エグザイル・ウォー 盈月の薔薇

ザクキャノン

第1章 日本侵略

    高句麗人民連邦海軍は旧韓国軍と中国から払い下げた空母、ロシアから譲り受けたフリゲート艦、そして戦艦やイージス艦を朝鮮海峡から日本海まで押し寄せ始めた。
   漁船や商船に見立てた工作船が日本海に航海を始め韓国海兵隊お下がりのアクアボ
ートで海上保安庁の巡視船に乗り上がって気配に気づいた海上保安官を射殺した。銃声に気がついた別の隊員が駆けつけてくるが他の兵士が投げナイフで隊員の首を射止めて殺傷した。
    兵士は防寒の迷彩服を着ており装備は韓国軍が使ってたK2自動小銃を使っており自衛隊と海上保安庁が装備している89式自動小銃と同じ5.56ミリ弾を使用している。
    船内に残ってる海上保安官を残らず射殺して武器庫に向かった。
    「自衛隊と海上保安庁が採用している89式小銃を発見。分解、結合、整備要領の書いたマニュアルも見つかりました。」
   高句麗兵が上官に報告した。
   「弾はK2や米帝が使ってるのと同じ5.56ミリ弾だ。回収して研究班に一部を提出させろ。」
   上官は命令をした。
   日本の陸地近辺を巡視している船はほとんど発生した電磁パルスの影響で機器や操縦が不可能になったものが多く正常に動くのはほんの一部だけだった。
    
   日本海 
   日本海の鮫が多く泳ぐ水中には高句麗海軍の潜水艦があちこちに分散しており日本の海岸に押し寄せ始めている。
   潜水艦が水中から地上に向かってミサイルを発射して海上自衛隊のイージス艦を攻撃し始めてオスプレイやヘリを輸送できる揚陸艦までも撃沈した。
   水平線には高句麗の船舶が押し寄せてきて僅かに残った海上自衛隊のイージス艦に高句麗海軍の特殊部隊が乗り込んで行った。敵艦と交戦することで手一杯の海上自衛隊員達は背後から特殊部隊に襲撃されてほとんどの隊員が命を落とし映画「亡国のイージス」のようにあっという間に乗っ取られてしまった。
    高句麗の輸送機と戦闘機は北九州や福岡市上空を数多く飛来して香椎や和白、照葉の地域には空挺部隊が降下して北九州には航空支援を受けた陸軍と海軍陸戦隊が上陸を始めた。
  
    北九州市戸畑区
   元自衛官で士長の階級で3年で除隊した蛙永貴彦は精神的疲労で施設警備から交通警備に移ってちょうど警備の仕事が昼から短時間の日になっていた。
   制服に着替えたまま外を見ると上下カーキの服を着てその上からベストを着た兵士が道路まで沸いてくるように現れた。
    蛙永は兵士に見つかる前にその場を離れて裏路地から逃げて行く。
    洞海湾から民間船に見立てた船から上陸していき水上警察や警備を銃撃して水平線には警官や海上保安官、兵士の死体が浮かび上がった。
    兵士は制圧した地域の道路に検問を敷いて歩行者を拿捕した。
    世界情勢はヨーロッパでも財政破綻や女性も徴兵したことで国力と財力を失いロシアに吸収されたり、アメリカからもNATOの脱退を求められる国まで出てきた。しかし高句麗人民連邦と中国、ロシアの支援もありアメリカを手放した国までも出てきた。赤化統一された朝鮮半島国家である高句麗人民連邦は裏では関係に亀裂の入っていた中国政府、半島を見放していたと思われていたロシアでさえも高句麗を支援するようになっていた。
    高句麗人民連邦軍部のキム・グァンス中佐は北九州市を担当しており上下カーキ色の服で武装させて階級章、国旗を使わずに敵地侵略を提案した戦術家の1人だった。
    「警察署を制圧して猟銃保有者リストを探り当ててそいつらの住所を特定して捕獲しろ!」
    キム・グァンス中佐は歩兵部隊の兵士に命令した。
    「了解しました。」
    兵士は分隊長の元に走って行き警察署を制圧するように命令されたことを伝えて分隊に復帰した。
    警察署の裏には想像学会と呼ばれる宗教団体の施設があり信者がバタバタ逃げてお経を唱えていた。
   四輪駆動車から兵士が機関銃を乱射して信者を的にして射殺して行き投稿してきた者をトラックに詰め込んだ。
     蛙永は速やかに家に戻りタクティカルペンとククリナイフを手にしてその場を離れて小倉方面に向かった。
    沖台通りでは警察官が拳銃を取り出してパトカーを遮蔽物にして兵士と銃撃戦を繰り広げていた。兵士達は遮蔽物に隠れながら移動して行き海上保安官から鹵獲した89式自動小銃を構えて突進して行き車の陰から警察官に向かって連射している。
   「本部、応答願います。国籍不明かつ正体不明の兵士数人が銃撃してきます。応援をお願いします。」
    警察官は隠れながら無線で応援を要請するが反応は無かった。

