異世界から勇者を呼んだら、とんでもない迷惑集団が来た件(前編)
6話
突如として森林地帯が途切れ、その先に平野が出てきました。表現がおかしく感じるかもしれませんが、実際に不自然なほどに急に森が途切れたのです。
その平野にあったのは、多数の王国軍旗を掲げた軍勢に攻撃を受けている要塞でした。
何で森を抜けた先にいきなり要塞が出てきたということに関しての疑問は残りますが、位置的に考えるとその要塞はジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の所属のようです。ヨブトリカ王国が内乱を起こしているみたいな可能性もありますが。
しかし、その要塞が連邦軍のものだという根拠はもう1つあります。
それは、先頭を走り真っ先に森を抜けて飛び出したリュドミラさんの言葉と表情でした。
「そんな…モスカル要塞が…急がないと!」
自己紹介にもあったように、リュドミラさんの所属はジカートリヒッツ社会主義共和国連邦です。
そして、リュドミラさんは何らかの理由でヨブトリカ王国の騎士に追われていました。
銃を持ち歩くなど物騒であるとは思っていましたが、その連邦軍の要塞をヨブトリカ王国の旗を掲げた軍勢が航空戦艦まで持ち出して攻撃しているところを見ると、その答えは明らかとなったでしょう。
どちらから開戦の火蓋を落としたしたのかわかりませんか、ヨブトリカ王国とジカートリヒッツ社会主義共和国連邦が戦争をしているということになります。
それも小競り合いなどではない、下手をしたら国家総力戦に発展しているほど大規模なものであると推測できます。
人族はいつ天族や魔族の介入で滅ぼされてもおかしくないというのに、このような派手な内乱はあんまりではないでしょうか。
しかも、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は、現在浅利さんが乗っ取っている国家であり、また人族最強の軍事力を持つ国家の1つでもあります。
魔族皇国との最前線でありながら、クラスメイトに対する復讐にかられている浅利さんに支配された今、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は非常に不安定な状況にあるでしょう
魔族が神聖ヒアント帝国やアウシュビッツ群島列国に仕掛けたように、魔族皇国との最前線にありながら不安定となっている今のジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に対して裏からの支配を画策していたとしても何ら不思議はないでしょう。
それだけではなく、異世界の侵食者の存在もあります。彼らもまた、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に目をつけたとしてもおかしくはありません。
浅利さんは魔族や天族、人族といったこの世界のことなど気にせず、ただ自身の復讐を果たすためだけに動いている節があります。異世界に召喚されたのが、完全な暴発を招いたと言っていいでしょう。いじめを受けるようになった経緯に、彼女の非は一切ありませんし、その結果父親もなくし全てを失ったのですから。復讐に走って他を一切顧みなくなったとしても、何ら不思議はありません。
そんな浅利さんの復讐心を利用して仕舞えば、連邦はいともたやすく傀儡となってしまいます。
開戦している様子からすでに手遅れということになるでしょうが、それでもこれ以上戦火を広げられて仕舞えば、その戦は他の人族の国々を、そしてクラスメイトたちのいるネスティアント帝国を確実に巻き込んでしまうでしょう。
そう考えるとヨブトリカ王国に加勢するべきなのでしょうが、あの騎士たちの行為を見てしまった以上は素直に王国側につくということもできません。
それに、ヨブトリカ王国にも何らかの事態が動いている、という気がしてならないのです。浅利さんを止めるためにと言えど、安易に王国側に付くというわけにもいきません。
それに、縁といいますか無事だった雪城さんと再会できましたし、連邦に属するリュドミラさんともご一緒することになりました。浅利さんを止めるために連邦の罪もない人たちを虐殺されるような真似をして仕舞えば、自分に人族の勇者を名乗る資格はなくなるでしょう。
そして、それは今見るからに圧倒的に不利な連邦軍を救うことに、最善で最初の手があると自分は確信します。
何しろ、リュドミラさんがかなり慌てているのです。この要塞が落ちることがあれば、何らかの大きな事態が動いてしまうのかもしれません。
「これじゃ、グノウが…ッ!」
リュドミラさんは身を伏せると、担いでいた銃を取り出して構えました。
おそらく要塞の戦いに加勢するのでしょう。もちろん、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦軍の側として。
リュドミラさんが構えた銃口の先には、ヨブトリカ王国軍の本陣らしき場所があります。
リュドミラさんが臨戦体制に入る中、雪城さんがリュドミラさんのことを横から覗き込みながら、戦の真っ只中とは思えない気の抜けるような口調で尋ねました。
「佐久間、あの要塞はきっと上から見るとプリンだぞ」
ズコッ!
