運命には抗えない
ep.1 25.5話 覚醒
これはifストーリーです。本編とは全く関係ありません
また、ep.1とはEpisode 狼煙の事を指します。
以上の事を了承の上ご愛読下さい
ー音無 零sideー
殺られた、、、。
そう、俺はこれから死ぬ。ただその事実だけが残る。
「よくやった、優希。しかし、これはやりすぎじゃないか?」
誰かの声が聞こえる。とても耳障りな声だ。
「すいません。しかし、墜様の御身には変えられません」
こいつは誰だっけ?とても大切な人だった気がする。でも思い出せない。
まるで、思い出すことを拒否するかのように。
「ふむ、そう言われてはこっちは何も言い返せないではないか。、、、まあいい。治療不可能な傷ではない。よし、こいつを運べ」
こいつ?こいつって誰?
「承知しました」
そう言ってその女の人はこっちに近付いてきた。
ああ、こいつって俺の事か。俺?俺って、、、。
誰だっけ?
どんどん足音が近付いてくる。逃げようとしても体が思うように動かない。
その時頭の中で何かが弾けた。刹那全てを思い出した。
なんで忘れてたんだ。俺がここにいる理由。それは、、、。
「、、、を倒すこと」
「む。おい、早くそいつを拘束しろ!まだ意識がある。暴れられても面倒だ」
「承知しました」
「貴様を倒すことだ!」
俺はそう叫んで、目の前に落ちていた剣を握りしめた。同時に女の人、いやよく見ると女の子だ。それも俺と同年代くらいで、かなりの美少女だ。
以前にも見たことがあるようなその少女を蹴り飛ばした。大分罪悪感があるが、邪魔なのは確かだ。
そうして邪魔者の居なくなった部屋で改めて墜の方を見た。しかし、そこには既にそいつの姿はなく、ただ空間だけがあった。
傍から見れば呆然と立ち尽くした俺しかいなかっただろう。しかし、いくら姿を消そうと敵意むき出しの気配くらいは感じ取れる。
だから、俺は背後の何も無い空間を横薙ぎに切り裂いた。そしてそこから現れたのは、
「ぐはっ!くっ、何故わかった」
「わざわざ答える義理はないだろう?俺は貴様を殺す、それだけだ」
「な、お前何もんだ。さっきまでとはまるで人格が違、、、」
まだ、何か言ってるようなので、また斬りかかった。今度は驚きながらも両手に持つ刀とやらでふせいでいた。
「人が話してる間に攻撃とは、随分と余裕がないんだなあ?そんなんじゃあ、私には勝てないんだよぉ!」
また、下らないことを話し始めたので黙らせることにした。だが、今使おうとしていること魔法は、少々詠唱が長いため不本意ながら、喋らせることにした。
「お?図星か?急にぶつぶつ言い出して。そんなに嫌だったのか?なら、潔く捕まってくれると嬉しいんだがな。ほれ、降伏し、、、」
「、、、神の雷鎚」
これは、まだ神が地上に住んでいたと呼ばれる時代、雷神と呼ばれる神トールが使っていたものだ。その鎚は大地を穿ち、雷は海をも蒸発させたと言われている。
ただ、それは神であるトールだから出来た技とも言える。人の身でしかない俺たち人間がどれだけ努力しようと、大地も海も裂くことなど出来はしない。
だが、人1人殺すには充分すぎる殺傷能力はある。故に俺はやつの死を確信していた。だが、邪魔者が入った。さっきの少女だ。
その少女は俺と奴の間に割り込み、俺が放った魔法にその身を焼かれていた。
そうしてあとに残ったのは無惨に焼かれた少女の遺体だけだった。
「無駄なことを、もう一度魔法を打てば同じ結果になるというのに」
そこまで言って気づいた。
自分が涙していることに。
何故、俺は涙など流している。何故こんなにも空虚なんだ。何故、こんなにも、
「悲しんでいるんだ」
そこまで言って、急に奴が話し出した。
「は、はは、今のは危なかったが、これは、中々イイ芝居だったよ。アドリブでこれは素晴らし、、、」
「黙れ!」
無性に今の言葉に怒りが沸いた。ただ、もうこれで本当に邪魔者は存在しない。この悲しみもきっと奴を完全に消しされなかったから生じた一時の感情に過ぎない。
半ば強引にそう結論付け、再び詠唱に入った。
「お、おい。今なら見逃して、、、いや、我々のチームに入らないか?今なら私直属の騎士にしてやろう。どうだ、悪くない話だろう?」
詠唱が終わったので、後は放つだけだ。しかし、このままでは面白くない。確か奴は、面白がって俺たちを殺していた。
「それはとても魅力的だな。将来安定の職業なのは間違いないな」