    小倉南区
   パルス粒子砲の影響がなかった北九州市に所属する小倉駐屯地の陸上自衛隊も方面総監から「ちょうどアナログの連絡方法で通じた内閣総理から出動命令が来た」という事で防衛出動に出ることになった。
    北九州を担当する部隊は第40普通科連隊で小倉に住む自衛隊マニアならほとんどが知る普通科部隊であり市街地戦のノウハウが活かされている部隊である。
    第40普通科連隊は福岡駐屯地が武装集団に占拠された事件で防衛出動の可能性を考えてレンジャー資格保有者と狙撃手、レンジャー教育を受けた経験のある隊員が選出された。警衛所には武装した自衛官が警備しており隊舎の屋上には敵航空機を牽制するための対空機関銃が設置された。
    
    福岡市 東区 和白 香椎近郊
    香椎浜の上空には民間カーゴジャンボ機を青迷彩に塗装した輸送機が10機ほど飛んでおり輸送機からは灰色の市街地迷彩服を着た空挺部隊の兵士達がパラシュート降下を始め建物の窓や通りすがりの人々に威嚇射撃を始めた。
   海岸からも船から陸軍の兵士が上陸してきて海水浴場からも水陸両用車や軍用車両が上陸して砂よけの塀を兵士がRPGロケットランチャーを発射して破壊して道を作り車両を通した。
    
    北九州市 若松区
   高塔山の頂上には二つのプロペラで動く大型輸送ヘリが離陸状態になっており機内からロープを垂れ流して高句麗特殊部隊員達が降下してそれぞれの遮蔽物に待機した。
   グリーンパーク沿いの波止場には輸送船が停泊して米軍や韓国軍から鹵獲したジープやハンビーが降りてその後に歩兵や対戦車兵が上陸していた。輸送船から降りたトラックの積荷から通行止めバリケードとカラーコーンとバーを出して検問所を設営して通りかかる人の持ち物検査などを行った。芦屋基地にも空爆が行われその後に空挺部隊によって基地内は制圧されてしまい基地の外周からは工作員からの襲撃により混乱が巻き起こってしまった。
   
    小倉南区
   小倉駐屯地の自衛隊が業務隊、整備大隊の隊員を駐屯地警備に回して第40普通科連隊を高句麗人民連邦軍の支配下に置かれた地域に送り込む方針にした。
   普通科連隊の本部管理中隊に属している情報小隊が夜間に敵が占領した地域まで斥候に向かい敵の情報と目的地の帰来地点を確保する作戦を行われることが隊員一人一人に伝えられた。
    近くの小学校や中学校、高校には生徒を避難させて地方自治体が非常食や飲み物を配給を始めている地域が増え飲食店やカフェを閉店している場所も増えていた。
    まだ制圧されていない地域は門司区、小倉南区、小倉北区内陸部と戸畑区の一部、そして八幡西区、東区だけだった。門司区も海沿いで海峡も高句麗船団との交戦で苦戦を強いられており陥落するのも時間の問題である。
    
