五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

夕日の似合うあいつ 4









車からミリアの大太刀を太く大きくしたような剣を引きずり出し、頑丈そうなブーツに履き替えながらた健治がポツリと呟く
「そろそろ魔族が来る」
魔族
書いて字の通り魔界から来ているらしい
魔界の住人カライドが言うにはそこら辺にいるらしい
高度な知性は有さず本能のみを頼りに集団で群れをする「生き物」らしい
ずっと昔から「普通にいる」らしい
『魔界』とここ『人間界』は古くから繋がっている
それこそ遡れば千年単位で
そして世界同士は様々な形で繋がっていて、ここ数十年でそれを悪用しようと企てる輩が少なからずいた
それを律するための魔術師を育て、余計な惨事が起こらないようにするための魔術学校である
これまでは世間の裏側から世界を守ってきていたがそうも言ってられなくなくなってきたので大々的に公表した。と言うことが世間一般の見解であり、真理でもある


そして魔族が現れる時、魔術に精通する者が共通して起こる体調変化
ひどい耳鳴りがする
次に現れる場所がグニャグニャと歪みその空間が破れるようにして開いていく
人が5.6人並んで入っても問題無いほど裂け目が開くとそこからは鉤爪が端を掴み、這いずるように赤黒い目が飛び出してくる
緑色が混じった黒い鱗
切れ味は良くないが傷口をズタズタにして確実に致命傷を負わせようする長い腕と鉤爪
異様に短い胴体と足
背中からは昆虫のような羽根も生えており、慣れないと直視できないほどにおぞましい姿をしている






「来た!」
美空が声をあげ、空を見上げた時に健治は海上に飛び出す
崖から勢いよく飛び降りながら自分の足下に意識を集中する
ボッと靴底に火が灯り自由落下が収まるとまるで小さなロケットのように高く飛び上がる


「下からは来てない」


崖際に最も近付いていた美空にそれを伝えるとさらに高く飛び目測で数百メートルほど先に見える海上の空間がみるみる黒色に染まっていくのに気付く
そのまま何も言わずブーツの中のスイッチを踏みながら角度を調節し、黒にとびこもうと直進していく


「ミリアちゃん、行っていいわよ」
「行きます!」
リムの合図でミリアが車の前から草履を脱いで駆け出すと10メートル程先の崖から地を蹴って空中へと飛び出す
その際蹴った部分がガラガラと音を立てて崩れていく
1度くるりと横向きに回転して体勢を整えると健治を追いかけるように音も立てずに飛翔する


「相変わらず速いわね〜健くん追い抜かれちゃうんじゃない?」
健治よりいくらか細身の、それでも女性が扱うにはまるで太すぎる大剣を肩に担ぎ、崩された崖際を見る
「肉弾戦なら文句なしでトップよね〜」
 崩れた部分が少し広がりカライドが昨日突き立てた斧が落ちていく
落ち着いたら後で拾い上げておこうと目だけで追うのみに留める

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