運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.if 14話 時間稼ぎ

 ーヴァルキリーsideー



「ナにすンだお前ェ!」

 恐らく先程私の体と意識を吹き飛ばしたのはこいつだ。こいつとは分かってはいるものの、どうやってそのようなことをしたのかは検討もつかない。

(油断できない、、、)

 冷や汗が伝うのを感じながら相手の出方を窺った。

「おレサマの邪魔をするナァ!」

 狂気を感じさせる怒号を叫びながら突進してきた。尋常ならざる速さでも動きが単調ならば対処は難しくない。

 私がこいつに苦戦した理由は驚異的な身体能力ではなく、卓越した技術だ。だから、いなすも躱すも造作もない。

 そのばずだった。

「うぐっ、、、」

 やつが私に接近し、間合いに入った途端に放たれた斬撃は完璧に防いだはず。にも関わらず身体中が浅いとはいえ無数に斬り刻まれていた。

「今、なゼと思ッたカ?あァ言わなクても分かル。それハナ」

 言っている途中にまた接近してきた。こちらも先程と同じ過ちは起こさない。今度は自分の周りを強風を起こさせこちらからも接近した。

 そして剣と剣がぶつかる瞬間やつの体が消えた。いや、消えたのではない。これは、

「後ろか!」

 そう思い振り向きざまに剣を振り払ったが空を斬るだけだった。直後嫌な予感を察し、力いっぱい後ろに飛んだ。

 ほぼ同じ瞬間私のいた場所は粉塵に覆われた。一体何がと思考する余裕もなく粉塵から人影が出てきた。

 またやつと剣を交え、拮抗状態に陥った。

「まサカあれを避けラレるとハナ」

「はぁ、はぁ、、、。今度はこちらの番だ!」

 言うや否や剣に力を入れ相手の体制を崩した。間髪入れず次の斬撃を繰り出す。

 体制を崩しているにも関わらずこれをやつは凌いだ。ここまで予想の範囲内だ。

 今やつは私の剣に集中している。故に下ががら空きだ。そこに私は蹴りを入れようとした。しかし、やつは蹴りを避けるように一歩引き体制を立て直した。

「分カりやすイなァお前ハ。攻撃の直前ニ必ず目線がソこを向ク。おかゲで対処シやすイ」

 なるほど、どうやら私は遊ばれていたようだ。だが、それは間違いだったな。

「ふぅ」

 息を吐き捨て私は構えを解いた。

「ハハ、潔く負ケを認めるカ」

 だから言ってやるのだ。やつに最大の侮蔑を持って、

「さらばだ。族の長よ」

「あァ?」

 そう言い放った私の目にはやつの後ろから斬り掛かる人物が映っていた。

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