異世界から勇者を呼んだら、とんでもない迷惑集団が来た件(前編)
6話
その日の日暮れの刻でした。
帝国の方々に夕食をご馳走になったのち、各々の部屋に戻った自分達ですが、部屋に戻るとカクさんはおもむろにこのようなことを言ってきました。
「誰かに呼ばれている気がする」
結構真剣な表情でしたので、茶化さないで詳しく聞いてみることにします。
異世界召喚の際に、勇者補正の能力と『職種』の力を授かった自分たち勇者ですが、様々な職種の恩恵からくるものは我々の想像を超えるものが多いです。
なので、もしも真実だとすれば捨て置けない事案となるでしょう。
場所は、聞いたところによると城塞都市の方らしいです。
大騒ぎした場所…という印象が強いですね。
ひょっとして壊した罪悪感からなのではないでしょうか。
「いや、正確にはその先の子爵領だ。どうも、あの時に感じた感覚が…いや、貴様に言っても仕方のないことだな。忘れてくれ」
何だか、急に話を切り上げられました。
もったいぶらずに教えてくださいよ。そんな中途半端なことされては余計に気になってしまいます。ヨホホホホ。
「何ですか? ひょっとして幽霊とかですか?」
「不吉な想像はやめろ! …一度調べてみる必要がありそうだな」
「何だか置いていかれてますね」
「貴様に付き合う義理はない。というか、何で貴様に相談しているのだ?」
「心のどこかで頼りにしている相手ということでは? ヨホホホホ。照れますな〜」
「ふざけるな!」
何はともあれ、カクさんを落ち着かせて話を聞いてみます。
すぐに熱くなって、自分の下らない冗談も真に受けて対応するから、いやあカクさんはいじりがいがあって楽しいですな〜。皇女様やアンネローゼさんと親しくなってから、余計に角が取れてとっつきやすくなったと言いますか、舐められやすくなっているという印象を受けます。ヨホホホホ。
くだらない冗談はさておき、カクさんからそのことに関する話を聞いてみます。
カクさんはなんだかんだで結局溜め込まずに自分には吐き出しますからね。
案外、口では他人にも厳しいカクさんは、結構自分の問題は自分で解決するという心情を持っていますから。特に危険な厄介ごとなどには、大抵他人を意地でも巻き込みません。それでいながら最終的に首をつっこむ人が多いのが、我々のグループなんですけどね。ヨホホホホ。
何といっても、異世界召喚でこんな体たらくやっている集団ですから。お人好しにもほどがあるだろというツッコミを受けたとしてもおかしくないです。
カクさん、それでいて自分の限界というものもある程度承知しており、できないことは安全の範疇であるならば他人に助けを求めますし、他人の厄介ごとには平然と首を突っ込みます。
あと、いじめ嫌いですね。
そんなカクさんも、自分には結構気兼ねなくといいますか、多少無茶でも(本人は無茶だと気づいていません)頼んでくることがあります。
まぁ、自分はあくまでも裏方ですから。前に立って解決するために奔走する仲間を支えて、後始末やフォローに駆け回るだけです。
問題起こしているじゃないか、と? 否定はしません。しませんといいますか、できません。
…いえ、本当にすみません。前回の城塞都市崩壊と隣国子爵領全焼事件に関しては自分にもある程度非がありました。
自覚しているならやめろ、と? それがですね〜、依存症といいますか? 自分1人の意志では絶対にやめられないんですよ。だって楽しいですから。ヨホホホホ。
話がかなりそれてきました。
カクさんを呼ぶ謎の声に関してのことですね。
カクさん曰く、発生源は子爵領の領主宅があった場所だそうです。
事件解決後に聞こえなくなったのでアンネローゼさんの心の叫びが聞こえたみたいなロマンチックな出来事かもしれなかったそうなのですが、昨日から再び聞こえ出しているとのことです。
それも全く同じ場所からだそうで。
単なる気のせいで解決できればいいのですが、それができないくらい、今度はかなりはっきりとした呼び声として聞こえてくるそうです。
それも1人や2人ではないらしく、まるで群衆のような声だそうで。
おかげで皇女様の楽しい会話も上の空、聞こえずに思わぬ失態を晒してしまい心配をかけさせてしまう始末だったそうです。
それが今朝の出来事だそうで。
…リア充が、もっと苦しめ!