「だろう?なら、、、」
「だが、入るとは言っていない。俺は貴様が気に食わない。だから、殺す。、、、神の弾幕」
これもまた神の時代、あらゆる神が使っていた魔法だ。敵の部隊や軍隊などまとまって行動する的に対して効果を発揮する魔法だ。
また、人1人に向かって放つと完全な無駄打ちとなる弾丸が多くなるが、必ず狙った敵は殺すことが出来る。
今思えばこちらを最初に放っていれば良かったと感じる。だが、結果は同じだから良いだろう。
「く、あぁ、、、まだ、殺られる訳には、、、ッ!!」
そう言って最後の悪あがきか、全身に神の弾幕を受けながら突進してきた。わざわざ相手にするつもりもないので、弾幕を強めた。
弾丸が奴の体をえぐる度、パワードスーツの至る所に傷を増やして行った。やがて事切れたかのように、その場に倒れた。
やっと倒した。その事実をただ呆然と受け入れた。
だが、なんの感傷も、感動も無かった。ただ虚無の感情だけが残った。そして、まだ涙を流していることに気付いた。
また同時に、思い出したことがあった。
「はっ!優希は!?」
そう、優希の居場所である。墜に聞かなければならなかったのに、もう殺してしまった。
あれ?俺はもう1人殺したはずだ。誰だ?
そう考え辺りを見回した。あるのは墜の死体と、誰とも知らない焼け焦げた死体と倒れている英樹さん。あれ?英樹さんは誰やられたんだ?
墜じゃない。奴は俺と戦っていた。なら、あそこにある焼け焦げた死体の人、、、。
そこまで考えてやっと思い出した。いや、思い出してしまった。焼け焦げた死体が誰なのか、そして、それをやったのが自分であることを。
「あ、あぁ、、、。ゆう、、、き、、、」
もう後戻り出来ない。死んだ人間は生き返らない。絶対不屈の世の理。
そうして、フラフラと優希に近付いていき、屈んで、ゆっくりと抱き起こした。右手と両足は見るのも耐え難いくらいに焼け焦げていて、左手に関しては完全に無くなっていた。
そんな中顔だけはほとんど無傷だった。ただ、透き通るような白い肌は今ではその面影を残さず、ただ青白くなっているだけだった。
「ゆ、、、うき、、、。ごめん、、、謝っても、ゆる、、、され、る、、、ことしゃ、ない、けど、、、でも、でも、ほん、とうに、、、ごめん、、、」
そこまで言って抱き抱えていた優希が動いたような気がした。そんなわけないこんな大怪我を負って、生きていられるわけがないじゃないか。
だが、その推測は思いもよらない方向で裏切られた。
「ほら、ね、、、。やっぱり、泣き虫、、、じゃない」
聞きたかった声、今1番聞きたかった声。一瞬幻聴かと思った。小さいけど、確かに聞こえた声。
目を開けてみると、そこには、こちらを見ている優希がいた。
「こっち、こそ、、、ごめん、、、ね?、、、足、引っ張っちゃった、よね?ほんと、、、に、ごめん。あと、、、ありが、とう、、、。助けに、来て、、、くれて。信じ、、、てた、、、よ」
とても辛そうにいや、事実辛いのだろう。所々声が掠れていて聞き取りにくかった。それでも確かに聞こえた感謝の言葉。それだけで報われた気がした。
「でも、優希を、そんなに、したのは、俺、だから、お礼なんか、受け取れない、、、」
そう、優希に大怪我を負わせたのは他でもないこの俺だ。そんな俺がお礼を受け取れるわけない。たとえ、そこにどんな理由があろうとも、、、だ。
「ううん、、、。違うよ?だって、、、私、今、、、しあわせ、だよ?好きな人に、、、助けに、来て、もら、、、えて」
そこでだんだんと優希の声が小さくなってきていることに気が付いた。
「なん、、、だか、、、疲れ、ちゃった、、、なあ、、、。ねぇ、、、最後に、、、お願い、聞いて、、、くれる?」
「最後なんて、言わなくても、何度でも、聞くさ。だから、なんでも、言って」
「最後」その言葉に動揺してしまった。嫌だ、まだ、死なせたくない。
「ん、ありがと、、、。それじゃ、あ、、、ここに囚われ、ている、、、人た、ちを、、、解放、して、あげて?」
「ああ、ああ、、、それくらい当たり前だ。任せろ。他にはあるか?」
まだ、これじゃ足りない。絶対最後なんて言わせない。最後のお願いがこれっぽっちなんて寂しすぎる。
「え?ふ、ふふ、、、それ、じゃ、、、えへへ」
何故か急に笑い始めたかと思いきや言うのを躊躇っていた。
「えっとね、、、じゃ、、、あ、ちゅー、、、して?」