   小倉北区
   マンホール現場で仕事するメグは作業用カーゴパンツに青迷彩のジャンパーに身を包み持っているのは工具だけだった。ドライバーで後ろから敵兵を刺して倒していこうと考えている。地元の友達と疎遠になっているため仲間に出来ないし一人で立ち向かうしかない。
    小倉北区の日明は高句麗の陸戦隊に占領され娯楽施設は榴弾砲で破壊された。近くのスーパーは高句麗兵が制圧し補給品保管庫として入口の付近に土嚢が置かれ完全に要塞化されている。 常駐警備員はその場で射殺され従業員は抵抗した者は殺された。
   浸透工作員達はスタッフの制服や警備員の制服、作業着に着替えてまだ制圧していない地域に潜り込む準備を始めた。彼らはどの環境においてもゲリラ戦のプロ。土地勘把握にも長けている。
    強奪した救急車やキャンピングカーに兵士を乗せキャンピングカーの中に韓国軍が使用していたM240機関銃を脚付きで取り付けた。
   「小倉北署を襲撃して機能を潰すぞ。今頃、俺らのような正体不明の軍隊に攻められて一般人同然の俺らに襲われるとは思ってもいないだろう。」
    AK74自動小銃を持った作業服姿の工作員はニタついて呟いた。
    警備員の制服と思われる服装をした工作員も「所詮、日本の警察ば能無しのバカだ。シラミにも及ばん」と余裕の表情で言う。
   小倉北警察署は特殊急襲部隊SATで訓練を受けた経験のある機動隊員を集めて紺色の出動服に黒の防弾ベストと防弾ヘルメットを装備してサブマシンガンMP5Jを持たせた。制服警官もヘルメットと盾をを装備して警察署周辺の警備に付いて防御態勢になった。
   「自衛隊の奴らは何してるんだ!」
   ベテランの警察官は愚痴をこぼした。
   「今、小倉駐屯地の部隊が出動して敵の占領下に置かれた地域に展開しているらしい。」
   他の警察官は本部から得た情報に元に自衛隊の動きを話した。
    警察署付近の大通りの歩道に作業服を着た無精髭の男達がうろつくようにたむろっていた。
   「すみません。どうされましたか?」
    若い警察官が作業服服姿の男に問いかけた。
   作業服の男はバッグから拳銃を取り出して発砲した。若い警察官は額に風穴を開けて後ろに倒れ盾を構えた警察官が身を隠しながら拳銃取り出す。
   警察官に銃撃した男たちは手榴弾を盾を持った隊員に投げた。
   「ん!手榴弾だ!逃げろ、」
    投げられた手榴弾に気づいた警察官が大声をあげた。
   手榴弾は炸裂して近くにいた警察官は弾き飛ばされ遠くから来た機動隊員がMP5Jサブマシンガンで男たちを撃ちはじめた。
   撃たれた男はピンを抜いたばかりの手榴弾を持っておりうずくまりながら自爆した。近くの武装した男も爆風で飛ばされ立ち上がろうとするが射殺された。
   手榴弾で自爆した男の遺体は言葉では表せないほどに無残な状態になっており手榴弾を持っていた手が粉砕されていた。
   警察官側には足を吹き飛ばされたり破片が首や目に刺さって殉職してしまった者が数人出てきている。
    遠くからキャンピングカーが走行してきてタイヤがパンクすると同時に動きを止めた。車内からM240機関銃で待ち構えていた警察官や機動隊員を的のように撃ち始め無意識のうちに警察官達は胴体に数発の弾丸を食い込まれて絶命した。
   「奴ら機関銃を撃ってる!それ以上、体を出すな!死ぬぞ!」
   覆面をした機動隊員が怒鳴った。
   キャンピングカーの陰からRPG7ロケットランチャーを持ったつなぎ服の男が警察署出入り口に発射した。
   「RPGーーー!」
   誰かが叫ぶと同時に近くにいた武装した警官達が吹き飛ばされ宙に舞うようにして壁に打ち付けられた。
   警備員の格好をした男がAK47を乱射して屋上から警察の狙撃手に頭を撃ち抜かれた。
   警察署を襲撃したのは高句麗の敵撹乱の為に送り込まれた工作員で任務の為なら死を恐れない人材だった。
   高句麗工作員は海上保安官の死体から鹵獲した89式自動小銃まで装備しており取り扱い要領を呼んで覚えたかのようにしている。
   「日本の89式は引き金をがっちり押しすぎれば当たりにくいが楽に押すと何気にいい感じだ。人それぞれだがな!」
   高句麗工作員は照星で狙いをつけながら呟き遮蔽物に隠れている警察官達を打ち続ける。
   警察官は次々と倒れていき中には逃げ出す者も出てきた。
   「30分後には機械化歩兵が来る。それまでの辛抱だ!」
   リーダークラスの工作員は士気を上げて仲間に言い聞かせる。
    冷酷な目をした工作員はハンドガンで瀕死でうずくまっている警察官にとどめを刺した。
   「そこまでする必要はないだろう。なかなか鬼畜だな」
   冷酷な工作員の親しき仲と思われる男が笑いながら言った。
   「どうせ助からないし助ける価値も無い。」
   冷酷な工作員は死体に唾を吐いて警察署の中に入った。
   第40普通科連隊の本部管理中隊に属する情報小隊が小倉北警察署と小倉城付近まで偵察用オートバイで偵察することになり駐屯地からの経路と帰り道を把握するように命じられた。
   「いつどこが敵に制圧されたか分からないし油断できない状況である。必ず無事に戻ってこい。」
   1等陸曹の隊員が偵察に向かう陸士長と3等陸曹の隊員に念を押すように言った。
   「必ず戻ります!」
   陸士長は1等陸曹にそう告げるとヘルメットを被り出撃態勢に移った。
    警衛の門を通過してモノレール沿いの道を隠密に全身して行った。
   人の通りは少なく無人都市のようだった。長い時間をかけて小倉北警察署周辺の勝山公園付近に行くといつのまにか敵の機械化歩兵のジープや装甲車が停車しており迷彩服を着た兵士達が装甲車から降りてきて周辺の巡回を始めた。
    後発の部隊が小倉城に展開して敷地内に天幕を建てて道という道に土嚢を積み降ろし始めた。
   一方では沖縄と鹿児島には所属不明の漁民兵が上陸をしてゲリラ戦を展開しているという情報が入り沖縄の米軍基地や自衛隊基地が襲撃されている。米軍はほとんど撤退しており兵士はわずかしか残っておらず致命的にも漁民兵が相手となる為、民間人相手として相手に出来ないでいた。海域には漁船で埋め尽くされ海上保安庁の手にも追えなくなっている。
   台湾が中国のダムを攻撃する計画を立てるものの貿易、国際世論の目を気にして却下することになり緊迫していたが今ではほとんど中国に呑み込まれてしまっていた。
    