みたいな台詞吐くキャラもいそうな愚痴ですけど、自分は特に気にしていません。
世界をまたいだ恋とか…カクさんのこといじるネタに尽きませんから。
まあ、ふざけるのも一時止めて…ってないですよねそんな事。
自分さっきからふざけまくってますし。口にしていないだけで。ヨホホホホ。
そういえば、ソラメク王国軍の討伐軍をはじめとして、この事件を通してかなりの数の人族が行方不明になっていると。
アンネローゼさんの声が聞こえた事ですし、それらの可能性もあるかもしれません。
その仮説をカクさんに提示してみると、ある程度噛み合ってきた様子です。
「そうか…確かに、ありえるかもしれない。魔法の存在する世界だ、超常的な現象があってもおかしくはないだろう。俺の頭に響く声も、かなりの人数だしな」
「調査してみる価値はありそうですな」
カクさんは早速、地図を取り出しました。
それを広げ、城塞都市と子爵領の地理を整理します。
「貴様のほうで何か情報は?」
「行方不明者に関しては、何もないです。ただ…」
可能性がないわけではありません。
確証もないため単なる憶測でしかありませんが、どうしても探してみるべきというのであればこの手も採用するべきでしょう。
というわけで、決定権はカクさんにありますし、自分の考えを提示します。
 
「ただ、何だ?」
「アンネローゼさんは捕虜として子爵領にとらわれていました。魔族側の不用意な会話を拾ったり、討伐軍と戦闘になっていたとすればその様子知っていたとしてもおかしくはありません」
「却下だ」
即座にカクさんが退けました。
そりゃ、そうでしょうな。かなりひどい目にあってきた事から記憶に混乱が見られるアンネローゼさんに不用意にこの事を伝え当時の記憶を掘りかえさせるわけにも行きませんし。
カクさんはアンネローゼさんの負担になるくらいならば自らの足で事件を調べようというタイプの方ですからね。
無意識にアンネローゼさんを気にしていまっています。
ヨホホホホ。脈アリとしておきましょう。
…いじくりまわすとケイさんに殴り飛ばされそうですね、この案件も。
声の発生源は、というか呼ばれている先だという感覚が示すのは子爵領の領主邸宅があった場所で間違えないそうです。
前回はアンネローゼさんでしたが(勝手な仮説です)、今回は何でしょうか。
…そんな感覚と縁遠い自分にわかるわけもありませんけど。
とはいえ、皇女様にまで心配をかけてしまうような現状は色々と問題があるでしょう。
カクさんが正常運転でなければ、副委員長とのただでさえ減っている喧嘩の煽りがいがより虚しくなるというものです。
周辺の被害を先に考えろ、と? いえいえ、自分は自分の欲望真っ先に優先して煽りますので、人命に及ばなければ被害は二の次です。
最低だな、ですか? いやいや、照れますな〜、その評価。
鬼崎さんの苦労を考えろ、ですか? …そ、それは、その…か、考え直すとしましょうか。ヨホホホホ。
現在の子爵領は復興事業の真っ只中です。
立ち入る事は通常であれば難しいですが、そこはそれ。勇者の活躍が認められた上に、復興事業の現場では自分がそれなりに参加していた事により、結果的にはですが勇者を好意的に受け入れる空気が生まれています。
堂々と行っても、屋敷の跡に足を踏み入れる事くらいはできるはずでしょう。
カクさんがこの調子というわけにはいきませんし、ここはひとつ調査をする事にしますか。
「…調査してみますか?」
「出来ればそうしたい。だが、足がな…」
「…あ、それは、そうですね」
カクさんのもっともな指摘が入りました。
ケイさんがいれば万事解決ですが、子爵領は帝都からかなりの距離があります。
走っていこうにも相当な日数がかかる事でしょう。
そして、ケイさんに頼んではいどうぞというわけにはいきません。
