運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.if 8話 恐怖する脳

「一体、何、、、が?」

 アベルの用いた何らかの手段によりミレイは身動きが取れなかった。

「ほう、その状態で話すことが可能か。中々大したものじゃのう小娘」

 コツコツとわざとらしい足音を立てながらステージへと歩いていくアベル。その姿を見ている観客達は彼女に様々な視線を送っている。だがそれも数秒のことだった。

「やはり不快じゃの、この視線は」

 彼女が言うや否や忽ち観客は深い眠りに落ちた。突然の静けさにミレイは困惑と動揺を隠すことが出来なかった。

「ミレイに何をする気?」

 その問いにアベルは応えない。

「ねぇ、何をする気なの?」

 再度問うても聞こえてくるのはただ足音のみ。

「ねぇ、悪かったから、もう辞めるから!」

 いつまでも応えが無いことに更に焦燥したミレイは理性を無くしつつあった。

「や、止めて!こっちに、来ないで!」

 そして、次の瞬間。

「あっ、、、」

 突然彼女は倒れた。あまりに唐突な事に玲音は困惑した。

「なにかやったの?」

「何もしておらん」

 アベルの言葉に嘘はなかった。彼女は言葉通り何もしてはいなかった。ただ、歩いていただけだ。

 やけに長いステージまでの通路を渡り終え、玲音の拘束具を外していくアベル。外し終えたあと彼女は言った。

「時間が無い。早く行こうかの」

「ありがとうなの。、、、どうやってさっきこの子を気絶させたの?」

「それはじゃな、、、まあ良い。道すがら説明しようかの」

 彼女曰く、人の脳は恐怖に対して非常に脆いとの事。脆くなるのは脳に対し非常に高負荷がかかるからだと。

 無論、短時間であればそれほどの影響は受けない。が、長時間ともなれば話は別だと。

 高負荷がかかっている状態を維持してしまうと脳の処理が遅れやがて気を失う。脳内に記憶媒体を残す地球人であれば尚のことその効果が増幅され、一分と経たず気絶すると。

「もうすぐじゃ、もうすぐ付くのじゃ」

「どこなの?」

 アベルはその問いに関してすぐには応えず、一呼吸置いてから応えた。

「お主の望むところじゃ」








 言い忘れていましたが、Episode 神抗は大きくわけて前編と後編に別れています。

 厳密に言うとまた違ってくるのですが、大体この認識で問題ありません。

 前編は皆様知っておられるようにEpisode 狼煙、Episode欠陥からの派生話で、後編がEpisode 力こその派生話となっております。

 と言っても、あくまで前後編でEpisode 神抗なのでわざわざ分ける必要もないですね。

 大きな区切りとして見てもらえればなと思います。

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