惑星最後の日

こむぎ子

『宗教者』

俺が戦地から帰ってきたのはあの日から何年が経った頃だろうか。
無様にも生き残ってしまった。
哀れにも戻ってきてしまった。
この日常に、君のいない家に。
何回祈っただろう。何回殺しただろう。
彼女の望みは、遺言を、踏み潰して、俺は赤い足と生存というレッテルを貼られたまま。
空虚だ。ああ空虚だ。
誰もいない家庭に積もった埃は俺の翳る目によく似合う。
誰か、助けてくれ。
誰も、助けてくれはしなかった。神さえも。
等しく平等に死ぬ時は死ぬものだ。わかっているのに。
何か行動を起こさないと手首でも切りそうになるから、窓を開けて換気をした。
生きてるのさえ恥に思えるのに、やはりこの命は神か、君かが残してくれたものだと信じてしまう俺がいる。全く盲信だ。
白いカーテンが揺れる。
君のいない世界で、君が遺していったものはあまりにも多く、大きいものだ。
それが俺を形成する虚しさのひとつでもある。
空が綺麗だった。
雨でも降っていれば、まだ心は楽になれただろうに。

埋もれた生産性のない日々を一週間程だろうか。
貯金を削りながら君の影に抱きしめられ続けた。
テレビに目を移した時、ニュース速報が流れた。急にLIVEに変わり、我が国の大統領が何か発言をしていた。
「世界は終わる。」
なんて、あぁ、そうか。としか受け止められない。
そうか、世界は終わるんだ。
終わる……ふふ、ははは、ははははははは、ははは、はははは、はははははは!!はははははははははははははは!!!!!!!!
なんと素晴らしい!今日は祝日だ!!最高だ!!そうだろう!!なぁ!!!!
…なんてな。
これは世界の洗浄か。
国たちは戦争をし過ぎた。
人々は同類を殺し過ぎた。
これは罰だ。俺への罰だ。
全員仲良く死んじまうんだ。
良いなぁ。全く良いじゃないか。

俺は精一杯に窓を閉めた。カーテンを閉めた。そして君の部屋に行き、ベッドに潜る。
そして君のシーツに抱かれながら、ひとり、世界から隔離されるように眠る。

ここには俺と君しかいない。幸福な時間。
きっと逝き先は別れるけれど、だから、
今だけは。

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