「はぇ?」
予想外の答えに変な声が出たが、優希は本気なようで、目を瞑って、いつでも大丈夫と言った感じだ。実を言うと初キスはまだだったりするから、嬉しかったりもする。
だから、そのまま顔を近付け、接吻をした。その初めてのキスはどこまでも甘く、気持ちの良いものだった。
永遠とも取れるような時間キスしていたが、やがてどちらかと言わず離れた。
「え、へへ、、、実、は、、、さっきの、初めて、、、だったん、、、だよ?あはは、、、零に、初めて、、、奪われ、、、ちゃった」
「おいおい、それじゃあ、俺が無理やりしたみたいじゃないか」
そうして、笑いあった。だが、今度は直ぐに終わって、
「そろそろ、、、かな」
「え?何が?」
嫌な予感がした。
「ごめん、、、。もう、何も、聞こえない、、、や。でも、、、零が、、、何を、思って、、、るのか、、、は分かる、、、よ?私、は、零の、、、彼女、、、だから、ね?」
「嫌だ!行くな!まだやりたいことが沢山あるんだ!だから、治療するから!だから」
本当は分かっていた。既に死ぬ直前、治療など不可能だと。それでも、何もしない訳には行かなかった。
「あ、もう何も、見えない、、、。ねぇ、零、、、どこに、いる、、、の?」
「ここに、いる、、、だろ?だから、離れ、ないで、、、お願い、だから」
もはや、叶わぬ願い。それでも願わずにはいられなかった。
「ふ、ふふ、、、。ありがと、、、。お願い、、、ちゃんと、、、まも、、、って、、、」
「優希?」
そこで優希は何も言わなくなってしまった。
「優希、優希!」
何度揺さぶっても、どれだけ強く抱きしめても、その目が開かれることは無かった。
「優希ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
それから、10年後。そこには「立花 優希」と書かれた墓石があった。またその前に1人の男が立っていた。
その男こそ、音無零。かつてウィード星の危機を救った男だ。
あの後の調査で地球人は他の星を襲ってはそこのあらゆる食料をかっ攫って行くような連中だったらしい。そして、その食料の中には人間も入っていたとか。
「おーい、零!、、、じゃなくて、今は宇宙平和共同会議の議長様だっけ?そっちで呼んだ方がいいか?」
やけにニヤついた顔でそんな冗談を言っているのが、偏田維真。彼はあの後必死の攻防の末、右腕の肘から先が無くなり、利き腕が無い状態となった。
「そういうお前は、宇宙平和共同会議のウィード星代表様じゃないか。これからはそう呼んだ方がいいのか?」
そう、冗談を交わしている中ではあるが、この2人どちらも世界的に見てもかなりのお偉いさんである。
「それはゴメンだね。っていうか会議まで時間ないぞ?」
「ああ、そうだったな。先にいっててくれ」
零がそう言うと、維真は来た方向に戻って行った。
「なあ、優希。もう、絶対にお前みたいな人を出さないからな。それがあの日の約束だから」
「おーい、ほんとに急がないとだぞー!」
「ああ、分かってるよ!、、、でも、もし、違う次元で俺達がもっと戦闘に慣れているようなそんな次元があったら、、、。もしかしたら、もっと違う未来があったのかもしれないな」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないさ。ほら、行くぞ」
こうして、宇宙平和共同会議の第1回目の会議が始まるのだった。
Episode 狼煙 BadEnd
Episode2(暫定)は5月末から6月初めを目安に投稿開始したいと思います。
それまでに頑張ってシナリオを固めたいと考えております。
ですので、気長に待ってもらえたならなと思います。
また、ep.1とはEpisode 狼煙の事を指します。
以上の事を了承の上ご愛読下さい
ー音無 零sideー
殺られた、、、。
そう、俺はこれから死ぬ。ただその事実だけが残る。
「よくやった、優希。しかし、これはやりすぎじゃないか?」
誰かの声が聞こえる。とても耳障りな声だ。
「すいません。しかし、墜様の御身には変えられません」
こいつは誰だっけ?とても大切な人だった気がする。でも思い出せない。
まるで、思い出すことを拒否するかのように。
「ふむ、そう言われてはこっちは何も言い返せないではないか。、、、まあいい。治療不可能な傷ではない。よし、こいつを運べ」
こいつ?こいつって誰?
