五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

4人集まれば 7

遅刻の魔術師 岩村宏昌
属性は雷
太刀の一振りと目で追えない電撃で対象を仕留める超速攻型の魔術師
上井と違って広範囲に攻撃出来ない代わりに速度とタイマンでの戦闘に特化している。らしい
「あー駄目、もう限界」
ただ魔力、体力ともに最低レベルですぐにバテる
格好よく助けてくれた事には感謝するけどそのままユルユルと地面に降り立つと私を地面に足から立たせてくれた
痛みで上手く動かないけど袖で顔を拭うと赤くなった視界が少しだけマシになる
「間一髪だったな」
「余裕ぶっこいてる割にはしんどそうじゃん?」
「お前重い」
自由に動く足で横から岩村の膝を折るつもりで蹴る
言葉も発さず倒れ込んだ背中を踏みつけイライラを解消。重くないもん
「あ〜ん美空ちゃ〜ん」
「ごめんねリム。私は大丈夫だから」
上手く立てないリムに近寄るとギュッと抱き締められる
心配かけてしまったけどお互い命に関わる重傷は負っていない
それよりも
「由美は!?」
「大丈夫だ」
精一杯身体を持ち上げた岩村がひょいひょいと指を差している
私が岩村に助けられていた間に上井が由美を助けてくれたようで同じように抱き抱えてこちらに近付いてくる
しかしその後ろからタコが触手を束ねて狙っているのが分かる
「健治は上がれ!笠木はリムの前で魔石を大量に爆発させろ。全部だ!」
立ち上がった岩村が指示を出す
いつもこいつが仕切るけどそれが正確であることをみんな知っているから私はそれに従って手元にある石を全て地面に転がすとそれを踏みつける
サボテンで作ったかまくらのようにリムと私を囲う
「岩村!」
「よし、全力で自分らだけ守ってろ!」
いつも通り正眼の構えのまま目線だけで私達を確認する
上井も上昇しているようで由美の悲鳴のような声も聞こえている
「俺が理由も無く遅れて現れたと思わない事だタコ野郎」
岩村が何か言っているが今の私にそれを気にしていられる余裕は無い
どんどん増えているように見える触手の束はしっかりとこちらを狙っているのが分かる


そろそろ大きな攻撃が来る
地鳴りもしているようで足場がグラグラと揺れているがそんな事も気にしていられない
場が一瞬だけ静まると一気に触手がこちらへと突撃して、大きな波音が遅れて聞こえた
リムに抱き着くように海側に背中を向け衝撃に備える
ドカンと爆発するような音が聞こえそれが立て続けに降り注いでくる
一際大きく地面が揺れいくつか攻撃が私達を守るかまくらに当たり、いとも簡単にそれを破壊してしまう
無防備になったのに気付いてはいるがリムを守れと言う岩村の指示に従って抱き締める力を強める
「しょっぼい防御しやがってこの雑魚!」
「うるさい寝坊白髪!」
「黙ってろチビ!!」
立ちはだかるように現れた岩村が攻撃の波をかいくぐって攻撃を太刀でいなして斬って伏せる
でも元々体力無いのにそんな調子が続く訳もない
何かの作戦があるとは思うけどまだ動きを見せない岩村に腕の中からリムが叫ぶ
「どうするつもり岩村くん?」
「大丈夫だ、もうそこまで来てる」
リムの言葉を何かの合図のようにふと手を休めてその場にへたり込む
「何やってんのよ!」
思わず私まで叫び岩村の前に出ようとした時、眼前の崖下から何かが飛び上がってくるのが見えた。人?
その人は飛び出した勢いのまま触手の1本を掴むと更に上昇を続ける
上井の横を通り抜け、足を持ち上げられたタコは大きく巨体を私達とは逆の方向に仰け反らせられていく
「…ォォォオオオリャッッ!!!」
とうとう攻撃は止み、じっと目を凝らす
放り投げるように触手を放したその人は明らかに落下速度だけじゃない威力でタコの胴体を踏みつけ大きな土埃をあげて私達の側に降り立つ
「悪くないタイミングだったぞ」
「それは光栄だな!」
昨日旅立ちを見送ったはずの相手
で、由美の彼氏(仮)
「でもこんな奴見たことないなー」
でっけー、と距離の離れたタコを眺めて呟く茶髪の爽やかな魔術師、名前は関根拓真
そう言えば夕方には帰るとか何とか言ってた気がする

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