またもそんな擬音が聞こえそうな、見事な滑りをリュドミラさんが見せてくれました。
しかし銃身の軌道は一切ずれていないというのが驚きです。
さて、やはりといいますか、この人なら驚くようなことはなかったといいますか、相変わらず場違いでそして理解不能なことをおっしゃる雪城さんです。
要塞はどちらかというと、黒ですし、五角形ですし、ペンタゴン(英語で五角形の意味)と称するのが正解だと思うのですが。
まあ、あれを見てペンタゴンと思うのは自分くらいだと思います。ヨホホホホ。
面白いのは航空戦艦という空を飛べる強力な兵器がありながら、要塞戦がまだ残っているこの世界の戦場のあり方ですね。
陸なら城、海なら島というふうに、平面的な戦場の時代において、要塞は敵の進撃を阻止したりする防衛の要としての役割で発端したのが自分たちの世界でしょう。
それが経済の要衝であったり、交通の要衝であったり、軍事拠点としてだけでなく街や都市の単位に進化して物資の集積や兵員の補充という、拠点の役割となります。鉄道が引かれて内戦戦略の概念が浸透すると、この時点で防衛だけでなく支援としての役割も果たすようになりました。
そして鉄道から車両に時代が移り、高速かつ長距離の移動が可能となり、要塞を交わして軍を進めることができるようになったことで固定要塞の戦略的な価値は大きく削れました。
さらに時代が移り、籠城を崩す大砲の登場により、大砲に対抗するとともに安く頑丈に作れる塹壕や洞窟が要塞の役割を変わるようになり、城塞の姿は大きく変わります。
そして、それに革新を生んだのが航空戦力、すなわち要塞や塹壕を飛んで躱すことのできる、または一方的な攻撃を可能とする三次元で戦う戦力を生んだ兵科の登場でしょう。
これにより要塞の価値は極端に落ち、首都や国家の中枢部を守る最後の坊隔壁としての役割、つまり対超兵器用のシェルターという、生まれた当初の進軍する敵に対して派手に立ちふさがる要害からはかなり離れた存在まで姿を変えています。
それが自分の認識する要塞ですね。
航空戦力の登場は要塞のあり方を覆す存在です。
それがすでに兵器として存在するこの世界に、まさかだだっ広い平野に鎮座する要塞が残っているなど、自分は思ってもみませんでした。
特別な地形であれば要塞もそれなりの役目があるでしょう。
しかし、森と平野の中で、平野の真ん中に置かれた要塞ほど無駄なものはないと思います。
誰がこんな要塞を作ったのかは部外者の自分には不明ですが、少なくともこの要塞を建てた方とこの要塞を攻めようと考える方に対しては、戦略家としての頭脳を疑いたくなります。
お前みたいな変態が他人のことを疑うな、と? ヨホホホホ。ありがたい評価ですね、落ち着きます。やはり、自分はけなされてこそなんぼですな。ヨホホホホ。
いえ、現状は戦場が目の前に広がっています。
そして、圧倒的に不利なのは見るからに要塞を守る連邦軍です。
対空砲火は航空戦艦の爆撃によりほぼ沈黙状態で、空から兵が降り立ち外の王国軍と連携して要塞を今にも攻め落としそうな状況となっています。
そして、この要塞の存在はリュドミラさんにとってかなり大きいもののようですね。
リュドミラさんは雪城さんのボケに体勢を思わず崩しながらも、すぐに持ち直して構えた銃を王国軍の中に向けました。
「術式構築…くらえ、雷撃術式!」
リュドミラさんが引き金を引きます。
直後、彼女の銃から一条の雷撃が放たれ、空気を割くように突き進むと王国軍の陣中で発散し、多数の雷撃を王国軍に落としました。
完全な奇襲攻撃に、王国軍の陣の一角が悲鳴と混乱の中に陥ります。
敵の襲撃を知らせているのだろう鐘が響き渡る中、リュドミラさんは次弾を撃ち込みます。
「くたばりやがれ! 対軍術式!」
構築された術式が、混乱する王国軍の陣に飛んでいき、爆発を起こしました。
それも、ただの爆発ではありません。爆発の中から多数の金属片のようなものが飛び出したのが見えました。
ちょうど、殺傷能力を高めるために爆弾の中にネジなどを仕込む改造の方法に近いですね。
それが殺傷力を高め、術式を受けた王国軍に阿鼻叫喚を生み出します。
「次ぃ!」
さらに術式を構築するリュドミラさんですが、何やら口調がおかしくなっているようにも思えます。
まあ、そんなことを気にしている暇はすぐになくなりますが。
王国軍も銃撃を3度も受ければこちらの存在に気がついたようで、王国軍の一部が銃を手に魔導機構車両に乗って向かってきました。
浅利さんを止めるためには、できればヨブトリカ王国の側に立ちたかったのですが、リュドミラさんがいるのでしばらくは連邦の側に立って戦うことにしましょう。
