したんです。...あの、『事件』の時のように。」
二人は息を飲む。
「そして、多分ですがすべての物質が『数値化』され、昴や時雨さんの記憶も修正されたんだと思います。...一応確認ですが、二人ともそのようなログは残っていますか??」
二人は困った顔をしてから、「無いですね」「無いよー」と答えた。
「そうですか...。じゃあ、『既に時雨さんのお願いの話をした』ってのをとりあえず証明しますね。話が進まないので。時雨さんが願ったのは『この三人で時間跳躍の研究がしたい』であってますか??」
俺の言葉を聞いた瞬間、二人は目を見開き、そしてすぐにもとの顔に戻った。多分二人は俺がそれを知ることが出来た方法を探しているのだろう。が、 数十秒後、二人ともため息をつき、俺に「...合ってます。」「...合ってるよ。」と言った。
「...これでわかってくれましたか??」
二人とも、それぞれに縦に振る。そして、時雨さんが手をあげた。
「ちょっと質問して良いですか??」
俺は「どうぞ。」という。この質問が意外にも俺の盲点を突いてきた。
「ええと、世界が『数値化』したんですよね??では、春樹さんも数値化したんですよね??なら、何故その記憶があるんですか??そもそも、今まで手付かずだったのは『数値化』後に『数値化』前の記憶を保持している人がいなかったからですよね??」
俺はギョッとする。今度は俺が驚く番だった。何で今まで気づかなかったんだ。そもそも、『何故俺が記憶を保持しているのか』という根本的な問題に気づけていなかった。
「...そこは盲点でした。何で俺は記憶が改善されてないのか。それは正直、俺にもわかりません。」
そうだ。何故俺は『数値化』されなかったんだ??もしかすると、俺も『数値化』された後なのかもしれないとも考えたが、二人が『数値化』されている時、俺の体には何の異変もなかった。
...これじゃ、証明出来ない。
俺は俯く。
「...すみません。証明でき」
俺の声を遮るように彼女は言った。
「あの、私、信じます!!だって、私の『お願い』を事前に知っている事実は変わりないので。」
彼女は笑っていた。隣の昴もうんうんと首を縦に振りながらこっちを見ている。
...俺は本当に、恵まれているなと思った。
俺はネガティブになるのをやめ、前向きに考えることにした。
「「あの、そこでなんですが...」」
ん、声が重なった??
「お?どうしたの二人とも、息ぴったりじゃん。」
昴は相も変わらずいじってくる。
「あ、すみません、どうぞ。」
俺は時雨さんに先に言ってもらうよう促す。
「ええと、そこでなんですが、やっぱり三人で時間跳躍の実験をしませんか??春樹さんがもし『数値化』後にも『数値化』前の記憶を保持出来るのであれば、新しい何かが発見できるかもしれません。」
「...俺も似たようなものですが、俺自身、何故『数値化』後に『数値化』前の記憶があるのか、知りたいですし、『数値化』の現象の謎を調べてみたい。...なので、やらせてくれませんか??」
意見は一致した。
「...ん、まとまった??ったく、二人とも僕を除け者にして話すもんだから、入るタイミングが難しかったよ。...えっと、じゃあ研究はどこでやる??流石に公共の場では出来ないでしょ??」
昴が珍しくまともなことを言った。と、俺が思ったのがわかったのか、昴は俺を一瞬睨んだ。
「...そこが一番困りますね。何せ私の家もそこまで広くはないですし、ましてや研究となるとそれなりの部屋が必要です。」
時雨さんが考え込む。その横で昴は「あ、思い付いた!」と言わんばかりの仕草で顔を上げる。
「あ、そういえば春樹の家に研究室みたいなところがあったんじゃなかったっけ??ほら、お父さんが使ってたっていう。」
それを聞いた時雨さんは、急に顔をあげ、目を輝かせながら俺の方を向いている。
...あぁ、確かにお父さんがロボットを作っていた研究室みたいなところはあるな。
「...てか、よくそんなの覚えてるよな。ってロボットに言ってもあまり意味ないけどさ。」
自分で自分に突っ込みを入れるというのは少し変な気分だったが、昴に馬鹿にされるよりはマシだ、と思った。
「多分使えると思いますよ。」
それを聞いた時雨さんは、今までに無いほど喜んでいた。...何だろう、飛び跳ねたりしてる。こんなキャラだっけ??
「じゃあさ、夏休みまでには研究を始めて、夏合宿とかやろうよ!!」
昴がまた調子の良いことを言い出す。
「おお!!良いですね!!やりましょう!!」
時雨さんもそれに乗った。...そうなると、俺は断れなくなる。
「わかりました、やりましょう。」
ったく、部屋を片付けるのは誰だと思ってるんだよ。
「そういや、まだ春樹のお願い聞いてないよね??」
喜んでいた昴が、急にこっちを向いて言った。...正直忘れてくれているのなら、そのままやり過ごそうと思っていた。流石昴、そういうところはめちゃくちゃ鋭い。
「あ!!本当ですね。忘れてました!!」
時雨さんは本気で忘れていたらしい。...やっぱり昴がいらんこと言わなければ良かったのに。
さて、と。今頃になって俺はお願いを考え始める。お願いってなんだ??そもそも俺がして欲しいことなんてそう多くはない。...ん、例えば。
「...例えば、せっかく皆で『研究』するんだから、これからは敬語無しで、タメで話しませんか??」
言ってから、自分ながら良いお願いだなと思った。
「え、そんなことお願いで使うの??本当、春樹って変わってるよね。あ、コミュ障なだけか。」
俺がある程度考えて出した答えを、平気で貶す奴がここに一人いた。
「...まぁ、もっと自分のために使えば良いのにって思いますよね。流石にそれは...フフ」
...否、二人だった。
「...あーもう二人とも。今からは敬語無しで!!はいっ!!スタートっ!!」
俺は手で合図し、同時にこの瞬間が心から楽しいと思った。
これからの日々が楽しいものになるだろうと俺は思った。それと同時に、『数値化』の謎を探ることで、消えてしまった雪人の行方を探すことが出来るんじゃないかとも期待していた。
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