14話　悲痛なる決断

｢ちょっと待って｣

　そんな声が港に響いた。その声の主は、立花たちばな優希ゆうきである。これには、科学者風の男ーサイ・エンサーも驚いたようで、

「おお、これはこれは優希君ご自身が発言されるとは,,,。して、何かが要望でも？」

「えぇ、私を誘拐するって話明日まで待ってもらえないかしら。もともとこの旅行も明日で終わりなわけだしね」

「もちろんかまいませんよ。もともとその予定でしたから。しかし、その発現は了承された,,,。ということでよろしいですかな？」

「受け入れるしかないんでしょう？なら受けるしかないじゃない」

「ふふ、君のその英断にさぞ終魔学園の学生たちも感謝している事でしょう。それではこちらからあとひ,,,。」

「っざけんな！！」

　一つ、そんな言葉が響いた。それは怒りと悲しみを内包する無意味な叫びであった。

　－音無　零side－

「,,,。しかし、その発現は了承された,,,。ということでよろしいですかな？」

「受け入れるしかないんでしょう？なら受けるしかない,,,」

　は？今、今優希は何て言った？誘拐を、受け,,,入れるだって？

｢､､､なよ｣

　なんで､､､なんで！

｢､､､けんなよ｣

｢おい、零。どうした？｣

　親友からの声を無視して、俺は叫んだ。

｢っざけんな！！｣

　その場にいる全員の視線が向けられたと感じたが、今はそんなものに怯えてる暇ではない。

｢なんで、優希、お前はそんな奴らの所に言っていいのか！｣

　今、叫ばなくては必ず後悔する。それだけは分かる。

｢何をされるか分からないんだぞ？もう二度と俺たちと会えないかもしれないんだぞ？｣

　頭では分かっていた。優希を犠牲にすることで、被害者を最小限に抑えることが出来ることくらい。でも、それでも、納得出来ないことなんだ！

｢それでも、お前は良いのk､､､｣

｢もう止めて！｣

｢もう止めて！｣

　バチン､､､

　それは何の音だっただろうか。男ー零はそう考えた。

｢零だって分かってるんでしょ？これが最良の選択だって､､､。なら、もうそれで良いじゃない。これで、二度と会えなくなるかもしれないけど、会える可能性だってあるでしょ？だから、これでいいの｣

　その時、零は初めて自分がぶたれていたことに気づいた。

｢それに､､､の為に時間を貰ったんだから｣

　最後に何を言ったのか、誰にも分からなかったが、頃合を見計らったかのようにサイ・エンサーが

「んー、いやいいものを見させてもらったよ」

　その発言で彼に対して訝しみの目を向けていたが、それをまるできにしていないかのように続けた。

「そうだねぇ、例えるなら恋愛ドラマの修羅場シーンだね。まあ、ここはドラマのようなフィクションではなく、ノンフィクションー現実だけど,,,。あ、そうそう。もし今おきたことをウィード星で話したら、優希君に関するあらゆることの責任を放棄したとみなすから。今後の生活でうっかり漏らしてしまうことのないよう、くれぐれもきをつけるように」

　子供をあやすかのように言ったあとさらにこう付け加えた。

「それじゃあまた明日。この場で会おう」

　そう言い放ってどこかへ消えていった,,,

　しばらく時間が止まっていたように誰も動かなかったが、やがて変化が起こった。

「とりあえず今日はみんな自室に戻って,,,。色々思うこともあるだろうから」

　そう切り出したのは、またも優希だった。そして皆その言葉を待っていたかのように自室に帰り始めた。

　ただ全員が行ったわけではなく、二人の男子学生は残っていた。いや、一応皆が自室に戻ることを確認していた優希を含めれば三人だが、優希はまるでその2人が初めから残ることを知っていたかのように言った。

「ありがと、遍田君。あとは私に任せて」

そう、二人とは、零と維真のことだ。

「だけど,,,いや、分かった。んじゃあと頼む」

　最初こそ残っていたいと思っていた維真だが、優希の方が適任だと判断したらしく、足早にその場を去った。

「それじゃ私達ももどろっか」

　その言葉に零は頷きしか返さなかったが、優希は満足したかのように歩き出した。

　きりがいいので、今回はここで切ります。

　誤字等ありましたら報告お願いします。