五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

ラノベの主人公かよ 8

「川元亮太でーっす。15歳でーっす。水属性でーっす。」
「東條正樹15歳!地属性の魔術師だ!行くぞ!!」
1発殴ったくせに何を正々堂々ぶってるんだあのゴリラ
でも地属性か、ちょっとやりづらいかな
「おおおお!!」
地属性
全身を絶えず流れている魔力を体外に放つ他の属性とは違い肉体の強化を行うことが出来るのが特徴
総魔力を100として満遍なく全身に流れているものを1ヶ所に集めることで人間の限界を越えた動きが出来るようになる
で、初動は大体皆同じ
「足に集めて突っ込んでくるっと」
「何!?」
真っ直ぐショルダータックルの構えで真横を通り過ぎていく東條くん
「動きが単調だなーチョロいチョロい」
ギギギっとブレーキをかけてこちらに振り返る彼の表情に明らかな焦りが見える
「これぐらい誰でも避けられちゃうよ」
「このッ」
再び突っ込んでくる彼は手にある剣を横に構えて特大のラリアットのようにオレの真上で空を切る
「甘い甘い甘ァァァァァい!!!」
正直絶好のカモですわお兄さん
見た感じ180センチ位の東條くんとオレの身長差は30センチ近く開いている
今まで一撃必殺で終わらせてきたとしたらその次にどう動いて良いか分からないんだろうね
ちょっとしゃがめば簡単に避けられる
「空振りの後のリカバリーが全然じゃんかよ!お腹ガラ空きだぜ!」
しゃがんだ状態から惰力をつけて飛び跳ね、姿勢制御もままならない脇腹めがけて右足で蹴りを放つ
が、空振り
「あれっ」
「ブハッ」
後ろで健治が笑ったのは分かったが何が起きたかいまいち分からん
「川元君!身長差!」
身長差?何言ってんだ片瀬ちゃんは
無様にも着地を失敗に右の肩から落ちたオレの足をガシッと東條くんが掴む
「ようやく捕まえたぜチビ!」
「まぁ聞けよ少年、暴力はいけない」
「今蹴り打ってたヤツが言う台詞かァ!!」
容赦なく剣を振り下ろしてくる
思い切りの良さは非常によろしい
さすがにオレも避けられそうに無い
ので、眼前に木の棒を斜めに構え、剣の軌道を横に逸らす
ゴギンと鈍い音が響き続いてガランガランと手から滑り落ちるのが見えた
「てめぇ何しやがった…!?」
「直だもんねー痺れてるよねー剣持てないねー」
剣と一緒にオレの足も離してくれたのでチョンと棒で押して東條くんから遠ざける
「はい問題、この剣は斬れませんよね?なら金属と木製の違いはあれど条件は重さが違う位なんだよ」
棒を膝でアイスを割るようにして見せる
もちろんそんな簡単に折れたりはしない
「ノコギリや斧なんかで木を斬ることは出来てもフライパンじゃ斬れないでしょ?同じ事だよ」
「つまり俺が使っていた剣はフライパンだと!?」
「例えの話ね。例えの。正直力で刺さって無理矢理へし折られてもおかしくは無かった。なら何故折れなかったのか」
カッと棒で地面を鳴らしてみせる
接地した部分に目に見えて水溜りを作り出す
「棒を水で濡らして滑りを良くしたのか!」
「正解正解!そんな君にプレゼントはいドウゾー」
言い終わる前に勢いよく手にした棒をぶん投げる
「うわっ!?」
「情けない声出しちゃってー。女の子にモテないぞ♡」
何とか木の棒を受け止めた隙に背中から飛びかかる
そのまま手のひらに水を貼り付けるように持って東條くんの口と鼻を塞ぐ
「ムグッ!?」
何が起きたのかわからないと言った動きをしながらオレを引き剥がそうとするが口と鼻を塞ぐのと同時に足でお腹を蟹挟みに固定して立った状態のままホールドと溺水を同時に行う
こりゃ余裕で勝ちましたわ
「ほっ」
「アッー」
と思っていると後ろから昔懐かしカンチョーを食らって思わず手を離す
背中から落ちて行くが犯人に受け止められる
「死んじゃうよ彼」
「死なないように調節してたよ!?」
受け止めた人物はここにいないはずの少年、関根拓真
通称根っち
「ゴホッゴホッ…」
「もう大丈夫ですよ。落ち着いて下さいね」
「片瀬さん、タオル渡してあげて」
「はいっ」
屈託のない笑顔で関根に笑いかけている表情は恋する乙女そのものと言った感じ
指示通り白いスポーツタオルを東條くんに渡して背中をさすってあげている
それはさて置き
「別に殺す気でやった訳じゃねーし!邪魔すんなし!」
「お前は手加減したつもりでもまだ1年生なんだから何も分かってないだろう?この子達は」
「それもそうか」
何か納得
つい調子乗っちゃったけどついこの間まで中学生だったんだもんなこいつ
「つーかさ」
根っちの手から離れ東條くんの眼前に立ち、手を差し伸べる
「15歳にしては身長伸びすぎだろ君」
「伊達に5年間柔道やってないからな…」
その手を掴んで立ち上がると今度はオレが地面に滑り込みそうになる
「柔道か、なら足腰が強えんだからそれを活かしてみろよ。多分そっちの方がやりやすいぜ。こいつ見て勉強しろよ一応強いから」
「一応とか言うなよ亮太」
根っちを指差しながらケラケラと笑ってみせるとつられて東條くんも薄く笑う
「俺の憧れの関根さんと知り合いとかお前何者だよ?」
「男らしくない美少年さ。おっと惚れないでくれよ?」

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