特に日頃から小言うるさいという印象を受けるカクさんと、ケイさんに嫌われている自分のコンビで説得したところで、結果が目に見えているといいますか…。
走っていこうにも、勇者補正でも数日はかかる行程です。それも昼夜問わず全力疾走という考えものとですから、その3倍以上の時間はかかるでしょう。
厳しいですね。
それに、地図があるとはいえ道に迷う可能性は高いでしょう。
せめて案内してくれる方でもいれば、まだ可能性はあるのですが。
「転移魔法というものもあるそうだからな…」
「羨ましいですね〜」
何だか、カクさんとともに愚痴をこぼす状況に陥りました。
一瞬で別の場所に移動する事が可能な転移魔法の存在は確かにあり、勇者には可能なものがいる可能性が高いと言いますが、ネスティアント帝国に召喚された勇者にはいませんでした。
村上氏に頼んで宇宙戦艦のワープシステムを使いたいところですが、あれは物部氏がいなければ使用できません。村上氏と物部氏にはこの帝国を守るという引き受けた役目がありますから帝都から離れるわけにもいかないでしょうし、難しいです。
ふと、そこで考えました。
便利な乗り物を召喚したり操ったりする中で、自分は何というか、まるで地味な役回りだなという事が。その事実が突き刺さります。
仕方のない事ですね。
ただ…
カクさんを見ます。
「…何とかならないか」
「カクさんの職種って、こういう時には不便ですよね」
「言うな!」
カクさん怒りました。
やはり面白いですな、ヨホホホホ。
お前も同じだろうが!と? いや、まあ、否定はしませんといいますか、当たり前ですよ。
肝心な時に役立たないくせに要らん時には張り切って効果出すのが自分ですから。ヨホホホホ。
村上氏に航空戦艦とか頼めばいいですかね?
動かし方は…動かせなければ意味がないですな。
「最悪、方角はあっているはずだから俺1人でも調べに行ってみようと思う」
「ここまで聞かせてそれはなくないですか?」
「それは…確かにそうだが」
移動手段がない事は解決しそうにありません。
カクさんはもとよりケイさんに足を依頼する事はないでしょう。
必然的に、親にもらった2つの足で向かう事になりそうです。
「予測できない事は多い。何があるかも分からない。それでも…」
「それでも行くしかないというわけですね。ヨホホホホ。もちろん、自分はついていきますよ。他の皆さんを巻き込む事はないと思いますが」
パーティーの回復役、生命線は必須でしょう。
女神様にも可能な限り助けると誓いましたし。
あと、カクさんは問題行動をする可能性もあるのでフォローも必要でしょう。
鬼崎さんと違って、自分は煽って被害を無駄に広げてからフォローに取り掛かりますけど。
カクさんの決意は固いみたいですし、自分もまた参加する事とします。
ただし、カクさんには忠告といいますか、必要な事を念を押しておきます。
「もちろん、皇女様には教えておいて下さいね。しばらく会えなくなるというだけでも結構ですから。ただし、他のクラスメイトには教えないようにお願いします」
「当たり前だ。わざわざ言われるまでもない」
「そうですか。それは何よりです」
結局出発する事になりました。
まあ、退屈しない旅になる事は確実ですね。
カクさんと色々と残る打ち合わせを済ませ、最終的に徒歩という事になり、出発は明日の深夜という事で決定しました。
首を突っ込みがちな他の皆さんにバレる前に、皇女様のみにこの事を伝えて、手早く出発といたしましょう。
カクさんが皇女様の元へ向かうのを確認した自分は、旅支度に入りました。
帝国の方々に夕食をご馳走になったのち、各々の部屋に戻った自分達ですが、部屋に戻るとカクさんはおもむろにこのようなことを言ってきました。
「誰かに呼ばれている気がする」
結構真剣な表情でしたので、茶化さないで詳しく聞いてみることにします。
