運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.2 29話 力ある者

   ースミスsideー

「オラオラァ!野郎どもを殺ったように俺を殺ってみろォ!」

ーー強い

   それが一番最初に頭に浮かんだ言葉だった。ただ大きいだけの鬼とは違う。

   この連撃のうちの一太刀をとってもそうだった。その一太刀は避けるか受けるかしなければ必ず致命的な傷を負う場所に放たれている。

   こんな芸当は生半可な戦闘を繰り返してきてはいないということに他ならない。様々な場所で、数多いる種族と殺し合いを続けてきたからこその技だ。

   鬼ばかりを相手にしてきている鬼滅団には少々荷が重い相手だ。

   そう、「鬼滅団には」

「はあああ!!」

(そんな大きな声を出したら相手に気づかれるだろう、、、)

   まあ、例え静かに背後に回ったとしても勘づかれただろうことは言うまでもないが。

   その声の主は驚くべきことについ最近助けたばかりの鬼滅団の団長だった。名前は聞いてはいないが、2つ名は確かヴァルキリーだったか、、、。

「立ち会いに乱入なぞ、感心しねぇなァ嬢ちゃんよォ!」

   ガギィィィン!!

   一際大きい音を立てたその鍔迫り合いはそう長くは続かなかった。なぜなら、海賊が受けた時の力よりさらに強い力で押し返したからだ。

   ヴァルキリーはその力を利用し後ろに大きく下がった。丁度そこはオレの隣だった。

「助太刀に参りました、恩師スミス殿」

   恩師、という言葉に言い慣れていないせいか、一瞬言葉が出なかったがなんとか紡いだ。

「、、、助太刀と言う割にはあまり役に立てなそうだが?」

   役に立てないと言っても助けた時よりも格段に強くはなっている。だが、相手が相手だ。

「うっ、、、。そう言われるとなんとも言えませんが。支援程度なら問題ありません。」

「相談は終わったかァ!」

   海賊は既に武器を構えていた。よく見ると奴の得物は刀のような形をしていた。

   しかし、刀というには些か刀身が太い。

「俺の武器が気になるかァ?良いぜ、冥土の土産に教えてやらァ」

   そう言いながら更に得物に力を込めた。

ーー来る!

   そう確信した俺は右肩に担ぐように大剣を構えた。対してヴァルキリーは腰だめに剣を構えていた。

「これは力ある者の証、サーベルだァ!よく覚えとけ!!」

   そう言いながら猛スピードで突進してきた。








追記:一部表記の訂正(2021/2/13)

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