   北九州市 戸畑区
  ボーは隠れながら移動して警察官の死体から拳銃を拾い弾薬も回収した。公園には兵士達がたむろしておりポールを装甲車で破壊して園内に駐車してシートなどで日除けを公園の遊具の柱に取り付けていた。
    ボーが持っている拳銃の装弾数は5発。予備弾薬は10発。敵の兵士の数は装甲車操縦士入れれば10人ほどいる。
    「万事休すとするか!」
   ボーは呟いてその場を離れて住宅地内に忍び込んだ。
   高句麗兵が単独で立ち小便をしており済ませた後は銃を床に置いてブーツの紐を入れるためにしゃがんでいた。
   ボーは思い切り拳銃の引き金を引いて3発ぐらい発砲した。
   「ぐあぁっ!」
   胴体に弾丸を喰らった兵士は後ろに倒れた。
   ボーは吐き気を抑えながら兵士の銃を奪ってバッグに予備弾倉を入れてその場を離れた。
   銃声を聞きつけた兵士が駆けつけてきて周りを見渡しながら仲間の死体を見つけた。
   「同志、なんて事だ!」
    仲間の高句麗兵は動揺している。
   「俺らに立ち向かおうという民間人も居るわけだな。望むところだ!」
   目つきの鋭い高句麗兵は仲間の敵討ちを企むような口調で言った。
    戸畑区役所には制服姿の士官が区の町内会長と一緒に話をしている。
    「日本共産党の同志を迎える準備をしろ。同志をプロパガンダ要員にして市民を従わせるようにしてくれ。」
    士官は流暢な日本語で会長に申し出をした。
   出入り口や駐車場には緑色の迷彩服を着た高句麗軍憲兵が立哨しており大通りの道路には検問を敷いて不審車両の取り締まりを行なっていた。
    北九州担当のキム・グァンス中佐は士官を連れて逮捕した逃亡住民をトレーラーに乗せた。
   「この野郎!修羅の国北九州を舐めんじゃねえぞ!」
   背広のヤクザ風の男がキム中佐に叫んだ。
   キム中佐は白頭山拳銃と呼ばれるCZ75ハンドガンを取り出して男の眉間に銃弾をお見舞いした。
   「死体処理!」
   キム中佐は士官を取り巻く憲兵に命令した。
   「了解しました!」
   憲兵達は背広男の死体を担ぎ上げて違う車両に積載した。
   