異世界召喚の際に、勇者補正の能力と『職種』の力を授かった自分たち勇者ですが、様々な職種の恩恵からくるものは我々の想像を超えるものが多いです。
なので、もしも真実だとすれば捨て置けない事案となるでしょう。
場所は、聞いたところによると城塞都市の方らしいです。
大騒ぎした場所…という印象が強いですね。
ひょっとして壊した罪悪感からなのではないでしょうか。
「いや、正確にはその先の子爵領だ。どうも、あの時に感じた感覚が…いや、貴様に言っても仕方のないことだな。忘れてくれ」
何だか、急に話を切り上げられました。
もったいぶらずに教えてくださいよ。そんな中途半端なことされては余計に気になってしまいます。ヨホホホホ。
「何ですか? ひょっとして幽霊とかですか?」
「不吉な想像はやめろ! …一度調べてみる必要がありそうだな」
「何だか置いていかれてますね」
「貴様に付き合う義理はない。というか、何で貴様に相談しているのだ?」
「心のどこかで頼りにしている相手ということでは? ヨホホホホ。照れますな〜」
「ふざけるな!」
何はともあれ、カクさんを落ち着かせて話を聞いてみます。
すぐに熱くなって、自分の下らない冗談も真に受けて対応するから、いやあカクさんはいじりがいがあって楽しいですな〜。皇女様やアンネローゼさんと親しくなってから、余計に角が取れてとっつきやすくなったと言いますか、舐められやすくなっているという印象を受けます。ヨホホホホ。
くだらない冗談はさておき、カクさんからそのことに関する話を聞いてみます。
カクさんはなんだかんだで結局溜め込まずに自分には吐き出しますからね。
案外、口では他人にも厳しいカクさんは、結構自分の問題は自分で解決するという心情を持っていますから。特に危険な厄介ごとなどには、大抵他人を意地でも巻き込みません。それでいながら最終的に首をつっこむ人が多いのが、我々のグループなんですけどね。ヨホホホホ。
何といっても、異世界召喚でこんな体たらくやっている集団ですから。お人好しにもほどがあるだろというツッコミを受けたとしてもおかしくないです。
カクさん、それでいて自分の限界というものもある程度承知しており、できないことは安全の範疇であるならば他人に助けを求めますし、他人の厄介ごとには平然と首を突っ込みます。
あと、いじめ嫌いですね。
そんなカクさんも、自分には結構気兼ねなくといいますか、多少無茶でも(本人は無茶だと気づいていません)頼んでくることがあります。
まぁ、自分はあくまでも裏方ですから。前に立って解決するために奔走する仲間を支えて、後始末やフォローに駆け回るだけです。
問題起こしているじゃないか、と? 否定はしません。しませんといいますか、できません。
…いえ、本当にすみません。前回の城塞都市崩壊と隣国子爵領全焼事件に関しては自分にもある程度非がありました。
自覚しているならやめろ、と? それがですね〜、依存症といいますか? 自分1人の意志では絶対にやめられないんですよ。だって楽しいですから。ヨホホホホ。
話がかなりそれてきました。
カクさんを呼ぶ謎の声に関してのことですね。
カクさん曰く、発生源は子爵領の領主宅があった場所だそうです。
事件解決後に聞こえなくなったのでアンネローゼさんの心の叫びが聞こえたみたいなロマンチックな出来事かもしれなかったそうなのですが、昨日から再び聞こえ出しているとのことです。
それも全く同じ場所からだそうで。
単なる気のせいで解決できればいいのですが、それができないくらい、今度はかなりはっきりとした呼び声として聞こえてくるそうです。
それも1人や2人ではないらしく、まるで群衆のような声だそうで。
おかげで皇女様の楽しい会話も上の空、聞こえずに思わぬ失態を晒してしまい心配をかけさせてしまう始末だったそうです。
それが今朝の出来事だそうで。
…リア充が、もっと苦しめ!