「承知しました」
そう言ってその女の人はこっちに近付いてきた。
ああ、こいつって俺の事か。俺?俺って、、、。
誰だっけ?
どんどん足音が近付いてくる。逃げようとしても体が思うように動かない。
その時頭の中で何かが弾けた。刹那全てを思い出した。
なんで忘れてたんだ。俺がここにいる理由。それは、、、。
「、、、を倒すこと」
「む。おい、早くそいつを拘束しろ!まだ意識がある。暴れられても面倒だ」
「承知しました」
「貴様を倒すことだ!」
俺はそう叫んで、目の前に落ちていた剣を握りしめた。同時に女の人、いやよく見ると女の子だ。それも俺と同年代くらいで、かなりの美少女だ。
以前にも見たことがあるようなその少女を蹴り飛ばした。大分罪悪感があるが、邪魔なのは確かだ。
そうして邪魔者の居なくなった部屋で改めて墜の方を見た。しかし、そこには既にそいつの姿はなく、ただ空間だけがあった。
傍から見れば呆然と立ち尽くした俺しかいなかっただろう。しかし、いくら姿を消そうと敵意むき出しの気配くらいは感じ取れる。
だから、俺は背後の何も無い空間を横薙ぎに切り裂いた。そしてそこから現れたのは、
「ぐはっ!くっ、何故わかった」
「わざわざ答える義理はないだろう?俺は貴様を殺す、それだけだ」
「な、お前何もんだ。さっきまでとはまるで人格が違、、、」
まだ、何か言ってるようなので、また斬りかかった。今度は驚きながらも両手に持つ刀とやらでふせいでいた。
「人が話してる間に攻撃とは、随分と余裕がないんだなあ?そんなんじゃあ、私には勝てないんだよぉ!」
また、下らないことを話し始めたので黙らせることにした。だが、今使おうとしていること魔法は、少々詠唱が長いため不本意ながら、喋らせることにした。
「お?図星か?急にぶつぶつ言い出して。そんなに嫌だったのか?なら、潔く捕まってくれると嬉しいんだがな。ほれ、降伏し、、、」
「、、、神の雷鎚」
これは、まだ神が地上に住んでいたと呼ばれる時代、雷神と呼ばれる神トールが使っていたものだ。その鎚は大地を穿ち、雷は海をも蒸発させたと言われている。
ただ、それは神であるトールだから出来た技とも言える。人の身でしかない俺たち人間がどれだけ努力しようと、大地も海も裂くことなど出来はしない。
だが、人1人殺すには充分すぎる殺傷能力はある。故に俺はやつの死を確信していた。だが、邪魔者が入った。さっきの少女だ。
その少女は俺と奴の間に割り込み、俺が放った魔法にその身を焼かれていた。
そうしてあとに残ったのは無惨に焼かれた少女の遺体だけだった。
「無駄なことを、もう一度魔法を打てば同じ結果になるというのに」
そこまで言って気づいた。
自分が涙していることに。
何故、俺は涙など流している。何故こんなにも空虚なんだ。何故、こんなにも、
「悲しんでいるんだ」
そこまで言って、急に奴が話し出した。
「は、はは、今のは危なかったが、これは、中々イイ芝居だったよ。アドリブでこれは素晴らし、、、」
「黙れ!」
無性に今の言葉に怒りが沸いた。ただ、もうこれで本当に邪魔者は存在しない。この悲しみもきっと奴を完全に消しされなかったから生じた一時の感情に過ぎない。
半ば強引にそう結論付け、再び詠唱に入った。
「お、おい。今なら見逃して、、、いや、我々のチームに入らないか?今なら私直属の騎士にしてやろう。どうだ、悪くない話だろう?」
詠唱が終わったので、後は放つだけだ。しかし、このままでは面白くない。確か奴は、面白がって俺たちを殺していた。
「それはとても魅力的だな。将来安定の職業なのは間違いないな」
「だろう?なら、、、」
「だが、入るとは言っていない。俺は貴様が気に食わない。だから、殺す。、、、神の弾幕」
これもまた神の時代、あらゆる神が使っていた魔法だ。敵の部隊や軍隊などまとまって行動する的に対して効果を発揮する魔法だ。
また、人1人に向かって放つと完全な無駄打ちとなる弾丸が多くなるが、必ず狙った敵は殺すことが出来る。
