運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.2 14話 叱咤

 先週は更新出来なくて申し訳ございませんでした。今後はこのようなことは無いように善処します。

 では、本編をどうぞ。








 ーヴァルキリーsideー

「酷い、、、」

 それは誰からともなく発せられた言葉だった。言ったのは私かもしれないし、他の誰かかもしれない。

 ただ、誰が言ったとしてももはやそれは問題にはならなかったと思う。なぜなら、今眼前に広がる光景を見れば誰でもそう考えるだろうから。

 謎の泥人形---ひとまずはゴーレムと名付けよう---に襲われ、1人の男に救われた私たちは、その後ゴーレムを調べ、死傷者の弔いや救護に専念した。約1時間掛かったそれを終わらせた後、王都へ帰還していた。

 そこへ斥候のファアルが話しかけてきた。内容は、東に位置する城、トラデリー城の様子がおかしいというもの。

 おかしいという憶測のみで軍を動かすことは出来ないので、私を含めた数人で調査をすることにして、ファアルに軍のその後を任せた。

 そうして今に至る。普通なら子供達が走って遊んでいるような広場は、大勢の人が倒れ、それに比例するように大量の血が流れていた。

「せめて、葬ってあげましょう。少しでもここにいた人たちが安らかに逝けるように」

 私はそう言い死者を運びながら生存者を探した。この惨状の中生きている人なんていないかもしれないけど、探さないという選択肢は最初からなかった。

 そうして、運んで、運んで、運んで、、、。100を越えた辺りからは数えていなかった。ただ、私の願いが通じたのか1人だけ生存者を発見した。

 青色の髪をしている少年だった。背中にカームも使っているカタナという物と槍のような武器を持っていることから、この城のスレイヤーだと思われる。また、大事そうに猫の仮面を抱えていた。

 何故、彼だけが助かったのは分からないけど、貴重な生存者には違いない。だから、少年は死体とは別の場所に安置した。

 その後、城の中の死体を全て埋葬し、少年を王都に連れ帰った私たちに待っていたのは、暖かい歓声ではなく、衝撃的すぎる1つの事実だった。








 ーアネモニーsideー

 白い空間にいた。

 それ以上、何も感じられなかった。

 いや、正しくは感じたくなかったのかもしれない。

 失ったものが大きすぎた。それだけでこんなになってしまうものなのかと思った。

 ただ、好都合だと思った。

 なぜなら、何も見たくない、何も聞きたくない。そんなことを考えている自分にとってこれほど良い場所はないと思ったからだ。

 だけど、そんな期待はある1つの言葉によって掻き消された。

「そうやって、現実から目を背け続けるのかえ?」

「見たくないし、聞きたくもない事実を受け止め続けなくちゃいけないのなら、そんな現実はいらない。僕が欲しいのは、暖かい現実だよ」

 声の主は、分からないけど僕は答えた。

「ほう、暖かい現実とな?それはどんなものじゃ?」

「決まってる。親がいて、兄妹がいて、友達がいて、そして、恋人がいるのが暖かい現実だよ」

 何故か声の主の質問には正直に応えようと思った。

「そうかい。まあよい、本題に入ろうか」

 どうやら、まだ話は続くらしい。早く1人になりたいという気持ち以上に今は声の主の話を聞きたかった。

「お主は何故自分がこの世に存在するか考えたことはあるかえ?」

「そんな事、考えたこともないよ」

「そうじゃろうな。普通、こんな事考える必要もないからの」

 この人は何が言いたいのだろう。純粋にそんなことを思った。

「今、何故こんなことを聞くのだろう、と思ったじゃろ?」

「ッ!!なんで、わかった」

 さっき思ったことを僕は口にしていない。つまり、相手は心を読める可能性がある。

 そこで僕は初めて顔を上げ、声の主の姿を見た。声の高さからして、少女だと思っていた僕の予想に違わず声の主は少女の姿をしていた。

「心が読める、、、か。そんな大それた能力を持ってはいないのじゃ。初めから決まっていたことを話しただけなのじゃ」

「初めから決まっていた?」

 なんだ?この少女は何を言っているんだ?

「、、、お主は、運命さだめを信じるかえ?」

「そんなもの信じる必要ない」

「そうか。なら、起きたら刀を取りに行くが良い。お主はちと特殊でな。2本目・・・を持てるのじゃ」

「2本目?」

 また話が変わった。一体何を伝えたいんだ?

「そろそろ時間じゃ。期待しておるぞ?」

 そこで僕の意識は途切れた。

 次に意識を覚醒させたのは見知らぬ部屋のベットの上だった。

「知らない天井だ」

 何故か知らないけどそう言いたくなった。

 身を起こすとこの部屋は装飾が派手に施されているのがわかった。トラデリー城の城主の部屋以上に煌びやかな感じだ。

 次に自分の体に目をやった。いつものスレイヤーをやってる時や着慣れた私服ではなく、新品のような綺麗な寝巻きを着ていた。

 その事に疑問を持ちながら視線を左に向けた。そこには大きな窓があり街を一望出来た。

 街が一望出来るということは相当な高さの建物にいることになる。そして、こんな風に城下町を太陽のもとに置き、その周りを大きな壁で囲う場所なんて人類生存域の中で1箇所しかない。