自分がドジョウ先生を担いだまま立ち上がると、隣で雪城さんも立ち上がりました。
「事情は知りませんが、何かの縁。この場は連邦の味方をするとしましょう」
「飯島の敵は、私の敵だ! モコモコ、ドッカーン!」
自分たちの見せた参戦の意思に、一瞬驚いた様子のリュドミラさんでしたが、即座に雪城さんにツッコミを入れました。
「リュドミラだっつってんだろうが! 脳天ぶち抜くぞ、おら!」
…何やら性格が変わっているようですが。
まあ、今は戦に集中するべきでしょう。ヨホホホホ。他のことに意識を向けて仕舞えば、要塞が陥落してしまいます。
要塞に対する攻勢を弱めるためにも、ここは現実ではなく派手に立ち回って王国軍の目を引く方が先決でしょう。
「死ね、ボケ!」
リュドミラさんがやけに荒んだ口調をしながら、貫通術式で王国軍の陣の中で指揮をとっているらしい人物の頭を撃ち抜きます。
大隊長くらいの格はあったのでしょう。リュドミラさんが敵の将を狙撃して撃ち殺した瞬間、王国軍の一部に大きな動揺が見えました。
「負けてられないのだ! ドクター、先陣はもらうぞ! 1+1は、召喚魔法!」
雪城さんは、日本人という争いや戦争から程遠かったはずの召喚前の姿からは想像できないような躊躇のなさで、魔法により召喚した巨大な盾を手に向かってくる王国軍に突撃していきました。
人間を超越した勇者補正の身体能力で森から飛び出し駆け抜け、車両を盾で殴ります。
「わっしょーい!」
重厚な金属で覆われた魔導車両ですが、まるで紙で作られた模型のように、雪城さんが振り回した盾の横殴りの一撃で大きくその形を歪めて、中の人族の兵士たちは投げ出され車両は破壊されてしまいました。
「か〜ら〜の〜!」
雪城さんが盾を放り投げます。
そこには鎖が繋がっており、ヨーヨーのように飛び出した大楯は別の車両に狙いを定めて振り回されると、まとめて二台を轢き潰しました。
「ワッハッハッ!」
乗員もろとも車のミンチを量産した雪城さんは、そのままヨーヨーのように扱われる大楯を空めがけて放り上げます。
それは航空戦艦の一席に狙いを定めると、それを巨大な斧が叩きつけられたかのように容易くへし折り、撃沈させてしまいました。
「な、ななな…っ!?」
さすがにそれには王国軍も唖然としてしまいます。
連邦軍も驚いているようですが、これならば大いに王国軍の目を引くことができるでしょう。
度肝を抜かれた王国軍は、一気に戦意が傾きました。
「ヒ、ヒイイィィィ!? あんなのに勝てるわけねえ!」
盗賊のような形のヨブトリカ王国軍の兵士たちが、我先に雪城さんから逃げます。
それは味方を踏み潰し、殺すのも厭わない混沌とした逃亡行為でした。
敵前逃亡をする兵士に、王国軍の車両が次々に銃撃を加えていきます。
「敵前逃亡は死罪だ!」
別の王国軍の指揮官らしき将の怒号が聞こえてきました。
混乱する王国軍は、しかしその将の命令を無視して、逃亡を続けます。
「い、いやだぁ!」
「くそ、邪魔だ!」
「あんなのに勝てるかよ!」
「貴様ら、死にた–––––」
「だまれぇ!」
逃亡する兵士の向けた銃が、その王国軍の将の頭を撃ち抜きます。
しまいには、王国軍で同士討ちを始めるほどに大混乱に陥りました。
その中で、リュドミラさんはつぎつぎに敵兵を狙撃し、確実に撃ち抜いていきます。
「オラオラ、血が足りねえんだよ!」
口調も敵兵を撃ち殺すたびに、ますます荒くなっていきますね。
リュドミラさんって、あれでしょうか? 車のハンドルを握ると性格が変わる人みたいに、銃を撃つと性格が変わる方かもしれません。
おっと、自分も自分で働かなければならないでしょう。
そういうわけで、ドジョウ先生は肩に担いだまま、まだ比較的戦意のある王国軍の集まっている陣営に向かいます。
足の速さは勇者補正の恩恵で超人ですので、即座に戦場を駆け抜けることができます。
王国軍からしてみれば、森から何かが飛び出した瞬間にいきなりの能面の変態が出てきたのです。驚くのはもちろんであり、進軍していた王国軍は足を止めてしまいました。
そして変態がいきなり出て来れば、まず言いたくなることが反射的に言葉になってしまいますね。
「な、何奴–––––ぶっ!?」
先頭だった王国軍の軍人が発しようとしていた誰何の声を、問答無用で強制的に言われる前に終了させます。
具体的に何をしたのかと言いますと、その王国軍の軍人の顔を殴り飛ばしました。
力はあまり入れてませんが、勇者補正の恩恵を受けた自分のパンチは人族には重すぎます。
顎の骨が変形し、開いたというよりもまさしく垂れ下がった状態となった口から血を含んだ泡を吹いて気を失いました。