みたいな台詞吐くキャラもいそうな愚痴ですけど、自分は特に気にしていません。
世界をまたいだ恋とか…カクさんのこといじるネタに尽きませんから。
まあ、ふざけるのも一時止めて…ってないですよねそんな事。
自分さっきからふざけまくってますし。口にしていないだけで。ヨホホホホ。
そういえば、ソラメク王国軍の討伐軍をはじめとして、この事件を通してかなりの数の人族が行方不明になっていると。
アンネローゼさんの声が聞こえた事ですし、それらの可能性もあるかもしれません。
その仮説をカクさんに提示してみると、ある程度噛み合ってきた様子です。
「そうか…確かに、ありえるかもしれない。魔法の存在する世界だ、超常的な現象があってもおかしくはないだろう。俺の頭に響く声も、かなりの人数だしな」
「調査してみる価値はありそうですな」
カクさんは早速、地図を取り出しました。
それを広げ、城塞都市と子爵領の地理を整理します。
「貴様のほうで何か情報は?」
「行方不明者に関しては、何もないです。ただ…」
可能性がないわけではありません。
確証もないため単なる憶測でしかありませんが、どうしても探してみるべきというのであればこの手も採用するべきでしょう。
というわけで、決定権はカクさんにありますし、自分の考えを提示します。
 
「ただ、何だ?」
「アンネローゼさんは捕虜として子爵領にとらわれていました。魔族側の不用意な会話を拾ったり、討伐軍と戦闘になっていたとすればその様子知っていたとしてもおかしくはありません」
「却下だ」
即座にカクさんが退けました。
そりゃ、そうでしょうな。かなりひどい目にあってきた事から記憶に混乱が見られるアンネローゼさんに不用意にこの事を伝え当時の記憶を掘りかえさせるわけにも行きませんし。
カクさんはアンネローゼさんの負担になるくらいならば自らの足で事件を調べようというタイプの方ですからね。
無意識にアンネローゼさんを気にしていまっています。
ヨホホホホ。脈アリとしておきましょう。
…いじくりまわすとケイさんに殴り飛ばされそうですね、この案件も。
声の発生源は、というか呼ばれている先だという感覚が示すのは子爵領の領主邸宅があった場所で間違えないそうです。
前回はアンネローゼさんでしたが(勝手な仮説です)、今回は何でしょうか。
…そんな感覚と縁遠い自分にわかるわけもありませんけど。
とはいえ、皇女様にまで心配をかけてしまうような現状は色々と問題があるでしょう。
カクさんが正常運転でなければ、副委員長とのただでさえ減っている喧嘩の煽りがいがより虚しくなるというものです。
周辺の被害を先に考えろ、と? いえいえ、自分は自分の欲望真っ先に優先して煽りますので、人命に及ばなければ被害は二の次です。
最低だな、ですか? いやいや、照れますな〜、その評価。
鬼崎さんの苦労を考えろ、ですか? …そ、それは、その…か、考え直すとしましょうか。ヨホホホホ。
現在の子爵領は復興事業の真っ只中です。
立ち入る事は通常であれば難しいですが、そこはそれ。勇者の活躍が認められた上に、復興事業の現場では自分がそれなりに参加していた事により、結果的にはですが勇者を好意的に受け入れる空気が生まれています。
堂々と行っても、屋敷の跡に足を踏み入れる事くらいはできるはずでしょう。
カクさんがこの調子というわけにはいきませんし、ここはひとつ調査をする事にしますか。
「…調査してみますか?」
「出来ればそうしたい。だが、足がな…」
「…あ、それは、そうですね」
カクさんのもっともな指摘が入りました。
ケイさんがいれば万事解決ですが、子爵領は帝都からかなりの距離があります。
走っていこうにも相当な日数がかかる事でしょう。
