五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

戦闘 VS魔王 3

美空の背中に溢れた水
それは潮の満ち干きでは無く由美の魔術によるもの
いきなり水を溢れさせても美空が溺れてしまい、しかもただの水なら魔王を引き離すには何の役にも立たない。水属性には攻撃手段も少ないので当然と言えば当然だが
そこで氷属性の美空が水に触れることで水の温度を操作し、魔力で無理矢理攻撃に転じさせる事ではじめて由美のアシストが活きた
「面白い」
「んふふ…ん?」
「面白いぞお前達」
亮太がニヤニヤしているそれ以上のニヤニヤで魔王が笑う
「力技では我に勝てんだろうと思い小手先で翻弄するとは状況判断としてはとても面白い。ならば我も本気を出すとしよう!」
グバッと黒い霧が魔王を覆い隠し5秒とかからずに大きな鎧に身を包んだ魔王が現れる
「由美!」
「撃ちますっ」
美空の背中側に回り込み水の球を2つ魔王に向け射出しその途中で美空が水に触れ、氷の礫に変化させ一直線に魔王を狙う
「その程度か、と言う台詞を使うのも勿体無い。見込み違いか?」
魔王が鎧越しに呆れた声をあげると指先でツイッと円を描き、小皿程の黒い穴を作り氷の礫を飲み込み、美空と由美の後頭部に移動させぶつける
突然の衝撃に二人とも不意をつかれゴツンと大きな鈍い音と共にザクッと砂浜に倒れ込む
「え」
「あ」
本気を出す前に片付いて、しかもただの不意打ちで見習いの魔術師二人を無力化されてしまい亮太と魔王が同時に間抜けな声をあげる
「え、嘘でしょ…」
「うーーん…」
ザクザクと砂を踏みながらお互い二人に近寄ってうつ伏せから仰向けにひっくり返してみると
「デュランさん、やり過ぎでは?」
「アタシが悪いの!?」
「おぉう…いやオレ何も手出ししてないし?」
「アタシだって普通にカウンターしただけなんだけど!アンタの教え方が悪いんじゃない!?本気なんて出てないし!!」
「あっふーん…まぁ否定は出来ないかなぁ」
「何サラッと認めてんのさ!!ど、どうしよう…カー君!カー君!!」
「カライドー!!救急車呼べー!!」
2人で崖の上から見ているであろうカライドに助けを求める
ちなみにカライドに医療の心得は無い
しかし状況を俯瞰で見ていたので大体は分かるようで全力で崖を走るように降ってきている
ズダダダダダと大きい足音を立てながら焦り顔のカライドが携帯電話でどこかに電話をかけているのが見え、一瞬画面を確認し通話を終了したかと思えば
「このアホォォォォオアァァァ携帯がぁぁぁぁぁ!?」
ゴリッと鈍い音と共に携帯で魔王の頭を思い切り殴打
魔王はキュッと小さく悲鳴をあげるが頑丈な兜は頭部をしっかりカバーしてカライドの携帯を破壊
液晶全体に細かく亀裂を作りフレームも若干歪ませられた
「ん?何か硬いものが…」
「だはははは!バカだ!バカライドだー!」
「ちょっとは手加減しろデュラン!おいコイツら大丈夫なのか!?亮太!」
「あぁ大丈夫大丈夫、たんこぶは出来てるけどちょっと気を失ってるだけだ」
念の為病院連れてった方がいいかもなーと言いつつ美空の首の後ろと膝の裏に手を通して抱えあげようと踏ん張る
「ヌッ!」
が、上がらない
「無理すんなよどうせ持ち上がらねぇんだから」
「よ、よゆーよゆー…!ヌッ!!」
が、上がらない
「はぁ…救急車呼んであるからちょっと待ってりゃいいよ」
「流石だぜバカライド」
「バカはやめろバカ」
「…我はどうすれば良いのじゃ?」
「こいつらが起きたらちゃんと謝れ。それまで着いてこい。あと魔王言葉しばらく辞めなさい偉そうだから」
「はい…」
鎧を闇に溶かし完全に意気消沈した面持ちの魔王と、防波堤から砂に足を取られる救急隊員の到着を待った

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