五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

夕日の似合うあいつ 7

「美空っ!」
ミリアと健治が飛び出した直後、集中を切らさないように俯きながら自身の魔力の巡りを身体全体で感じながら両の手に集めていた美空の肩を由美が強めに叩く
はっと目を開くと遠くに見える健治達が歪んで見えている
「もう一ヶ所から出てきそうね〜」
2人の前に立ちはだかるようにリムが近寄ってくる
「ミリー達はまだ気付いてない⁉︎ミリー‼︎」
崖際から大きな声で問いかけるが聞こえている素振りを健治、ミリアは取らない
「歪みが邪魔をしているのかも…!」
空間の裂け目からは既に鋭い鉤爪が見え始めている
覚悟を決めスカートのポケットの中で手を握りしめる
「大丈夫、私が守るわよ〜」
「守られるだけじゃ駄目!私も戦う!」
両拳を胸の前で構えながら力一杯叫ぶ
美空の横に並ぶ由美が杖を同様に構えた所で歪んだ景色の向こうの炎が収まりミリア達が振り向いている
「ソラ!」
「見えてるよ!」










見習い魔術師 笠木美空
属性は氷


迫り来る魔族から距離を取るように少し下がると美空は左の拳を開く
手の平に収まる透明な小石を卓球のサーブのように浮かせるとちょうど胸の前に来るタイミングで右手で正拳突きを放つ
「ハッ!」
石に触れた瞬間右手を中心に前方2メートルほどまで透明の棘が大量に出現する
真正面にいた魔族を滅多刺しにし、更に付近にいた魔族の手足を貫く
本来見習い魔術師と言うレベルの熟練度では魔族と対峙する事=自殺に近いものであるが、彼女達は魔術学校に通う以前から魔術師となっているため実戦が修行の一環である。
いつもは大多数の敵を健治や関根などに任せて端の方で少数の敵と戦うが今日は人数が少ないため本当の意味での実戦となる
魔術に関しては素人であり、成長度合いに限っては最低の部類である。
それでも尚今まで戦い続けられたのは前述の通り周囲の手助けがあったため
そしてもう一つ
「せい!」
素手で魔族の頭を前蹴りの要領で蹴り飛ばす。
飛び出した目玉が崖から転がり落ちていき、魔族本体も続くように蹴り落とす
足を戻しスッと元の構えに戻すと向かって右側から棘で腕と足にダメージを負った魔族にも同様にミドルキックで頭を捉えて落とす
もう一つの要素、魔術など関係なく昔から続けていた空手で異形の怪物に挑む
「大分上手く当てるようになったわね〜」
由美を守るように両刃の大剣を健治より鋭く振り回し確実に斬り倒しているリムから称賛の声を受けニッと八重歯を見せる
続けて小石をポケットから取り出して今度はサッカーボールのように蹴る
「わっ…と」
上方向に向かって広がった棘の一本が前髪を掠め思わず仰け反る
数体の敵にダメージを与えることに成功したが仰け反った姿勢から尻餅をついてしまう
「美空っ」
由美を守るので精一杯のリムの代わりにその場から動かず由美が魔力を練り上げる


美空と同様の見習い魔術師 片瀬由美
属性は水


水属性は癒しの魔術を主とするため本来戦うため前線に立つのには向かない水の魔術師は後方支援でこそ力を発揮する
なのに何故水属性であり見習いの由美が戦いに参加するのかと言うと、入学前に修行をつけていた魔術師が前線で水属性のみで戦う技を編み出し、実戦で活躍していたからである
「水鞭!」
右手に持った杖の先から青く細いロープのような物を伸ばし、美空に迫っていた敵に振るうと、パシャンと水を叩きつけたような音がなり魔族の足を止める
空いた左手で健治と同様に水の球を作り別の魔族にぶつけ、意識を逸らす
まだまだ戦えるほどの攻撃を行えないが足止めや注意を逸らす事でその隙に美空がとどめを刺す。と言うのが見習い2人の戦い方である



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