そして、ケイさんに頼んではいどうぞというわけにはいきません。
特に日頃から小言うるさいという印象を受けるカクさんと、ケイさんに嫌われている自分のコンビで説得したところで、結果が目に見えているといいますか…。
走っていこうにも、勇者補正でも数日はかかる行程です。それも昼夜問わず全力疾走という考えものとですから、その3倍以上の時間はかかるでしょう。
厳しいですね。
それに、地図があるとはいえ道に迷う可能性は高いでしょう。
せめて案内してくれる方でもいれば、まだ可能性はあるのですが。
「転移魔法というものもあるそうだからな…」
「羨ましいですね〜」
何だか、カクさんとともに愚痴をこぼす状況に陥りました。
一瞬で別の場所に移動する事が可能な転移魔法の存在は確かにあり、勇者には可能なものがいる可能性が高いと言いますが、ネスティアント帝国に召喚された勇者にはいませんでした。
村上氏に頼んで宇宙戦艦のワープシステムを使いたいところですが、あれは物部氏がいなければ使用できません。村上氏と物部氏にはこの帝国を守るという引き受けた役目がありますから帝都から離れるわけにもいかないでしょうし、難しいです。
ふと、そこで考えました。
便利な乗り物を召喚したり操ったりする中で、自分は何というか、まるで地味な役回りだなという事が。その事実が突き刺さります。
仕方のない事ですね。
ただ…
カクさんを見ます。
「…何とかならないか」
「カクさんの職種って、こういう時には不便ですよね」
「言うな!」
カクさん怒りました。
やはり面白いですな、ヨホホホホ。
お前も同じだろうが!と? いや、まあ、否定はしませんといいますか、当たり前ですよ。
肝心な時に役立たないくせに要らん時には張り切って効果出すのが自分ですから。ヨホホホホ。
村上氏に航空戦艦とか頼めばいいですかね?
動かし方は…動かせなければ意味がないですな。
「最悪、方角はあっているはずだから俺1人でも調べに行ってみようと思う」
「ここまで聞かせてそれはなくないですか?」
「それは…確かにそうだが」
移動手段がない事は解決しそうにありません。
カクさんはもとよりケイさんに足を依頼する事はないでしょう。
必然的に、親にもらった2つの足で向かう事になりそうです。
「予測できない事は多い。何があるかも分からない。それでも…」
「それでも行くしかないというわけですね。ヨホホホホ。もちろん、自分はついていきますよ。他の皆さんを巻き込む事はないと思いますが」
パーティーの回復役、生命線は必須でしょう。
女神様にも可能な限り助けると誓いましたし。
あと、カクさんは問題行動をする可能性もあるのでフォローも必要でしょう。
鬼崎さんと違って、自分は煽って被害を無駄に広げてからフォローに取り掛かりますけど。
カクさんの決意は固いみたいですし、自分もまた参加する事とします。
ただし、カクさんには忠告といいますか、必要な事を念を押しておきます。
「もちろん、皇女様には教えておいて下さいね。しばらく会えなくなるというだけでも結構ですから。ただし、他のクラスメイトには教えないようにお願いします」
「当たり前だ。わざわざ言われるまでもない」
「そうですか。それは何よりです」
結局出発する事になりました。
まあ、退屈しない旅になる事は確実ですね。
カクさんと色々と残る打ち合わせを済ませ、最終的に徒歩という事になり、出発は明日の深夜という事で決定しました。
首を突っ込みがちな他の皆さんにバレる前に、皇女様のみにこの事を伝えて、手早く出発といたしましょう。
カクさんが皇女様の元へ向かうのを確認した自分は、旅支度に入りました。
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