 そこは王都だ。でもそんなことはどうでもよかった。そんな珍しい街並みの事を頭から追い出すくらいの物が視界に映ったからだった。

 それは猫の仮面だった。ベット脇にある小さなランプ台の上にそれは置かれていた。

 そして思い出した。あそこで起こった事を、あの惨劇を。

「あ、あぁ」

 そこで僕は声にならない叫びを上げた。すぐに誰かが僕の元に駆け寄ったがそんなことは関係なかった。

「守りたかった!戦えなかった!怖くなった!戦えば、守れたかもしれなかったのに!誰も守れなかった!自分だけ生き残った!」

 言いたい事は全部言おうとした。そして、しばらくして言い終えた頃に、声をかけられた。

「それで全部か?」

「え?」

 声をかけられたかと思ったら、そんなことを聞かれた。それに応えようとした瞬間、

「がぁ」

 銀色の髪の女性に突然殴られた。急に何をするんだと言おうとし、体を起こした時立て続けに怒声を浴びせられた。

「それで満足か!あーだこーだと終わったことを嘆いて満足したか!それでどうする?これからはどうするんだ?」

 その怒声に僕はなにも返すことが出来なかった。

「確かにお前は何が出来たかもしれない。それだけの力があった。でもやらなかった!覚悟が足りなかった!だから、守れない!これからも!何もかも!」

 何故かその声には悲痛な叫びが混じっていた。まるで僕と同じようなことが昔あったかのように。

「私はな、お前みたいな軟弱者が嫌いだ。大したことを何もせず、ただ過去に嘆いてばかりいるお前みたいな人間が大嫌いなんだよ!何時だって悲劇の主人公気取りばかりして、重要な時に何一つ出来ない奴など生き恥にも程がある!」

「僕は、悲劇の主人公気取りなんか、、、」

 言い訳をしようとした。でも返って逆効果だった。

「してないとでも言うか!では今のお前をなんと言う?結局お前は自らの出来事に酔ってるだけの弱者だ!何一つ事を成し得ない臆病者だ!」

 彼女の言っていることは全て正しかった。だけど、何故か彼女自身にも言い聞かせているような気がした。その事について問おうとしたけど、偶然か察せられたかは分からないけど、去っていってしまった。

 去っていく時の横顔はとても切なそうだった。だけど、同時に小さな声で掛けられた言葉があった。

「どうか、強く生きて、、、」

 その声は耳を傾けてなければ聞こえないような声だった。怒声を浴びせていた手前、言いづらかったのだろう。

 いや、そもそも僕が嘆いていた時から声をかけたかったと思う。でも僕が冷静に話せるような雰囲気ではなかったからあんな乱雑な対応をしたのだろう。

 そういえば、夢の中で誰かと話していた。内容はほとんど覚えていないけど、一つだけ覚えている。

 刀を見つけること。多分だけど、近くにあると思う。それもこの城のどこかに。

 さっき彼女に結構な力で殴られたけど、歩けない程じゃない。

 その後は自分でも不思議なくらい迷いなく歩いた。そしてたどり着いたのは1つの部屋だった。ドアを開けるとそこは武器庫だった。

 数々の武器が保管されていたけど、一角は使い物にならないような武器達が雑多に置かれていた。

 その中から1つの武器を手に取った。それは錆が酷い一振の刀だった。流石の僕もこんなどんな名匠でも手入れできない刀を使えるとは思わなかったので、戻そうとした。

 その瞬間、その刀は突然光出した。光が収まったあと手にあったのは持ち手から剣先まで紫の刀だった。また、刃の部分には青い波紋があった。

 そんな刀身になった途端これは神器なのだと確信した。今までよりも力がみなぎってくるのがその証拠だった。

 だけど、前にもこんな感覚を味わったことがあると思った。それは10歳くらいの頃、突然の出来事だった。その日を境に道場での修行が楽になった。

 それを師匠に話したら、修行がさらに厳しくなったのは苦い思い出ではあるんだけど。

「なるほど、だから2本目・・・なんだな」

 そこで夢の内容を思い出した。2本目とはつまり、神器を2本持っているということだということだ。

 これで親を探す旅が楽になると思ったけど、旅はもう辞めようと考えた。なぜなら、闇雲に旅をしていても探し出すのは至難の業だと思ったからだった。元からそれは覚悟していたけど、もっと効率のいい方法を思いついた。

 それは、鬼滅団に入ることだ。鬼滅団に入団すれば、今までよりも情報が沢山入ってくるはずだ。

 それに今僕は生きる理由をもう1つ見つけた。鬼を全て狩り尽くすこと。鬼滅団なら、スレイヤーよりも鬼を沢山狩るから、こちらの意味でも鬼滅団に入団すると好都合だ。

 その日鬼滅団に入団申請したけど、申請した瞬間に入団が決まった。何故かと聞いたら、帰ってきた言葉に衝撃を受けた。

「鬼滅団第2師団が全滅したからです」








 勝手ながら、ヴァルキリーの見た目を変えさせて頂きました。

 金髪は銀髪に、碧眼は蒼眼に変わりました。思えば、白銀の天使にも関わらず、金髪というのは中々クレイジーでしたね。

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