ハグ　　３

それは家に帰った時に起きた。沙織さんが耳元で

「後で私の部屋に来てね」

そう言い残して、部屋に戻っていったのだった。俺は、スーパーで買った食品を冷蔵庫にしまってから、現在の俺の部屋と言っても、リビングの和室コーナーにふすまで仕切られているだけの場所なんだが、そこに入ると驚いた。
沙織さんが腕を組んで俺を睨んでいた。

「遅い」

「遅いっていわれても…」

俺が台所のの方を指さすとそのことに気付いたのか、つかつかと障子側へ行って、障子を閉めてしまったのだった。4畳半という狭い空間に二人でいる。ペイペイちゃんは用事があるらしく、まだ家に帰ってきていない。紗耶香ちゃんは今日はオリエンテーションとかがあって、彼女も遅くなると言っていた。瀬里奈さんも今日は何か用事があると言ってたっけ、つまり、この家には俺たち二人しかいない。すると沙織さんが

「久しぶりにハグして」

「へ？」

「いいからハグをしなさい」

「わかりました」

俺は沙織さん抱き着いた。いつもより俺をギューッと抱きしめてくる沙織さん。沙織さんとは久しぶりのハグだ。ペイペイちゃんが来てからハグをした記憶がない。更にいつもよりも長い気もしてきたのだ。俺は、そろそろ離れようと思っても彼女は離れようとはしない。その時だった。

「ただいま～！！」

ペイペイちゃんの声がしたのだった。俺たちは慌てて離れた。やがて、沙織さんが俺の部屋を出ようとしたところをペイペイちゃんに見られた。

「沙織！！どうして？めぐみ君の部屋から出てきたの？」

「別にいいじゃない？」

二人の雰囲気が怪しくなってきた。このままでは喧嘩が始まってしまうと思った時、ガチャと玄関が開く音と共に紗耶香ちゃんの声がしてきた。

「ただいま～！！」

沙耶香ちゃんは俺を見つけた途端、俺に向かって走って来て抱き着いた。

「ただいま～めぐみくん」

「おかえり」

沙耶香ちゃんが自然に俺に抱き着いたのを見てショックを受ける沙織さんとペイペイちゃんだった。

そして、ペイペイちゃんはあることを思っていたのだった。やはり、壁ドンしかないわ

一方沙織さんは別の作戦を考えていたのだった。久しぶりにあれをしよう