異世界に転生されたので異世界ライフを楽しみます!

クロ猫のクロウ

◇第7話◇ 宿願


「そういやユーリ、お前金はあるか?」
「え、お金?多少はあるけど…」
「初めて王都に入る者は入場料金を払わないといけないんだ」

テーマパークか!
おおっと、思わず心の中でツッコんじまったぜ。てか、金取るの!?

「ほらそこの門番に話しかけな」

そこの門番って、あぁ、あれだな。分かりやすいと言うかなんと言うか…。

「あの…」
「これはこれはエフリート様!お勤めご苦労さまでございました!」
「あぁ、それより初めての来訪者だ」
「ふむ…、お名前は?」
「ユーリ…」
「年齢は?」
「えっと…12歳…」
「出身地は?」
「ハーレン村…」
「職業は?」

職質か!なんだこいつ!あからさまにおちょくってんだろ!

「召喚師…」
「ありがとう。では、入場料に200オール(日本円で言う2万円)いただきましょう」
「200オール!?」
「召喚師とのことなのでそれぐらいが妥当です」
「持ってるか?ユーリ」
「持ってるわけないだろ!」

どうする!?「ここはなんとかひとつ…」いや、通じなさそうだし…。「ツケで」アホか!居酒屋かここは!

『ユーリ様…』
「モモ?」
『ユーリ様のバッグのなかにブルネットがございます』
「そういえば…」
『ブルネットは王都の換金所での値段で1000オール程です。お金がなければブルネットを渡してみては?』

流石はモモだな。本当に頼りになる!

「これでひとつ…アハハ…」

門番の手にブルネットを1個置いた。真っ赤なブルネットの妖しい光に門番だけじゃなく街にいた高貴な人達も一斉にこちらを見た。

「魔石ブルネットを…持っているのですか…?」
「まぁ、一応神龍と契約してるし、それぐらいは…」
「…!神龍との契約者!?」
「え…?あ、はい…」

急に黙りこんだ…。なんでだろ…。

「召喚師ユーリ様お入りください。エフリート様、国王の元まで急ぎ…」
「あぁ、わかってる」

なにこれ…。まぁ、いんだよな…。一応…。
めっちゃ見られてる…!なにこれ、羞恥プレイかっつうの!

「やっぱりこうなったか」
「え、何が…?」
「召喚師は確かに優遇される。でもなユーリ…神龍と契約した者はそれなりなんかじゃすまないほど優遇されるんだ」
「どういう…?」
「つまりはね?」

召喚師の中でもランクはあるの。
下級魔族を扱うセルイ、中級魔族を扱うレムリ、そして上級魔族を扱うハーク。それぞれに階級が存在する。

「そして、ユーリのような神龍と契約している召喚師は英雄<ゼクス>クラスなの…」
「ゼクスクラスは世界でたったの2人。だが、そこにお前が現れた。これを国王が黙っているわけがないだろう?」

そういうことかよ…。だからさっきの門番もあんなに黙りこくっていた訳か。

「じゃぁ、今から国王のところに?」
「あぁ、連れていく。遅かれ早かれこうなってた。むしろ好機だ」

神龍との契約…。ここまで大事になるとは…。
これから俺…どうなるんだろ…。






「面を上げよ…」

レリエルト:セルム。国王っておじいちゃんだと思ったけど、意外と若いんだな…。
それにしても広いな…。王座の間とかって言ってたけど、東京ドーム何個分だよ。

「お主が"ベブリウス"か?」
「ベブリウス…?」
『神龍との契約者のことをベブリウスと言います…』
「あ、はい、ベブリウスです…」

やっばい、頭パンクする…。新用語が多すぎる…。

「赤い目…。緋眼神龍フェルブと契約したか…」
「…!どうしてそれを…!」
「見透す目<エンペラーアイ>。それが我がスキルよ…。して、ベブリウスのユーリよ。お主はどの騎士団をご所望だ?」

騎士団…。やっぱりこの質問は来たか。ここの礼儀は知らないけど、やるだけやってみるか…。

「私は国王直轄護衛部隊ドールを所望します」
「ならぬ」

あっれぇぇぇぇ!?断られたァァァ!?

「な、なぜ…!」
「お主は神龍と契約した身、そしてハザードが郡を抜いて素晴らしい。ドールは護衛部隊。お主のいる場所ではない」
「そんな…」

""我に話をさせよ…我が主よ…""

この声って…神龍フェルブ!?どこから…!

""貴様の体の中より語りかけておる…""

でも…どうやって話を…。

""体を借りるぞ…""

なんだこれ…!体中に魔力が溢れる…!これが神龍の力…!?

「ふゥ…やっト外の空気を吸エタな…」
「…!その禍々しき魔力…その緋眼…!もしや貴様…!」
「よォ…、そっからの眺めはサゾかしいいんダろうナ…」

神龍が体を乗っ取ってるのか…?思考もうまくいかない…。体を思うように使えない…。

「コイツの願いは"魔物と人間ガ笑って暮らセル世界を作るコト"だ…」
「それが…」
「どうしたってか!?コイツの願いガ叶わなけリャ、俺の宿願モ叶ワナクなる…」
「…」
「王様のオマエなら、ワカルよなァァ?」

意識が薄れる…。
魔力に呑み込まれる…。自分が消える…。
真っ暗な空間がただひたすらに辺りを埋め尽くしていた。憎悪と抑制が入り乱れる。

「ちッ…。もう限界カヨ…」
『ユーリ様!』
「だ、大丈夫…」

凄まじかった。ただそれだけだった。いくら最強の村民でも、神龍にはなされるがまま。まるで、操り人形のようだった。

「ユーリよ…」
「は…はい…」
「お主を今日から国王直轄護衛部隊ドールへ入隊することを認める」
「は…はい…!ありがとうございます!」

暗闇の中でうっすら聞こえた"宿願"ってなんのことだろう…。王すら動かすものなのだろうか…。今の俺には理解できそうもない…。



◇第7話◇ 宿願         fin.

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