壁ドン！！

ペイペイちゃんは焦っていた。沙織さんが有利に話を進めている気がしているからだ。だから壁ドンしか手はないと思っていたのだ。問題はどのタイミングでやるかということだ、要領はあのドラマを見て把握している。いつ、どこで、どの場面でやるかが問題だった。
リビングで腕を組んで悩んでいる彼女の横を俺が通った。

「恵さん…」

そう話しかけた途端、紗耶香ちゃんが俺の所にやって来て

「恵君！！ゲームしよ！！」

「え？今から」

「うん…」

するとそこへペイペイちゃんが入って来た

「私もゲームしたいんだけど…」

その言葉を聞いて反対するかと思っていた紗耶香ちゃんがにっこりとほほ笑んで

「いいよ！！ペイペイちゃん」

こうして３人でゲームを始めた。最初は、マ〇オカートだ。これはみんな必死になる奴だ。俺も結構熱くなっていた。流石にうるさかったのだろう。沙織さんが下りて来て

「うるさいわよ！！何時までゲームしているの？」

そう言って怒ってきた。当然、真っ先に紗耶香ちゃんを怒ろり始めたので

「沙織さん！！俺がゲームしようって言ったんだ！！」

沙耶香ちゃんをかばうと

「何言っているのよ。紗耶香が始めようって言ったに違いないわよ」

そう言って沙織さんが再び紗耶香ちゃんを怒ろうとすると今度がペイペイちゃんが

「私がゲームしよって言ったんです」

「え？」

ペイペイちゃんが言ってくるとは思っていなかったのか、驚いている沙織さんを見て、今度は紗耶香ちゃんが

「私がゲームしよって言ったの」

「え？」

すると沙織さんが戸惑っていたので、俺が

「俺がゲームをしようって言ったんだ」

呆れた表情を浮かべて腕を組んだ沙織さんの前に俺が一歩前に出ると紗耶香ちゃんとペイペイちゃんが

「「どうぞ、どうぞ、どうぞ」」

「あんた達！！ダ〇ョウ倶楽部か！！」

怒りの頂点に達した沙織さんは俺の脳天にチョップをくらわした。

ぐあん！！

「あう…」

キュルルル・・・となっている俺を紗耶香ちゃんとペイペイちゃんが抱きかかえる風景を見て

「フン！！」

そう言って沙織さんはリビングを出て行ったのだった。

このことで、ゲームはお開きになったんだけど、ゲームを片付けてひと段落すると紗耶香ちゃんが

「さっきは、ありがとう…」

って俺に抱き着いて頬にキスをしたのだった。それを見て、ショックを受けたのかペイペイちゃんは黙っていたのだが、紗耶香ちゃんはお休みって言って、リビングを出て行ったのだった。そして、リビングには俺とペイペイちゃんだけになった。

すると…

「うわ！！」

ペイペイちゃんは俺の首元をもっていきなり

ドン！！

と壁に押し付けたのだった。

「どうして？どうして？私を見てくれないの？」

女の子に壁にドンと押しつけられ迫られたのは初めてだった。ちなみに俺はつま先立ちになっている。そのドンという音に驚いた紗耶香ちゃんと沙織さんは慌てて降りて来て

「何やっているの？」

二人の言葉に気付いたペイペイちゃんの手が緩んで俺たちはバランスを崩した。

ドタン！！

今度はペイペイちゃんを床に押した感じで床ドンになっていて、二人の距離は１ｃｍ…そんな至近距離で目があったペイペイちゃんも目をキョロキョロとさせている。すると、紗耶香ちゃんが

「はーい。そこまで」

その言葉に我に返った俺はペイペイちゃんから離れて

「ごめん…」

といったら、無言で彼女は立ち上がり自分の部屋へ走っていったのだった。そして、俺には沙織さんと紗耶香ちゃんの冷たい視線が当たっていた。