最強の元王子様は怠惰に過ごしたい?
お前は
本日2話目の投稿です。
訓練初日を終え、夕食の時間。親睦を深めるためにも指導員達も一緒に食事をとっていた。ただしレンヤとミクルーアだけは旅行と称して連れてきた子供達の相手をしているが。
「ほれ、好き嫌いするな」
「おやさいきらい……」
「食べたら明日レンヤくんが遊びに連れて行ってくれるそうですよ?」
「……ほんと?」
「ああ」
「………食べる!」
男の子がぱくっと嫌いな野菜を食べると、レンヤが優しい手つきで頭を撫でる。ミクルーアはそれを優しく見守っていた。
「あの……」
そんな心温まる家族の一時を楽しんでいると、紫苑が恐る恐る話しかけてきた。
「レンヤさんとミクルーアさんの関係って……?」
「夫婦だな」
レンヤの一言に、こっそり聞き耳を立てていた生徒達がワッと湧く。
「その、それじゃこの子達は?」
「血は繋がってないが家族だ」
その後もレンヤだけではなくリオン達にも質問は投げられていく。目的であった親睦を深めるということに関しては果たせているだろう。主に男子がサクヤ、アリシア、セリアに。女子がリオンに対して積極的に話しかけにいっており、あわよくば……という気持ちが見え隠れしている。
特にギャル風の少女、足立理沙がリオンに対して猛烈なアピールをしていた。
「ねぇリオンくん? この後部屋まで行っていい?」
腕を絡めて胸を押し付け、耳元で甘ったるい声で囁く。慣れたような動作にクラスメイトは一部を除いて冷めた目で見ていた。
「あはは、この後はサクヤと用事があってね。ごめんね?」
「用事? もしかして二人ってそーゆう感じ?」
理沙の視線がサクヤへと向く。その瞬間、サクヤの体が僅かに強張ったのをレンヤは見逃さなかった。
「っ……ええ、私が興味あるのはレンヤだけですから」
そう言いサクヤは立ち上がると、なぜか近くにいたレンヤの頭を抱きしめる。
「あっ私も。ついでにあんたらもくっつきなさい」
「「「はーい!!」」」
アリシアが便乗し、おまけに子供達まで扇動する。レンヤはあっというまに人に埋もれてしまい、波に乗れなかったセリアはそれを羨ましそうに見つめていた。
多くの生徒が察した。これはレンヤのハーレムだと。流石異世界。おのれイケメン。
悔しさから血涙を流す男子達を置き去りに、賑やかな夕食は続いていく。
※※※
子供達が寝静まった夜。同室になったレンヤとミクルーアは夕食時のサクヤの様子について話していた。
「きっとあの子が前世でサクヤちゃんを虐げていたという……」
「様子からして間違いないだろうな」
『機関』は仕事仲間に対して信頼関係を築くために、ある程度の自身に関する情報開示をさせている。なのでサクヤも当然行っており、レンヤとミクルーアはサクヤが転生者であることを知っていた。
「あの頃の記憶がフラッシュバックしたんだろうな」
「それほどまでに深く刻み込まれてるということですね……」
サクヤは前世でイジメを受けていたらしい。理沙と目が合った瞬間に体が強張ったのは、きっとそういうことなのだろう。
「少し様子を見てくる」
「サクヤちゃんを頼みます」
「まあ期待しないで待っててくれ」
「………朝帰りは駄目ですよ?」
「どれだけ信用無いんだ俺は……」
冗談です、と見惚れるような微笑みを浮かべるミクルーアに見送られながら、レンヤはサクヤの部屋を目指した。
※※※
「夜這いとは、ミクルーアだけでは足りませんか? 流石は性欲お化けのレンヤですね」
「お前等は俺を何だと思ってるんだ」
入室早々変な言いがかりをつけられてしまう。『機関』でも先輩であり、近衛騎士としてもレンヤは一応上司にあたるはずなのに敬意を全く感じないが、今更何も言うまい。
「用件は分かってるだろ?」
「……普段は面倒臭がりでだらけてばかりなのに、どうしてこういう時だけは鋭いんですかね」
サクヤの瞳からは不安、悲しみ、恐れなどの様々な感情が渦巻いているのが伝わる。
「これは消えない傷跡なんです。あの地獄のような日々の恐怖は、例え生まれ変わろうと魂に強く刻み込まれてしまっています」
体の震えを抑えるように自身を強く掻き抱くサクヤ。それだけ恐ろしい日々だったのだろう。
だが、そんなサクヤに対してレンヤは同情は一切しなかった。
「んなことどうだっていい。俺はこれを聞きに来ただけだ」
レンヤはサクヤの顔をじっと見据える。逃げることは許されないと、視線がそう訴えかけてきていた。
そして、レンヤはしかと問いかける。
「――――お前は誰だ?」
私? 私は――――――
幾ばくかの時が経ち、レンヤは部屋を後にする。
答えを得ることはなく、部屋には膝を抱えた少女だけが残されていた。
