無邪気な少女の異世界冒険記

敷島楓

第255話 二人の出会い【冒険者との出会い⑤】

そんな一面があったが、部屋の奥から凄く良い香ばしい匂いがする。近づいて来る度に、胸がドキドキしてしまう。初めての体験なので、ダイトさんの顔が上手く見れず下を向いてしまうほど、香ばしい匂いがする。


「またせたな?」


「ヒレ肉の塩焼きとタレ焼きじゃ、熱いうちに食べると良いぞ?」


ジュー ジュー ジュー ジュー ジュー ジュー


音が聞こえる事と実際に机に並んだ時の匂いが凄く美味しいぞと言っている事が伝わってくる。


このヒレ肉は、レッドミノから10%ほどしか取れない貴重な部分らしいと後々知るのだった。


「冷めないうちに、食べると良い」


ダイトさんが、サラダと二種類の肉を取り分けて、私に渡して下さる。初めて体験する予感が身体を巡るのだった。


一口目は、お勧めと言われた塩味から堪能してみると? 噛んだ瞬間に、肉汁と塩の香りが口の中にいっぱい広がり、気づいたら口の中から肉が消えてしまう程に、美味しかったのである。


次に、甘い香りのするタレに手を伸ばそうとすると? ロリーよ、お主の顔をみていると何故か嬉しくなるから、今回特別にこれで、挟んで食べるとよいと言って、よく見た事あるパンを取り出して、野菜とヒレのタレ付を挟んで手渡される。私は、衝撃が走る……渡されたパンが凄く香ばしい匂いと、さらに凄く柔らかい手触りをしている事に、驚いてしまう。


私は、このパンについて疑問が出たので、聞いてみる事にする。


「ダイトさん?」


「このパンて、どうしてこんなに柔らかいのですか?」


「私が食べてきた中で、こんなに柔らかいパンは、初めてです」


「そもそも一般的に食べられておるパン等は、長持ちするような作りであり、材料も少し違うのじゃよ?」


「それに、たぶんじゃが、儂が知ってる限りこのパンみたいなのは、この世に存在しないだろう」と話すダイトさんだった……。


「これは、儂が趣味で編出したパンじゃから、初めてなのは、当然なのと、ここの亭主と儂の知合いにしか食べて貰った事がないのでな?」


「お主の反応が凄く良かったぞ」と何故か褒められる。


そこで、一番大事な事を聞かなかったが、後々疑問に思う事が後に解る。何故その時に、渡されたパンが、出来立ての様に柔らかくて温かい物だったのかを聞くよりも食欲の方に、頭のなかで食べてみたいと言う事しか考えていなかったからだ。


気づくと、一瞬にして食べ終わっている。私は、食べるのが凄く遅い方なのだが、美味しい物てこんなに、早く食べれる事を知って新鮮に感じてしまう。


この表情を見ていたダイトさんとセツさんは、嬉しそうにニコニコと笑っている事に気付いた。


「どうして、二人して、私の顔をみて、笑顔なんですか?」


「久々に良い笑顔が見れて嬉しいと思ってしまっただけじゃ」


そう二人は、笑いながら答えてくれる。


次の料理は、オーブンで焼いているので、少しまってくれと言われるが……


オーブンなんて、王様の晩餐会で、出てくる料理などで使われる代物で、それを聞いた時は、驚きの連続だった。


いったい私が出会った彼は、何者なんだろうと普通は、思ってしまうが、世間を知らずに冒険者になった私は、そんな事をしらずにいる。


そろそろ出来上がるからと言って、セツさんは、調理場へと戻っていく――


質問の連続で、何か悪い気がしたが、好奇心の方が優先してしまいついつい聞いてしまう。


「すみません、ダイトさん?」


「どうした?」


「喉でも乾いたのか?」


それならこれをやろうと注がれる。紫色の様な少し赤みが混じっている飲み物をグラスに入れて渡される。渡されるがままに、一口飲んでみると……葡萄の濃縮されたような甘味が、口いっぱいに広がり、また感動をしてしまう。飲み終えてから気持ちを落ち着かせてから先ほどの話を聞いてみる事になる。


「あの……先ほど、セツさんが、オーブンと言ってましたが、王族経由の方なのですか?」


「セツがか?」


どうだろう、儂の親父の知合いじゃからもしかしたらて事もあるじゃろうが、セツ……セツであるからあまり気にした事がないの~ と言われるが、気になるなら聞いてみると良いとも言われた。


セツさんがこっちに戻ってくると、もう少し時間がかかると教えてくれる。その時に、先ほどの話題を聞いてみる事にした。


「セツさん質問いいですか?」


「どうした?」


「味が駄目だったか?」


「そんな事は、なくとっても美味しかったです」と満面な笑顔で言う私が居る。


「それなら何の質問じゃ?」


「お主が使っておるオーブンについて気になったらしいのだが、セツよ昔に、王族になった事は、あったか?」


「いや、普通の冒険者していたからそんな記憶は、ないぞ?」


「そもそも何故に、オーブンが、王族の物と思った事が不思議なのじゃが?」


「オーブンは、昔から王族や貴族達より先に、国民が使っていた物で、確かきっかけは、旅の途中で、大雨にあって、近くの食堂で出されて食べたのがきっかけで、使う様になったとなら聞いた事があるぞ?」


「なるほど~」と私は、凄い事を聞いてしまったと内心思ってしまうのだった。

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