今思えばこちらを最初に放っていれば良かったと感じる。だが、結果は同じだから良いだろう。
「く、あぁ、、、まだ、殺られる訳には、、、ッ!!」
そう言って最後の悪あがきか、全身に神の弾幕を受けながら突進してきた。わざわざ相手にするつもりもないので、弾幕を強めた。
弾丸が奴の体をえぐる度、パワードスーツの至る所に傷を増やして行った。やがて事切れたかのように、その場に倒れた。
やっと倒した。その事実をただ呆然と受け入れた。
だが、なんの感傷も、感動も無かった。ただ虚無の感情だけが残った。そして、まだ涙を流していることに気付いた。
また同時に、思い出したことがあった。
「はっ!優希は!?」
そう、優希の居場所である。墜に聞かなければならなかったのに、もう殺してしまった。
あれ?俺はもう1人殺したはずだ。誰だ?
そう考え辺りを見回した。あるのは墜の死体と、誰とも知らない焼け焦げた死体と倒れている英樹さん。あれ?英樹さんは誰やられたんだ?
墜じゃない。奴は俺と戦っていた。なら、あそこにある焼け焦げた死体の人、、、。
そこまで考えてやっと思い出した。いや、思い出してしまった。焼け焦げた死体が誰なのか、そして、それをやったのが自分であることを。
「あ、あぁ、、、。ゆう、、、き、、、」
もう後戻り出来ない。死んだ人間は生き返らない。絶対不屈の世の理。
そうして、フラフラと優希に近付いていき、屈んで、ゆっくりと抱き起こした。右手と両足は見るのも耐え難いくらいに焼け焦げていて、左手に関しては完全に無くなっていた。
そんな中顔だけはほとんど無傷だった。ただ、透き通るような白い肌は今ではその面影を残さず、ただ青白くなっているだけだった。
「ゆ、、、うき、、、。ごめん、、、謝っても、ゆる、、、され、る、、、ことしゃ、ない、けど、、、でも、でも、ほん、とうに、、、ごめん、、、」
そこまで言って抱き抱えていた優希が動いたような気がした。そんなわけないこんな大怪我を負って、生きていられるわけがないじゃないか。
だが、その推測は思いもよらない方向で裏切られた。
「ほら、ね、、、。やっぱり、泣き虫、、、じゃない」
聞きたかった声、今1番聞きたかった声。一瞬幻聴かと思った。小さいけど、確かに聞こえた声。
目を開けてみると、そこには、こちらを見ている優希がいた。
「こっち、こそ、、、ごめん、、、ね?、、、足、引っ張っちゃった、よね?ほんと、、、に、ごめん。あと、、、ありが、とう、、、。助けに、来て、、、くれて。信じ、、、てた、、、よ」
とても辛そうにいや、事実辛いのだろう。所々声が掠れていて聞き取りにくかった。それでも確かに聞こえた感謝の言葉。それだけで報われた気がした。
「でも、優希を、そんなに、したのは、俺、だから、お礼なんか、受け取れない、、、」
そう、優希に大怪我を負わせたのは他でもないこの俺だ。そんな俺がお礼を受け取れるわけない。たとえ、そこにどんな理由があろうとも、、、だ。
「ううん、、、。違うよ?だって、、、私、今、、、しあわせ、だよ?好きな人に、、、助けに、来て、もら、、、えて」
そこでだんだんと優希の声が小さくなってきていることに気が付いた。
「なん、、、だか、、、疲れ、ちゃった、、、なあ、、、。ねぇ、、、最後に、、、お願い、聞いて、、、くれる?」
「最後なんて、言わなくても、何度でも、聞くさ。だから、なんでも、言って」
「最後」その言葉に動揺してしまった。嫌だ、まだ、死なせたくない。
「ん、ありがと、、、。それじゃ、あ、、、ここに囚われ、ている、、、人た、ちを、、、解放、して、あげて?」
「ああ、ああ、、、それくらい当たり前だ。任せろ。他にはあるか?」
まだ、これじゃ足りない。絶対最後なんて言わせない。最後のお願いがこれっぽっちなんて寂しすぎる。
「え?ふ、ふふ、、、それ、じゃ、、、えへへ」