普段ならばふざけて、能面に驚くリアクションを楽しむところですが、マウントバッテンの時は煽り魔をできる限り抑えて真面目に戦いたいと思います。
可能性が低いとは思いますが、雪城さんは訳のわからない面が多いからこそ、何を考えているのかわからない方ですので。煽り魔の面を見せて正体を勘付かれるのは避けたいと思いますので。
自分は既に死んだことになっていますから、カクさんとかに生きていることが知られたら周りを遠慮なく巻き込んで捜索するとか言い出しそうですし。
あんな変態、野放しにできるか!とか言いそうですね。
野放しにできない変態というのは、自分でも自覚はあります。しかし、もう少し思慮を持ってもらえないでしょうか。
いつもなら冷静なのに、こういう時は暴走しますからね、カクさん。
ちなみに自分は終始暴走を促します。その結果、自身にも周りにもどれだけ被害が出ようが、面白いなら止めません。煽り魔ですから、ヨホホホホ。
…結局のところ、そのような事態を回避するには誰にも気づかれないのが一番ですので。その可能性を減らすために声も名前も、面も変えました。
雪城さんは、おそらく自分の職種を知らないでしょう。
ソラメク王国では派手に治癒魔法を使いましたが。ヨホホホホ。
「き、きさ–––––ぐあ!?」
銃を構えた王国兵との間合いを一息に詰め、その首を掴み上げ、後続の王国兵に投げつけます。
何人かが巻き添えをくらい、もみくちゃにされて地面に伏しました。
倒れた兵士から銃を拾い上げて、魔力を力ずくで流し込み暴走させてから、それを投げ飛ばします。
マスケット銃に見える魔法を打ち出す術式構築機構の備わったその銃は回転して進むと、まるで円盤ノコギリのように当たる敵の兵器や車両を次々にえぐり取り、切り取り、暴れまわりました。
もう、そこまでやられては王国軍の戦意も霧散してしまいます。
「あなた方が王国の軍旗を掲げた軍隊であることが、私は情けなく、そして腹立たしく思えます。早々に失せていただきたい!」
「ひ、ひやあぁぁぁぁぁぁ!?」
人外と呼ぶにふさわしい勇者補正を得た存在の力を目の当たりにした王国軍は、背中を見せて無様に逃げ出し始めました。
兵が恐れ、慄き、潰走をして仕舞えば、その士気は瞬く間に崩れ、逃げの選択は軍全体に伝染していきます。
上官が銃で逃げる兵士を撃ち殺そうが、その波は崩れるどころか勢いを増していくしかありません。
「ええい、逃げるな! 貴様ら、全員射殺して–––––ッ!?」
リュドミラさんが放った銃弾が、車両の上に頭を出して拳銃片手にわめいていた格好の的となっていた王国軍の将の眉間を撃ち抜きました。
一体何人撃ち殺したのか知りませんが、狙撃するたびに何やら人格がゆがんで行ったリュドミラさんは、その敵将を撃ち殺した時には人が変わったような凶悪な笑みを浮かべていました。
「もっと…もっと悲鳴が…もっと殺される断末魔が、撃ち抜かれる死者の音色が聞きたい! アハハハハ! 楽しい!」
逃げる王国軍を容赦なく撃ち殺していきます。
軍の一翼の瓦解は、航空戦艦が沈められた光景を見ていた戦場全体に広がり、王国軍はパニック状態となって方々に逃げ出していきます。
自分は追撃を行わず、要塞の方へと向かいました。
リュドミラさんがまだ銃を撃っていますが、落ち着くまで待っていては要塞に多数いるであろうけが人が何人死んでしまうかわかりません。
要塞に近づいていく自分に、当たり前のようにそちらも追撃をしかけなかった雪城さんが駆け寄ってきました。
「ドクター、1人で歩いては迷子になるのだ。私を置いていくのは許さないぞ」
「雪城さん…」
やはり、何を考えているのかわかりにくいと言いますか、会話が成立する気がしない方です。
とはいえ、心配してくれたのか、それとも迷子になりたくなかったのか、なぜか懐いている自分についてきたいとの意思は伝わります。
それがどうも従姉妹の双子を思い出し、幼い頃は先導しようと試みながらも最後は結局振り回されたというか、一緒になって暴れたものですなと、懐かしい記憶が浮かびました。
無意識のうちに、片手を雪城さんに差し出していました。
「ドクターの手は、冷たいな!」
迷いなく自分の手を握り返してきた同い年の勇者は、そんな感想をこぼしました。
その平野にあったのは、多数の王国軍旗を掲げた軍勢に攻撃を受けている要塞でした。
何で森を抜けた先にいきなり要塞が出てきたということに関しての疑問は残りますが、位置的に考えるとその要塞はジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の所属のようです。ヨブトリカ王国が内乱を起こしているみたいな可能性もありますが。