   小倉南区
   小倉駐屯地の第40普通科連隊は第1中隊を小倉北区に送り込むことを決断して小倉城と小倉北警察署の奪還を決断した。
   「情報小隊より情報、敵の機械化部隊が小倉城を本拠地に活動を開始。門司区には敵陸戦隊が上陸。制圧された。」
   連隊本部に情報が通達される。
   「いったい敵はどんな奴らなんよ?!」
   若手の3等陸曹がタバコを吸いながら言った。
   「多分、高句麗やろ。中国がここら辺を攻めてくるのはそうないしな。」
   同期の隊員が推測を言った。 
   高句麗人民連邦軍はしだいに勢力を拡大させており北九州の半分と福岡市内を占領した。実際に無血占領した地域もあり日本の殆どが敵の占領下に置かれつつあった。
    出陣をした第40普通科連隊の第1中隊は89式自動小銃に夜間照準具を取り付け夜間の制圧作戦の舞台となる市街地戦に備えた。鉄帽には暗視ゴーグルを取り付けて顔は暗くフェイスペイントを施した。
   「奴らの戦略。お手並み拝見といこうか。」
   堅実そうな雰囲気をした陸曹長は歯をギシギシ言わせて呟く。
    戦後何十年も日本は平和ボケをしており戦争とは無縁状態だった。海外で紛争やテロが起こっても他人事のように生活した国民にとってツケが回ってくることは誰しも想像がつかなった。
   自衛隊車両は競馬場通りから前進していき運転手と助手席の隊員は周りを見渡して警戒している。
   高句麗軍の制圧地域の各箇所には検問所と警戒ポストが設置されて陸上自衛隊対策に歩哨をつかせていつでも戦闘に入れるように待ち構えた。田舎の山には天幕を建てて対空機関銃を設置している。
   自衛隊車両の先頭を走行している運転手は目を細めて前方を注視して一旦停車した。
   「おい、急に止めるな!馬鹿!」
   後続車両の隊員は怒鳴った。
   「あそこ、敵が防御態勢に入っております!」
   先頭で運転していた隊員が驚きを隠せない表情で言った。
   「あの迷彩服にあの装備、もしかしたら高句麗軍です!」
   先頭を運転してた隊員が怒鳴った先輩隊員に挙動不審な表情で言った。
   シュン!
   微かな音と同時に先輩隊員の顔に何か生暖かい雫のようなものが飛び散った。そして何かが先輩の肩にぶつかるように当たった。見てみると先頭を運転してた隊員が頭を撃ち抜かれて倒れていた。
   先輩隊員は荷台の場所まで行き扉を開けた。
   「降りろ!降りろ!1人死んだぞ!戦闘開始だ。奴ら撃って来た!上の奴らの指示がなくても撃て!」
   叫びながら後ろに乗ってい隊員を降りさせて戦闘準備をさせた。
   撃たれたのは先発隊の要員でまさかあちらこちらまで敵が検問を設置して待ち伏せまでしているとまで考えられなかった。検問は簡易的なやり方で小倉の地理を把握されていた。
    敵は検問所から散らばって銃撃をして来た。近くの乗り捨てられた車の陰から大きめの何かを担いでる兵士の姿が見える。
   「RPG !」
  他の隊員が叫ぶが発射されたロケット弾が先頭の車両に直撃して車体が爆発した。
   自衛隊員は89式自動小銃を発砲しながら車両に隠れた。高句麗兵は容赦なくK2自動小銃やAK74を連射して撃って来ており慌てている自衛官に弾丸を喰らわしていった。RPG装備の兵士は装填を開始して最後尾の車両に照準を合わせて発射した。まっすぐ飛んでいき車両は大破して近くにいる隊員も爆風で弾き飛ばされた。
   夜間の戦闘で自衛官のほとんどが殉職してしまい高句麗軍の圧倒的な戦略に尻もちをつかされるような目に遭う結果となってしまった。どの世界でも高句麗軍の実力を甘く見てしまっていたのもあり日本国民は肝を抜かれた心境になっている。主婦に馬鹿にされ、中高生に馬鹿にされ、女子高生や女子大生に馬鹿にされる存在の高句麗人民連邦の軍隊。そんな心の中で弱々しく見られている軍隊が実力発揮で日本を手玉に取って行ったのである。
    先発隊は撤退を余儀なくされ負傷者を連れて安全な場所に退避した。
   高句麗軍は大破した自衛隊車両を調査し始めて自衛官の死体の持ち物を調べた。
   「この車両は73式トラックか。そしてこいつらのメモ帳と何か手がかりになりそうな物を回収しろ。情報部に引き渡す!」
   分隊長クラスの高句麗兵は部下たちに命令した。
   
