五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

夕日の似合うあいつ 11

















亮太が自らの墓標に連れて行かれている最中、ミリアと健治は悪戦苦闘していた
と言うよりジワジワと押されていた
「このままじゃ押し切られます!」
迫る触手の先端を切り落しながらミリアが叫ぶ
数十秒の戦闘の間四方八方から攻撃を仕掛けられその悉くを払っている
しかし切り落とした先から新たに触手は再生していき、数も細かく増えている
それに対し健治は大剣を背中に背負い自らの周りに炎を展開
範囲を狭め強引に温度を引き上げた結果攻撃が通るまでに触手が焼け落ちているため防御はしているものの、ミリア同様攻撃には転じていない
「頭に突っ込む」
ボボっとブーツの炎を鳴らし空中で頭を下にしようとするがミリアがその前に飛び込んで制止する
「駄目です!有効打になるとは思えませんっ」
その一瞬を触手が捉えミリアの背中に打ち付けられる
ギリッと歯を食いしばり何事も無かったかのようにまた触手を払う
表面が濡れていて火属性ではダメージを与えにくい、近付こうにも触手の攻撃が以外にも早く近付けない
火属性の魔術は燃焼させることがメインである事もあり、一点集中での攻撃に向かないため健治は剣を手にした
しかしそれも今は叶わず防戦一方
打破する方法を考えるがそれが1番望み薄なのは間違いない
その方法とは『岩村、もしくは関根がここに来ること』
理由は先の通り一点集中の攻撃が行え、更に敵の攻撃を回避できるぐらい素早い動きが可能だから
しかし2人とも今は居らず、打開策としては期待するだけ無駄
「一度離れます!」
防御するのみで余裕のある健治を先導して触手の範囲外に出ようと試る
と言っても斜め上方向に距離を取りながら下がるのみ
少しずつ攻撃の手が緩みタコの魔族が完全に手が出せない位置まで下がったところで健治がある事に気付く
「おい」
「はい?」
珍しく健治が普通に話しかけてきたことに割と本気で驚く
普段独り言のような指示か用件だけを伝えてくるがミリア個人に対して声をかけてきた。それに驚く
そして崖際から数百メートル離れた海上のこの場で声をかけてくるという事は
「何か作戦が思いつきましたか!?」
必死に周囲を警戒しつつ目だけで健治を睨むように見つめる


魔術師上井健治の身体的特徴として1つ特出している点がある
それは凄く目が良い事
特別な訓練や血筋など特には無いがとにかく目が良い
その健治が見つめる目線の先をミリアが追う
視線は崖際に向けられていた
「ソラ!?」
大きな黒い塊に美空が捕まっているように見えるその光景をミリアも凝視する
目の前の敵も大事だがそれよりも大事な友のピンチに飛び出しそうになるが健治が動かないのを不思議に思い更に目を凝らす
「何です?あれ」
タコそっちのけで見守っていると突き刺さった剣の前に塊が下ろされた
黒い塊は人であり、何かに手を伸ばしている
それを何やら補助している美空と由美
傍らでは物凄いで触手の攻撃をリムが弾いている
「援護しているのでしょうか…」
「行くぞ」
いつもの様に短く言葉を紡ぐと加速して美空達のもとへ向かう
少し遅れてミリアも後を追うが健治をすぐ追い越していく
「ミリア」
「はい?」
「覚悟しとけ」
名前を呼ばれまた素っ頓狂な声を出してしまう
覚悟?つまりあの塊に何かあるのだろうとは思っているが一体何の事なのかさっぱりです。とミリアは思う



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