しかし、その要塞が連邦軍のものだという根拠はもう1つあります。
それは、先頭を走り真っ先に森を抜けて飛び出したリュドミラさんの言葉と表情でした。
「そんな…モスカル要塞が…急がないと!」
自己紹介にもあったように、リュドミラさんの所属はジカートリヒッツ社会主義共和国連邦です。
そして、リュドミラさんは何らかの理由でヨブトリカ王国の騎士に追われていました。
銃を持ち歩くなど物騒であるとは思っていましたが、その連邦軍の要塞をヨブトリカ王国の旗を掲げた軍勢が航空戦艦まで持ち出して攻撃しているところを見ると、その答えは明らかとなったでしょう。
どちらから開戦の火蓋を落としたしたのかわかりませんか、ヨブトリカ王国とジカートリヒッツ社会主義共和国連邦が戦争をしているということになります。
それも小競り合いなどではない、下手をしたら国家総力戦に発展しているほど大規模なものであると推測できます。
人族はいつ天族や魔族の介入で滅ぼされてもおかしくないというのに、このような派手な内乱はあんまりではないでしょうか。
しかも、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は、現在浅利さんが乗っ取っている国家であり、また人族最強の軍事力を持つ国家の1つでもあります。
魔族皇国との最前線でありながら、クラスメイトに対する復讐にかられている浅利さんに支配された今、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は非常に不安定な状況にあるでしょう
魔族が神聖ヒアント帝国やアウシュビッツ群島列国に仕掛けたように、魔族皇国との最前線にありながら不安定となっている今のジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に対して裏からの支配を画策していたとしても何ら不思議はないでしょう。
それだけではなく、異世界の侵食者の存在もあります。彼らもまた、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に目をつけたとしてもおかしくはありません。
浅利さんは魔族や天族、人族といったこの世界のことなど気にせず、ただ自身の復讐を果たすためだけに動いている節があります。異世界に召喚されたのが、完全な暴発を招いたと言っていいでしょう。いじめを受けるようになった経緯に、彼女の非は一切ありませんし、その結果父親もなくし全てを失ったのですから。復讐に走って他を一切顧みなくなったとしても、何ら不思議はありません。
そんな浅利さんの復讐心を利用して仕舞えば、連邦はいともたやすく傀儡となってしまいます。
開戦している様子からすでに手遅れということになるでしょうが、それでもこれ以上戦火を広げられて仕舞えば、その戦は他の人族の国々を、そしてクラスメイトたちのいるネスティアント帝国を確実に巻き込んでしまうでしょう。
そう考えるとヨブトリカ王国に加勢するべきなのでしょうが、あの騎士たちの行為を見てしまった以上は素直に王国側につくということもできません。
それに、ヨブトリカ王国にも何らかの事態が動いている、という気がしてならないのです。浅利さんを止めるためにと言えど、安易に王国側に付くというわけにもいきません。
それに、縁といいますか無事だった雪城さんと再会できましたし、連邦に属するリュドミラさんともご一緒することになりました。浅利さんを止めるために連邦の罪もない人たちを虐殺されるような真似をして仕舞えば、自分に人族の勇者を名乗る資格はなくなるでしょう。
そして、それは今見るからに圧倒的に不利な連邦軍を救うことに、最善で最初の手があると自分は確信します。
何しろ、リュドミラさんがかなり慌てているのです。この要塞が落ちることがあれば、何らかの大きな事態が動いてしまうのかもしれません。
「これじゃ、グノウが…ッ!」
リュドミラさんは身を伏せると、担いでいた銃を取り出して構えました。
おそらく要塞の戦いに加勢するのでしょう。もちろん、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦軍の側として。
リュドミラさんが構えた銃口の先には、ヨブトリカ王国軍の本陣らしき場所があります。
リュドミラさんが臨戦体制に入る中、雪城さんがリュドミラさんのことを横から覗き込みながら、戦の真っ只中とは思えない気の抜けるような口調で尋ねました。
「佐久間、あの要塞はきっと上から見るとプリンだぞ」
ズコッ!
