五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

魔術師舐めんな 10

「ややこしくなるかなーって」
「今まさにややこしいわっ!」
ミリア・レイドル
その正体は2年前にオレが召喚した『精霊』
カライドとミリアの2人は元々オレに従属していたが居なくなったオレの代わりにそれぞれ関根と美空に従属したらしい
「亮太!」「川元くん!」
「関根は意地でもミリアに刀を使わせるな!亮太はすぐに加われ!」
「合点承知之助!!」
けど今はそんな事考えてる暇もない
オレの側に駆け寄ってきた美空と片瀬ちゃんの手を掴む
「限界ギリギリまで吸い取るからな。ちょっと気分悪くなって今日1日は魔力の行使が出来なくなるぞ」
水と氷
2つの属性の魔力が手を通して体内を駆け巡る
「すまんなぁ2人とも」
「気にしなくて良いからミリーを止めて…っ」
魔力の大部分を強制的に失う
これはかなり辛いはずだ
美空はグッと目を閉じて左手を握り返してくる
「川元くん取りすぎでは…!?」
「まだまだ足りないけどまぁ、こんなもんで」
片瀬ちゃんが苦しそうな顔をしたので終了
2人から手を離す
魔力欠乏症一歩手前って感じだな
本当に申し訳ない
オレは取り込んだ魔力を確かめる
全身に細く細く流れている管から自分がかつて所有していた力を少しだけ取り戻したのを認識する
『亮太く〜ん?上開けるわよ〜?』
突如大音量でリムの声が響き渡る
中に設置されてるスピーカーか?
「リムの声だな、開けろ!」
代わりに岩村が返事をする
地鳴りのような音を立てながら天井が開きゆっくりと日が差し込んでくる
「亮太…早く!」
踏ん張りの効かない空中でミリアの腕に必死にしがみついた関根が呻いている
何か見てると気分が良い
このままでも良いような気もするけどそうもいかないので
「よっしゃ離れろ関根!!」
叫ぶと同時に指を空に向け、ミリアと高井の間を狙って氷柱を放つ
狙いは高井を掴んでいる左手
正直な所オレがミリアに勝てるかどうかで言うと、多分勝てない
おそらく氷柱も簡単にかわされてしまう
それどころか高井を盾にされてしまう可能性すらある
現に位置をずらして高井が射線上に来るように移動されている
なのでここで魔力を解除
氷柱をただの水に変える
パシャッと可愛らしい音が鳴り高井の背中を濡らす
「根っち!」
「行くぞォ!!」
少しだけ時間を稼げればそれで良かった
根っちがサッカーでボレーシュートを放つように蹴る足の上に乗り、蹴り上げてもらう
「ミリアァァ!!」
辿り着くまで一瞬
その一瞬に2人の間に割って入り高井を抱き抱えて上方に離脱
何も言わずに高井を手から放して落とす
「はい成功っと」
何が起きたのか分かっていない高井を指差して落下の経路にいくつかの水の塊を生み出す
理由は衝撃の緩和
湯船に張った水をそのまま取り出したような塊を1段、2段、3段と落下したところで関根がキャッチしてくれる
「よし!」
これでまずOK
関根に思い切り蹴り上げられた勢いはまだ止まらず呆気にとられたミリアが視界の真ん中でどんどん小さくなっていく
高井に行なった事と同様に勢いを殺すため上昇方向に水の塊を生み出す
1段で止まったのでそれを解除
重力に従いながら水と一緒に落下
ミリアの眼前で足の裏から日本の氷柱を生み出して停止する



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