五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

夕日の似合うあいつ 3

約24時間ぶりじゃん
またここに来た
一時期は毎日来てたけどここ半年位はそうでも無くなった
時間は14時47分
おじさんの言ってた時間よりちょっと早いけどこんなもんでしょ
車から最初に降りたミリーは刀を鞘から抜いていつでも行ける状態にしてる
由美も杖を取り出して深呼吸で落ち着こうとしている
魔術と向き合い始めて2年
まだ制御が完璧でも無いし上井の様に前線で戦える実力でも無いけど。
けど私もやれる
やってみせる
誰かに話す訳でもないし話す気も無い。こんな恥ずかしい事人には言えないけど
生きる希望をくれた亮太のために私は生きてきた
彼は友達を助けるのは当たり前だと言ってくれた。関根も岩村も上井も友達だと言ってくれる
由美も昔からずっとずっと心配してくれてた
「はい、亮太。ちょっと物足りない量だけど」
巾着袋に入れたままお弁当を一振りの剣の前に置く
頭の中でぐるぐると考えながら表情に出ないよう普通を装う
多分ミリーには気付かれている
亮太がいなくなってすぐ
今日みたいに戦う時は誰よりも早く敵にぶつかっていった
その度にボコボコに怪我して、治ったらまたぶつかって。
足が折れて立てなくなった時も、魔力が枯れた時も、少しでも前に進める時は絶対に止まろうとはしなかった
でも本当に死にかけた時、良樹おじさんに本気で殴られた
女の顔を思いきり
凄く腫れて痛かったけどおじさんの手はもっと痛かったんだと今なら分かる
今日も言ってくれた
自分の子供みたいなものだと
血も繋がっていない赤の他人の私を
生まれつきこの血のような赤い髪と目で虐げられてきた私を本気で怒ってくれる。心配してくれる
「おじ専かっての」
何でこんな事考えてんだろうと剣の前でしゃがみ込んで1人笑う
こんな時アンタが居てくれたらな
前みたいに乱暴に撫でて欲しい
「フフッ…」
なんか笑っちゃった
「んー、らしくない」
少しでも身長が伸びるように手を目一杯青い空に伸ばす
「わひゃ!?」
伸びきったところで後ろから胸を鷲掴みにされる
変な声でた
「どうしたのツンデレおっぱいちゃ〜ん」
「リム、やめて」
「い〜じゃない。減るもんでもないし?」
そんなに揉まれたら萎むわ。りんご握りつぶす女の握力怖いし
「はいはい、さっさと準備するわよ」
「もう亮太くんにデレデレしたのかしら?ツンツンしか残ってないみたいねぇ」
パッと手を離すと今度は後ろから優しく抱き締めてくれる
「まだ吹っ切れない?」
ミリーや由美に聞こえないような小さい声で囁かれると耳がぞわぞわする
「そんなすぐには無理だよ…」
「もう結構経つんだけどね〜。まぁダメ男好き2人のお眼鏡に適うダメ男は中々現れないかもね」
だから別にダメ男好きじゃないしそもそも好きじゃなかったし…と口には出さない。もう何度もこのやり取りを繰り返しているから
「お姉さん達ももちろん悲しいのよ?お姉さんのお父さんも死んじゃった時悲しくて何日も泣いたわ。でもね、泣いてたってお父さんは嬉しくないだろうからって少しずつ少しずつ泣かなくなった。だから美空ちゃんも寂しくなったら「お酒で忘れる?」
言い切る前に言ってやった
図星と言わんばかりに目をそらすリム
「私未成年よ。まだ飲めないの」
「気にすることないわ!早く帰って楽しく飲みましょう!」
慌てて私から離れていく所を見るとただ単にお酒に付き合って欲しかっただけなのかなとも思う
仕方ないからジュースでいいなら話くらいしてあげようかな

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