またもそんな擬音が聞こえそうな、見事な滑りをリュドミラさんが見せてくれました。
しかし銃身の軌道は一切ずれていないというのが驚きです。
さて、やはりといいますか、この人なら驚くようなことはなかったといいますか、相変わらず場違いでそして理解不能なことをおっしゃる雪城さんです。
要塞はどちらかというと、黒ですし、五角形ですし、ペンタゴン(英語で五角形の意味)と称するのが正解だと思うのですが。
まあ、あれを見てペンタゴンと思うのは自分くらいだと思います。ヨホホホホ。
面白いのは航空戦艦という空を飛べる強力な兵器がありながら、要塞戦がまだ残っているこの世界の戦場のあり方ですね。
陸なら城、海なら島というふうに、平面的な戦場の時代において、要塞は敵の進撃を阻止したりする防衛の要としての役割で発端したのが自分たちの世界でしょう。
それが経済の要衝であったり、交通の要衝であったり、軍事拠点としてだけでなく街や都市の単位に進化して物資の集積や兵員の補充という、拠点の役割となります。鉄道が引かれて内戦戦略の概念が浸透すると、この時点で防衛だけでなく支援としての役割も果たすようになりました。
そして鉄道から車両に時代が移り、高速かつ長距離の移動が可能となり、要塞を交わして軍を進めることができるようになったことで固定要塞の戦略的な価値は大きく削れました。
さらに時代が移り、籠城を崩す大砲の登場により、大砲に対抗するとともに安く頑丈に作れる塹壕や洞窟が要塞の役割を変わるようになり、城塞の姿は大きく変わります。
そして、それに革新を生んだのが航空戦力、すなわち要塞や塹壕を飛んで躱すことのできる、または一方的な攻撃を可能とする三次元で戦う戦力を生んだ兵科の登場でしょう。
これにより要塞の価値は極端に落ち、首都や国家の中枢部を守る最後の坊隔壁としての役割、つまり対超兵器用のシェルターという、生まれた当初の進軍する敵に対して派手に立ちふさがる要害からはかなり離れた存在まで姿を変えています。
それが自分の認識する要塞ですね。
航空戦力の登場は要塞のあり方を覆す存在です。
それがすでに兵器として存在するこの世界に、まさかだだっ広い平野に鎮座する要塞が残っているなど、自分は思ってもみませんでした。
特別な地形であれば要塞もそれなりの役目があるでしょう。
しかし、森と平野の中で、平野の真ん中に置かれた要塞ほど無駄なものはないと思います。
誰がこんな要塞を作ったのかは部外者の自分には不明ですが、少なくともこの要塞を建てた方とこの要塞を攻めようと考える方に対しては、戦略家としての頭脳を疑いたくなります。
お前みたいな変態が他人のことを疑うな、と? ヨホホホホ。ありがたい評価ですね、落ち着きます。やはり、自分はけなされてこそなんぼですな。ヨホホホホ。
いえ、現状は戦場が目の前に広がっています。
そして、圧倒的に不利なのは見るからに要塞を守る連邦軍です。
対空砲火は航空戦艦の爆撃によりほぼ沈黙状態で、空から兵が降り立ち外の王国軍と連携して要塞を今にも攻め落としそうな状況となっています。
そして、この要塞の存在はリュドミラさんにとってかなり大きいもののようですね。
リュドミラさんは雪城さんのボケに体勢を思わず崩しながらも、すぐに持ち直して構えた銃を王国軍の中に向けました。
「術式構築…くらえ、雷撃術式!」
リュドミラさんが引き金を引きます。
直後、彼女の銃から一条の雷撃が放たれ、空気を割くように突き進むと王国軍の陣中で発散し、多数の雷撃を王国軍に落としました。
完全な奇襲攻撃に、王国軍の陣の一角が悲鳴と混乱の中に陥ります。
敵の襲撃を知らせているのだろう鐘が響き渡る中、リュドミラさんは次弾を撃ち込みます。
「くたばりやがれ! 対軍術式!」
構築された術式が、混乱する王国軍の陣に飛んでいき、爆発を起こしました。
それも、ただの爆発ではありません。爆発の中から多数の金属片のようなものが飛び出したのが見えました。
ちょうど、殺傷能力を高めるために爆弾の中にネジなどを仕込む改造の方法に近いですね。
それが殺傷力を高め、術式を受けた王国軍に阿鼻叫喚を生み出します。
「次ぃ!」
さらに術式を構築するリュドミラさんですが、何やら口調がおかしくなっているようにも思えます。
まあ、そんなことを気にしている暇はすぐになくなりますが。
王国軍も銃撃を3度も受ければこちらの存在に気がついたようで、王国軍の一部が銃を手に魔導機構車両に乗って向かってきました。
