運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.3 4話 不測の事態

 抗命たちが捕虜を助け出した頃、また別のグループも各々の役目を果たす為行動していた。

 ある者は同じく捕虜の救出、またある者は別の地での工作など様々だ。

 そして、ここにもまた同じ人間がいた。

 コードネーム「アサシン」と呼ばれる男だ。彼は他のメンバーとは違い特殊な任務に就いていた。

 その任務とは、

「おい!そこにいる奴、そこで何して、ウッ!」

「チッ、全く多すぎなんだよ」

 捕虜の救出路にいる護衛官達の無力化だ。彼らと組織の間に繋がりはないが、捕虜が通る上で邪魔な存在であることに変わりはない。

 補足だが、護衛官と探索隊員は全くの別物である。探索隊とは違い護衛官はただ宇宙船を守るためだけに存在する。

 その為、船に害をなそうとするものには容赦が無い。

「さて、と。これで42人目か。まだ数時間と経ってないのにな」

 彼が独りごちるのも無理は無かった。なぜなら、敵でない人への対処に慣れていないからだ。

 絞殺、刺殺、撲殺、銃殺、斬殺、、、。かつて己の欲に従い数え切れないほどの人を殺してきた。だが、ついぞ峰打ちのような真似はしたことは無かった。

 そんな彼でも1つ試したいことがあった。それが神経毒による無力化だ。

 神経毒とは、血の巡りを利用し、身体中の神経に作用し麻痺させてしまう毒のことを総称している。その為、長時間効くものや遅効性のもの等効果は様々だ。

 その中で彼が選んだ神経毒はパラライジキシンという毒だ。即効性に富んでおり、体内に少量でも取り込むと瞬時に意識が無くなる。

 その分効いている時間は短く、解毒体質の人間ではものの数分で目を覚ますこともある。

 その時数十メートル先の角から人影がぞろぞろと現れた。だがアサシンは怯えることも無くその場にたち続けた。

 やがで彼らがアサシンの目の前まで来ると一人の青年が声をかけた。

「任務お疲れ様です!こっちはもうこれで最後なので次に移ってもらって構いませんよ」

「そうか。、、、わかった、しくじるなよ」

 彼はそう言うとその場から忽然と姿を消した。一連の出来事にざわつく捕虜たちだったが、青年の掛け声で冷静さを取り戻した。








 そんなことから一時間経った頃。

 アサシンの特別任務が終わった。これからは捕虜救出グループの中から戦闘特化なメンバーが集合し、探索隊のリーダーを狙いにいくだろう。

 だから彼にはそれまでにリーダーの動向を監視する役目があった。しかしここで予想外のことが起こった。

 原星人の反乱だ。今まで何度か起きたとされる反乱だが、宇宙船にまで乗り込まれたケースは初めてだ。

「なるほど、ならば腑に落ちるという事だ」

 彼が一人納得していると自分の後ろ、と言ってもかなり離れた距離に二人の原星人が走ってきているのを知覚した。

 そして、自分の思いついた妙案に頬を緩ませるのだった。








 お久しぶりです、作者です。

 わざわざ登場したのは一つ読者様方に誤解されないようにと配慮する為です。

 今回神経毒の一つとして記載した「パラライジキシン」は存在しないものです。

 博識な読者様ならばもうお分かりかと思いますが、「パラライズ(麻痺)」と「キシン(なんか毒によく付いてる語尾)」を組み合わせたものです。

 「ズ」ではなく「ジ」にしたのは、なんとなく語呂が良かったからです。


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