訓練初日を終え、夕食の時間。親睦を深めるためにも指導員達も一緒に食事をとっていた。ただしレンヤとミクルーアだけは旅行と称して連れてきた子供達の相手をしているが。
「ほれ、好き嫌いするな」
「おやさいきらい……」
「食べたら明日レンヤくんが遊びに連れて行ってくれるそうですよ?」
「……ほんと?」
「ああ」
「………食べる!」
男の子がぱくっと嫌いな野菜を食べると、レンヤが優しい手つきで頭を撫でる。ミクルーアはそれを優しく見守っていた。
「あの……」
そんな心温まる家族の一時を楽しんでいると、紫苑が恐る恐る話しかけてきた。
「レンヤさんとミクルーアさんの関係って……?」
「夫婦だな」
レンヤの一言に、こっそり聞き耳を立てていた生徒達がワッと湧く。
「その、それじゃこの子達は?」
「血は繋がってないが家族だ」
その後もレンヤだけではなくリオン達にも質問は投げられていく。目的であった親睦を深めるということに関しては果たせているだろう。主に男子がサクヤ、アリシア、セリアに。女子がリオンに対して積極的に話しかけにいっており、あわよくば……という気持ちが見え隠れしている。
特にギャル風の少女、足立理沙がリオンに対して猛烈なアピールをしていた。
「ねぇリオンくん? この後部屋まで行っていい?」
腕を絡めて胸を押し付け、耳元で甘ったるい声で囁く。慣れたような動作にクラスメイトは一部を除いて冷めた目で見ていた。
「あはは、この後はサクヤと用事があってね。ごめんね?」
「用事? もしかして二人ってそーゆう感じ?」
理沙の視線がサクヤへと向く。その瞬間、サクヤの体が僅かに強張ったのをレンヤは見逃さなかった。
「っ……ええ、私が興味あるのはレンヤだけですから」
そう言いサクヤは立ち上がると、なぜか近くにいたレンヤの頭を抱きしめる。
「あっ私も。ついでにあんたらもくっつきなさい」
「「「はーい!!」」」
アリシアが便乗し、おまけに子供達まで扇動する。レンヤはあっというまに人に埋もれてしまい、波に乗れなかったセリアはそれを羨ましそうに見つめていた。
多くの生徒が察した。これはレンヤのハーレムだと。流石異世界。おのれイケメン。
悔しさから血涙を流す男子達を置き去りに、賑やかな夕食は続いていく。
※※※
子供達が寝静まった夜。同室になったレンヤとミクルーアは夕食時のサクヤの様子について話していた。
「きっとあの子が前世でサクヤちゃんを虐げていたという……」
「様子からして間違いないだろうな」
『機関』は仕事仲間に対して信頼関係を築くために、ある程度の自身に関する情報開示をさせている。なのでサクヤも当然行っており、レンヤとミクルーアはサクヤが転生者であることを知っていた。
「あの頃の記憶がフラッシュバックしたんだろうな」
「それほどまでに深く刻み込まれてるということですね……」
サクヤは前世でイジメを受けていたらしい。理沙と目が合った瞬間に体が強張ったのは、きっとそういうことなのだろう。
「少し様子を見てくる」
「サクヤちゃんを頼みます」
「まあ期待しないで待っててくれ」
「………朝帰りは駄目ですよ?」
「どれだけ信用無いんだ俺は……」
冗談です、と見惚れるような微笑みを浮かべるミクルーアに見送られながら、レンヤはサクヤの部屋を目指した。
※※※
「夜這いとは、ミクルーアだけでは足りませんか? 流石は性欲お化けのレンヤですね」
「お前等は俺を何だと思ってるんだ」
入室早々変な言いがかりをつけられてしまう。『機関』でも先輩であり、近衛騎士としてもレンヤは一応上司にあたるはずなのに敬意を全く感じないが、今更何も言うまい。
「用件は分かってるだろ?」
「……普段は面倒臭がりでだらけてばかりなのに、どうしてこういう時だけは鋭いんですかね」
サクヤの瞳からは不安、悲しみ、恐れなどの様々な感情が渦巻いているのが伝わる。
「これは消えない傷跡なんです。あの地獄のような日々の恐怖は、例え生まれ変わろうと魂に強く刻み込まれてしまっています」
体の震えを抑えるように自身を強く掻き抱くサクヤ。それだけ恐ろしい日々だったのだろう。
だが、そんなサクヤに対してレンヤは同情は一切しなかった。
「んなことどうだっていい。俺はこれを聞きに来ただけだ」
レンヤはサクヤの顔をじっと見据える。逃げることは許されないと、視線がそう訴えかけてきていた。
そして、レンヤはしかと問いかける。
「――――お前は誰だ?」
私? 私は――――――
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答えを得ることはなく、部屋には膝を抱えた少女だけが残されていた。
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