浅利さんを止めるためには、できればヨブトリカ王国の側に立ちたかったのですが、リュドミラさんがいるのでしばらくは連邦の側に立って戦うことにしましょう。
自分がドジョウ先生を担いだまま立ち上がると、隣で雪城さんも立ち上がりました。
「事情は知りませんが、何かの縁。この場は連邦の味方をするとしましょう」
「飯島の敵は、私の敵だ! モコモコ、ドッカーン!」
自分たちの見せた参戦の意思に、一瞬驚いた様子のリュドミラさんでしたが、即座に雪城さんにツッコミを入れました。
「リュドミラだっつってんだろうが! 脳天ぶち抜くぞ、おら!」
…何やら性格が変わっているようですが。
まあ、今は戦に集中するべきでしょう。ヨホホホホ。他のことに意識を向けて仕舞えば、要塞が陥落してしまいます。
要塞に対する攻勢を弱めるためにも、ここは現実ではなく派手に立ち回って王国軍の目を引く方が先決でしょう。
「死ね、ボケ!」
リュドミラさんがやけに荒んだ口調をしながら、貫通術式で王国軍の陣の中で指揮をとっているらしい人物の頭を撃ち抜きます。
大隊長くらいの格はあったのでしょう。リュドミラさんが敵の将を狙撃して撃ち殺した瞬間、王国軍の一部に大きな動揺が見えました。
「負けてられないのだ! ドクター、先陣はもらうぞ! 1+1は、召喚魔法!」
雪城さんは、日本人という争いや戦争から程遠かったはずの召喚前の姿からは想像できないような躊躇のなさで、魔法により召喚した巨大な盾を手に向かってくる王国軍に突撃していきました。
人間を超越した勇者補正の身体能力で森から飛び出し駆け抜け、車両を盾で殴ります。
「わっしょーい!」
重厚な金属で覆われた魔導車両ですが、まるで紙で作られた模型のように、雪城さんが振り回した盾の横殴りの一撃で大きくその形を歪めて、中の人族の兵士たちは投げ出され車両は破壊されてしまいました。
「か〜ら〜の〜!」
雪城さんが盾を放り投げます。
そこには鎖が繋がっており、ヨーヨーのように飛び出した大楯は別の車両に狙いを定めて振り回されると、まとめて二台を轢き潰しました。
「ワッハッハッ!」
乗員もろとも車のミンチを量産した雪城さんは、そのままヨーヨーのように扱われる大楯を空めがけて放り上げます。
それは航空戦艦の一席に狙いを定めると、それを巨大な斧が叩きつけられたかのように容易くへし折り、撃沈させてしまいました。
「な、ななな…っ!?」
さすがにそれには王国軍も唖然としてしまいます。
連邦軍も驚いているようですが、これならば大いに王国軍の目を引くことができるでしょう。
度肝を抜かれた王国軍は、一気に戦意が傾きました。
「ヒ、ヒイイィィィ!? あんなのに勝てるわけねえ!」
盗賊のような形のヨブトリカ王国軍の兵士たちが、我先に雪城さんから逃げます。
それは味方を踏み潰し、殺すのも厭わない混沌とした逃亡行為でした。
敵前逃亡をする兵士に、王国軍の車両が次々に銃撃を加えていきます。
「敵前逃亡は死罪だ!」
別の王国軍の指揮官らしき将の怒号が聞こえてきました。
混乱する王国軍は、しかしその将の命令を無視して、逃亡を続けます。
「い、いやだぁ!」
「くそ、邪魔だ!」
「あんなのに勝てるかよ!」
「貴様ら、死にた–––––」
「だまれぇ!」
逃亡する兵士の向けた銃が、その王国軍の将の頭を撃ち抜きます。
しまいには、王国軍で同士討ちを始めるほどに大混乱に陥りました。
その中で、リュドミラさんはつぎつぎに敵兵を狙撃し、確実に撃ち抜いていきます。
「オラオラ、血が足りねえんだよ!」
口調も敵兵を撃ち殺すたびに、ますます荒くなっていきますね。
リュドミラさんって、あれでしょうか? 車のハンドルを握ると性格が変わる人みたいに、銃を撃つと性格が変わる方かもしれません。
おっと、自分も自分で働かなければならないでしょう。
そういうわけで、ドジョウ先生は肩に担いだまま、まだ比較的戦意のある王国軍の集まっている陣営に向かいます。
足の速さは勇者補正の恩恵で超人ですので、即座に戦場を駆け抜けることができます。
王国軍からしてみれば、森から何かが飛び出した瞬間にいきなりの能面の変態が出てきたのです。驚くのはもちろんであり、進軍していた王国軍は足を止めてしまいました。
そして変態がいきなり出て来れば、まず言いたくなることが反射的に言葉になってしまいますね。
「な、何奴–––––ぶっ!?」
先頭だった王国軍の軍人が発しようとしていた誰何の声を、問答無用で強制的に言われる前に終了させます。
具体的に何をしたのかと言いますと、その王国軍の軍人の顔を殴り飛ばしました。
力はあまり入れてませんが、勇者補正の恩恵を受けた自分のパンチは人族には重すぎます。
