五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

魔術師舐めんな 8

「どうして魔術を使わない!?」
「てめぇなんざ魔術使うまでもねぇわって意味だよ田舎ヤンキー」
勢いよく回転したダメージが三半規管を刺激したらしく若干フラフラとしながらも立ち上がる
「おっとと、と?」
立ち上がり、追撃を叩き込もうとした所で足に違和感
「ようやく目が見えるようになったぜクソチビィ!」
「ギャーー!?やめろ近寄んな!!」
涙と鼻水がボロボロの顔で左足を掴んでくる者が現れる
亮太と高井
2人の復活が早かっただけでドームの中央には退場した1人を除きあと3人いる事を完全に忘れていた
「てめぇ意味の分からねぇガス吸わせやがって!」
「使うつもり無かったのに使ったのそっちだろざこA!?オレ無罪!!ハイ閉廷!!」
足を振り払い距離をとる
しかし距離をとって移動した先で羽交い締めにされてしまう
立ち上がれるまで回復したざこBである
「Jesus…」
「タイマンじゃなきゃ駄目なんてルールは無いよな?」
指を鳴らしながらゆっくりと歩いて高いが近付いてくる
高井の言う通りルールなんて物は存在しない
魔術師らしく戦おうとスポーツで競い合おうと何だって良い、がこの場のルールである
「根っちィィィィィHelp me!?」
「ん?俺純和製だから横文字分かんねぇわ。1人で頑張れ」
「このタマナシ野郎!!」
「あ、悪口は分かるぞ」
手は貸してくれないらしいと判断
岩村は絶対に助けてはくれない
ぐるっと周りを見渡してみる
使えるものは?この状況を打破する方法は?
必死に脳みそを回転させていると横から衝撃
「さっきはよくもやってくれたなぁ!?」
回る視界で確認してみるとタバコ型スプレーに火をつけたざこCが顔を殴ってくれたらしいと気付く
たった一発ぐらいならなんて事は無いがその一発に問題があった
おそらくざこCの属性は地属性である
先程まで食らっていた物より数段威力があり、運の悪いことに首を動かしていた途中での攻撃により、顎先に近いところを殴られている
それにより軽い脳震盪の様な状態になり意識が少しグラついている




これはロン毛の負けか?
相性が悪かったなチビも
そうだな。惜しかったけどよく頑張った




空間のどこからかチラホラと会話が聞こえてくる決着の会話
高井の耳にも入っているようで小さく口元が笑っている
「俺相手によくここまで刃向かったもんだ」
「いささか勝利宣言が早いんじゃねぇの?フラグになっちゃうぜ?」
「なに、こうなっちまったらもう構わないだろ?」
高井の拳に宿る炎が一際大きく燃える
「ここまでしぶといお前の魔術も見てみたかったけどな」
「あいにく必要とは思わなかったんでね」
「まぁ、ちょっと入院してこいや!!!」
右拳を後ろに下げおおきく振りかぶって左足を前に出す
テレフォンパンチと呼ばれる素人パンチ
軌道さえ読めれば簡単に避けられるものの今はどう足掻いても回避不可能である
溜めが終わりまっすぐ高井の目が亮太を睨みつける
こうなってみれば呆気ないもんだなぁと考えながら迫り来る拳を見つめて、ハァとため息をつく
「痛くしないでね♡」
「そりゃ無理な相談だ。死ね!!」
グッと目を瞑り、全身に力を込めショックに備える


























「何です?これ」
パンチ届かんなー。早く殴ってくれんかなー。と考えながら亮太が目を開けると
「あらら」
「なにっ!?」
燃え上がった大きな拳を小さくか弱い手のひらが簡単に止めていた
「何です?これ」
ジリジリと音が聞こえそうな程赤く燃えている拳を、素手で受け止める小さな手のひら
亮太の知る限りその人物、ミリアは、右利きであった
そして利き手には大きなひと振りの野太刀
切っ先は少し地面を貫いている
「女!?」
「何です?これ」
自分が振りかざした拳が女生徒に向けられていると知り、勢いよく拳を引っ込めた高井
だが何よりも、自分がこれまで殴り飛ばしてきた相手に一切止められなかった拳をあんな小さな手で受け止められた事のショックが大きいようで自分の右手とミリアを交互に見ている
「ミリー!駄目よ!」
「何です?これ」
静まり返ったドームの出入口の1つから赤髪の少女が大声を挙げると、亮太を拘束していたざこBの身体が後ろに吹き飛ぶ
気の緩みから拘束はほとんど解かれており、一緒には吹き飛ばずその場に跪く形のまま親指を立ててみせ
「いやぁ助かったぜミリア!」
と精一杯のスマイルを向けてみるも無視
「下がってくれよ先輩、今いいとこなんだ」
「質問に答えてください。何です?これ」




「関根!ミリーを止めて!!」
「今は手を出すな関根。お前でも敵わん」
「ミリアちゃん!川元くんは大丈夫だから落ち着いて!」
見知った面々が口々に叫んでいるのを横目にボーッとミリアの顔を亮太が見つめる
「……良くないねぇ」
ふと昔を思い出す
はじめてミリアと会った時もこんな顔してたなぁ、と
自分の敵を見つけた時の顔をしてる
怒りを込めた瞳は高井を見据えられていた

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