何故か急に笑い始めたかと思いきや言うのを躊躇っていた。
「えっとね、、、じゃ、、、あ、ちゅー、、、して?」
「はぇ?」
予想外の答えに変な声が出たが、優希は本気なようで、目を瞑って、いつでも大丈夫と言った感じだ。実を言うと初キスはまだだったりするから、嬉しかったりもする。
だから、そのまま顔を近付け、接吻をした。その初めてのキスはどこまでも甘く、気持ちの良いものだった。
永遠とも取れるような時間キスしていたが、やがてどちらかと言わず離れた。
「え、へへ、、、実、は、、、さっきの、初めて、、、だったん、、、だよ?あはは、、、零に、初めて、、、奪われ、、、ちゃった」
「おいおい、それじゃあ、俺が無理やりしたみたいじゃないか」
そうして、笑いあった。だが、今度は直ぐに終わって、
「そろそろ、、、かな」
「え?何が?」
嫌な予感がした。
「ごめん、、、。もう、何も、聞こえない、、、や。でも、、、零が、、、何を、思って、、、るのか、、、は分かる、、、よ?私、は、零の、、、彼女、、、だから、ね?」
「嫌だ!行くな!まだやりたいことが沢山あるんだ!だから、治療するから!だから」
本当は分かっていた。既に死ぬ直前、治療など不可能だと。それでも、何もしない訳には行かなかった。
「あ、もう何も、見えない、、、。ねぇ、零、、、どこに、いる、、、の?」
「ここに、いる、、、だろ?だから、離れ、ないで、、、お願い、だから」
もはや、叶わぬ願い。それでも願わずにはいられなかった。
「ふ、ふふ、、、。ありがと、、、。お願い、、、ちゃんと、、、まも、、、って、、、」
「優希?」
そこで優希は何も言わなくなってしまった。
「優希、優希!」
何度揺さぶっても、どれだけ強く抱きしめても、その目が開かれることは無かった。
「優希ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
それから、10年後。そこには「立花 優希」と書かれた墓石があった。またその前に1人の男が立っていた。
その男こそ、音無零。かつてウィード星の危機を救った男だ。
あの後の調査で地球人は他の星を襲ってはそこのあらゆる食料をかっ攫って行くような連中だったらしい。そして、その食料の中には人間も入っていたとか。
「おーい、零!、、、じゃなくて、今は宇宙平和共同会議の議長様だっけ?そっちで呼んだ方がいいか?」
やけにニヤついた顔でそんな冗談を言っているのが、偏田維真。彼はあの後必死の攻防の末、右腕の肘から先が無くなり、利き腕が無い状態となった。
「そういうお前は、宇宙平和共同会議のウィード星代表様じゃないか。これからはそう呼んだ方がいいのか?」
そう、冗談を交わしている中ではあるが、この2人どちらも世界的に見てもかなりのお偉いさんである。
「それはゴメンだね。っていうか会議まで時間ないぞ?」
「ああ、そうだったな。先にいっててくれ」
零がそう言うと、維真は来た方向に戻って行った。
「なあ、優希。もう、絶対にお前みたいな人を出さないからな。それがあの日の約束だから」
「おーい、ほんとに急がないとだぞー!」
「ああ、分かってるよ!、、、でも、もし、違う次元で俺達がもっと戦闘に慣れているようなそんな次元があったら、、、。もしかしたら、もっと違う未来があったのかもしれないな」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないさ。ほら、行くぞ」
こうして、宇宙平和共同会議の第1回目の会議が始まるのだった。
Episode 狼煙 BadEnd
Episode2(暫定)は5月末から6月初めを目安に投稿開始したいと思います。
それまでに頑張ってシナリオを固めたいと考えております。
ですので、気長に待ってもらえたならなと思います。
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