運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.2 外伝 夏祭り

 攻略が行われているその頃、トラデリー城では祭りが催されていた。トラデリー城は500年という歴史の中で、花火産業が発達していた。その為、夏祭りでは各地から大勢の観光客が訪れるのだ。

 そんな中、青い花が散りばめられた浴衣を着た少女がある少年に祭りの案内をしていた。

「あ!ねぇねぇアモ君。あれやって!射的!」

 少女の名はイヤング・ダ・プリミチャー。仲の良いもの同士ではイアと呼ばれている。

「えぇ。あんなの無理でしょ。絶対倒れないように設定されてるって」

 そう応えるのはアネモニー。スレイヤーを生業なりわいとしている二刀流使いである。

 そんな二人の会話を聞いた射的屋のおじさんはニヤリと一瞬顔を歪ませた。また次の瞬間には商売顔をし、アネモニーに言った。

「お、あんちゃんやるかい?そうだなあ、彼女連れみたいだし、今なら1回まけといてやろう。どうだ?」

「いや、いいですよ。僕は射的なんてやったこ、、、」

「やりまーす!おじさん、お願いね!」

 アネモニーが最後まで言い終わる前に、イアがやることを宣言してしまった。こうまで言われてしまっては、もう後には引けないようで、半ばやけくそ気味にアネモニーは返した。

「あー、分かりました。やります」

「はいまいど。じゃあ通常5回のところ今回限り6回にしとくよ」

 そう言いながら銃と弾を渡した。もちろん実弾銃なんていう代物はこの時代にはないので、子供のおもちゃみたいな形をしている。

「と、言われてもなぁ。こんなの持ったこともないし、狙い方なんて分からないよ」

 そう、生まれてこの方、刀と薙刀なぎなたしか武器を扱ったことがないため、たとえおもちゃであったとしても使い方がわからなかったのだ。

「それじゃあ1回だけお手本見せてあげるねー」

 唐突にイアがそう言って、アネモニーの手から銃を取った。その一瞬射的屋のおじさんの顔が曇ったのをアネモニーは見逃さなかった。

「こうやって持って、狙いを定めて、、、引き金を引くだけ」

 ヒュン

 勢いよく飛んだ弾は3段ある景品棚のうちの中段の左側ペンギンのぬいぐるみに当たり、倒れた。

「ね?簡単でしょ」

 その光景にアネモニーは固まって見て、射的屋のおじさんはやられたと頭を抑えていた。イアはそのまま銃をアネモニーに返し、逆に射的屋のおじさんに小声で囁いた

「アモ君を吊った罰よ」

 その言葉に射的屋のおじさんが悪寒を感じていた時、アネモニーはイアを質問した。

「それじゃあ、何がいい?」

「え?何が?」

「あの景品の中で何か欲しいものはあるかってこと」

「へー、取れる自信でもあるのかな?」

 一言挑発的に言ったが、その後本音を口に出した。

「それじゃあ、上段の左側に置いてある猫の仮面が欲しい!」

「分かった。取れる自信はないけど、やってみるよ」

 この時のアネモニーの本音は欲しいものがないから、何か目標が欲しかったのだ。イアに対しての好意ではない事が何やら、彼らしいとも言える。

 まあ、そんなことは知らない周りの人からすればただの恋人にしか見えなかっただろう。

 そうして一発目を打った、が、見事に外した。ある意味予想通りな事にイアは笑いをこらえていた。アネモニーは何故外れたかを真剣に考えていた。

 、、、射的屋のおじさんはまだ固まっていた。

 二発目、三発目を打ったが、どちらも外れて、四発目にしてようやく仮面の端っこをかすった。

 そこでアネモニーは感覚を掴んだようで、

「いける」

 と呟いた。そして、有言実行を体現するように、五発目にして彼は猫の仮面を倒すことが出来た。

「嘘、、、。失礼だけど期待してなかったのに。でも嬉しいな」

 イアが呟いたのは聞こえなかったのか、射的屋のおじさんにアネモニーは言った。

「あの、景品倒したんですけど、貰えますよね?」

 そこで本心状態から脱することが出来たおじさんはその言葉で、また驚いていた。

 まさかと思っていたおじさんだったが、弾が景品棚の上に五発落ちているのを見て、本当に当てたことを察した。

 こうして、無事ペンギンのぬいぐるみと猫の仮面を手に入れた二人は祭りのメインイベント、花火を見るための場所を探していた。

 途中にある屋台で、たこ焼きやかき氷、わたあめなどを買いながら探し、中々良い場所を見つけた。

「あ、良かったあ、花火始まる3分前だよ!これで落ち着いて見られるね!」

 射的屋で取った猫の仮面を頭の左側につけ、ペンギンのぬいぐるみを抱いているイアはそういった。

「そうだね。でもわざわざこんな所に来なくても人が集まってた場所で見てもよかったんじゃない?」

「んもー、分かってないなー。落ち着いて・・・・・見るにはこういう人気のない場所の方が良いんだよ?」

「そういうものなの?」

「そーゆーもの!あ、始まったよ」

 イアがそういうや否や夜空に花火が咲いた。それは1発や2発というものではなく、始まって間もないのにというのにも関わらず既に十数発もの数に及んでいた。

 青や赤、黄色や白という色とりどりの花火は、殺伐としたこの世界の中でも娯楽があることを確かなものとしているのかもしれない。








 皆さんは夏祭り、もう行きましたか?私は2回行きました!家族とですが、、、。

 ちなみに屋台は、たこ焼き屋に限り絶対2店舗以上周ります。

追記:修正(2019/12/13)

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