顎の骨が変形し、開いたというよりもまさしく垂れ下がった状態となった口から血を含んだ泡を吹いて気を失いました。
普段ならばふざけて、能面に驚くリアクションを楽しむところですが、マウントバッテンの時は煽り魔をできる限り抑えて真面目に戦いたいと思います。
可能性が低いとは思いますが、雪城さんは訳のわからない面が多いからこそ、何を考えているのかわからない方ですので。煽り魔の面を見せて正体を勘付かれるのは避けたいと思いますので。
自分は既に死んだことになっていますから、カクさんとかに生きていることが知られたら周りを遠慮なく巻き込んで捜索するとか言い出しそうですし。
あんな変態、野放しにできるか!とか言いそうですね。
野放しにできない変態というのは、自分でも自覚はあります。しかし、もう少し思慮を持ってもらえないでしょうか。
いつもなら冷静なのに、こういう時は暴走しますからね、カクさん。
ちなみに自分は終始暴走を促します。その結果、自身にも周りにもどれだけ被害が出ようが、面白いなら止めません。煽り魔ですから、ヨホホホホ。
…結局のところ、そのような事態を回避するには誰にも気づかれないのが一番ですので。その可能性を減らすために声も名前も、面も変えました。
雪城さんは、おそらく自分の職種を知らないでしょう。
ソラメク王国では派手に治癒魔法を使いましたが。ヨホホホホ。
「き、きさ–––––ぐあ!?」
銃を構えた王国兵との間合いを一息に詰め、その首を掴み上げ、後続の王国兵に投げつけます。
何人かが巻き添えをくらい、もみくちゃにされて地面に伏しました。
倒れた兵士から銃を拾い上げて、魔力を力ずくで流し込み暴走させてから、それを投げ飛ばします。
マスケット銃に見える魔法を打ち出す術式構築機構の備わったその銃は回転して進むと、まるで円盤ノコギリのように当たる敵の兵器や車両を次々にえぐり取り、切り取り、暴れまわりました。
もう、そこまでやられては王国軍の戦意も霧散してしまいます。
「あなた方が王国の軍旗を掲げた軍隊であることが、私は情けなく、そして腹立たしく思えます。早々に失せていただきたい!」
「ひ、ひやあぁぁぁぁぁぁ!?」
人外と呼ぶにふさわしい勇者補正を得た存在の力を目の当たりにした王国軍は、背中を見せて無様に逃げ出し始めました。
兵が恐れ、慄き、潰走をして仕舞えば、その士気は瞬く間に崩れ、逃げの選択は軍全体に伝染していきます。
上官が銃で逃げる兵士を撃ち殺そうが、その波は崩れるどころか勢いを増していくしかありません。
「ええい、逃げるな! 貴様ら、全員射殺して–––––ッ!?」
リュドミラさんが放った銃弾が、車両の上に頭を出して拳銃片手にわめいていた格好の的となっていた王国軍の将の眉間を撃ち抜きました。
一体何人撃ち殺したのか知りませんが、狙撃するたびに何やら人格がゆがんで行ったリュドミラさんは、その敵将を撃ち殺した時には人が変わったような凶悪な笑みを浮かべていました。
「もっと…もっと悲鳴が…もっと殺される断末魔が、撃ち抜かれる死者の音色が聞きたい! アハハハハ! 楽しい!」
逃げる王国軍を容赦なく撃ち殺していきます。
軍の一翼の瓦解は、航空戦艦が沈められた光景を見ていた戦場全体に広がり、王国軍はパニック状態となって方々に逃げ出していきます。
自分は追撃を行わず、要塞の方へと向かいました。
リュドミラさんがまだ銃を撃っていますが、落ち着くまで待っていては要塞に多数いるであろうけが人が何人死んでしまうかわかりません。
要塞に近づいていく自分に、当たり前のようにそちらも追撃をしかけなかった雪城さんが駆け寄ってきました。
「ドクター、1人で歩いては迷子になるのだ。私を置いていくのは許さないぞ」
「雪城さん…」
やはり、何を考えているのかわかりにくいと言いますか、会話が成立する気がしない方です。
とはいえ、心配してくれたのか、それとも迷子になりたくなかったのか、なぜか懐いている自分についてきたいとの意思は伝わります。
それがどうも従姉妹の双子を思い出し、幼い頃は先導しようと試みながらも最後は結局振り回されたというか、一緒になって暴れたものですなと、懐かしい記憶が浮かびました。
無意識のうちに、片手を雪城さんに差し出していました。
「ドクターの手は、冷たいな!」
迷いなく自分の手を握り返してきた同い年の勇者は、そんな感想をこぼしました。
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