    小倉北区
   メグは敵の死体から鹵獲したK2自動小銃を装備して上半身には敵兵の装具を着けていた。西港は敵がウヨウヨ活動しており単独に行くのは自殺行為となる。高句麗兵は町のあちらこちらに居てパトロールをしており不審な人を見つけては持ち物検査などをしていた。中には小銃で殴られる続けて亡くなった者もいる。
    高句麗兵は無人化した工場で陣地を構築して自動車整備工場で軍用車両を修理したり整備する事にした。整備部隊が入場して歩哨の誘導に従い資材を降りてきた兵士が流れ作業を行った。
    
    小倉南区
   北区寄りの車道や住宅地に南警察署の警察官達が検問を敷き陸上自衛隊の普通科の各小隊から選出された隊員が支援に加わった。
    後方には機動隊が待機しておりSATで素養試験を受験した経験のある隊員で固めている。
   第2中隊は警察の検問所付近にて陣地を構築していき小隊は各箇所に分かれて敵の進軍に備えた。
    深夜、交代で警備を交代してそれぞれの配置につき通信要員が有線を貼り始めた。車両が通ったり人が通る場所にはアルマジロと呼ばれる線が引っかかって切れたりするのを防止する防護膜を張っていく。
    高句麗軍の銃撃を受けた第1中隊の小隊は残った高機動車を一軒家の車庫に隠して近くに不寝番を割り当てた。
    「足立、高木、村田の3人で不寝番についてもらう。2時間交代で行なってもらう。」
   分隊長は不寝番の人員を割りたて指示を出した。
   割り振られた隊員は89式自動小銃に取り付けた夜間照準具で外側に照準を合わせて暗い中、敵が来ても良いように心の準備をして待ち構える。
    
   若松区
   ジョン・カンファン中佐は若松市民会館での表彰式で日本の九州を陥落させる一歩を踏み出す為の工作活動で活躍した功績を讃えられ大佐に昇格した。
   若松区の重要施設は高句麗陸軍の特殊部隊が占拠して後発の一般部隊が後に引き継ぎをして生活のために必要となるインフラの支配を始めていた。
    港湾辺りには揚陸艦やフリゲート艦が停泊しており作業員は高句麗兵の監視の中で誘導作業や通路の整備を強いられている。
   高塔山には航空自衛隊対策に対空陣地を構築しており望遠台には土嚢や板などが貼り付けられていた。
    
    北九州市戸畑区
    蛙永は鹵獲したAK74でゲリラ戦を仕掛けて逃亡生活をしている住民の協力を得ながら高句麗兵を撃退していた。手榴弾と予備弾薬を奪い拾った小銃を近くにいる住民に渡した。
   「逃げ回ったところで警察も自衛隊も当てになると思ってたらまずい!自分自信と愛する者は自分で守らないと!」
   蛙永はそう言って立ち去った。
   高句麗兵は蛙永を追う。聞きなれない言語で仲間と合図して向かってきた。蛙永は遮蔽物に隠れて引き金を数回引いた。
   高句麗兵の1人の腹部に命中して仲間が被弾した兵士を搬送して引き上げた。他の兵士が蛙永に銃撃を始める。蛙永は全速力で走って複雑な住宅地に逃げた。
   「除隊してから運動してないから体力がだいぶヤバい!それに生活習慣病予備軍の1人だからな。栄養と運動量も確保しておかないと。」
   蛙永は量の少ないお茶を飲んで一軒家の庭に隠れて休憩をした。
    残弾は残り60発、手榴弾は2つ、コンバットナイフ1つ。少数の敵兵を倒すのに弾薬を消費し過ぎた。射撃の腕も落ちている。練習してる暇もなく敵を殺す場数で何とか挽回するしか無い。ゲームで言うならまだレベル1状態だった。
   蛙永は地元の人からはボーと呼ばれている。学生時代はバスケ部女子と陸上高跳び女子から外国人と思われていたこともあった。理由は単純に滑舌が悪く日本語のイントネーションがおかしいからだ。蛙永は部活にも入ってなく学生ニートでいつも戦争映画や戦闘ゲームに没頭しておりそこでの知恵がこのゲリラ戦で活かせるとは思ってもいなかった。テニス女子や体操部女子の和風美少女からは朝鮮顔と言われてた事が脳裏に浮かんだ。
    「思いついた!高句麗兵の服を奪えば変装は出来るかもしれん!装具はこの通り、問題は迷彩服やな。」
   蛙永は女性陣から朝鮮顔とバカにされていたこと思い出して敵に変装する事を考えついた。
    家に戻った蛙永は米軍のデジタル迷彩ズボンに履き替えてブーツを履いた。外に出る際は周囲を確認して弾薬を装填して建物沿いを歩いた。
    
    
    
    
    

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