夏の記憶

きのこたけのこ

集結


私は、みなみの手を掴んで(実際には掴めないけど)大きく頷いた。

「ありがとう……晃史は?」

「爽空がやるなら……」

みなみはニコッと笑って相変わらずだなぁと言った。

...♪*゚...♪*゚

電話が鳴る。

晃史が出ると、菜生だった。
「あ、もしもし?菜生だけど。
今どこにいるん?」
「今、校内にいるよ。もう外行くわ。」
「早くねー!もうみんな来たよ!」


「そろそろ行くぞ」と晃史が言った。

私はちょっと走って、晃史を追っかけた。が、段差に気づかず、前につんのめる。
やばい!転ぶ!!と思ったところに腕が伸びてきて、晃史に抱きとめられた。

「……ったく。気をつけろって」
「……ありがとう」


「……すいませーん、幽霊だけど、通れないんでどいてもらっていいですか?」









学校の坂を上り、広場の奥には墓地がある。

みんなでお墓のところへ行き、お参りをする。

「おい!俺たちもう20歳だぞ〜ビール置いてくからな!」
「うっさいわねー
そんな大きな声じゃなくても、聞こえてるわよ」

という、慧希と夢叶の漫才を挟みつつ、私と晃史はみなみのつぶやきに吹き出さないように必死だった。


「みなみ……どこで何してるのかなぁ」

「私ここにいるけどね」

「みなみの好きだったチョコ置いてこう」

「ありがとう……でもマカロン食べたい」

晃史は我慢しすぎて息してない。

そんなことお構い無しにみなみはお供えられたチョコを食べている。

みなみが私たち以外の人に見えてないってことはよくわかった。

やっとお墓参りという名の笑ってはいけないを終え、居酒屋『まんぼう』に行く。






「えー……それでは、久しぶりの再会を祝しましてかんぱーい!!」

お酒の飲めないのは、都と夢叶だから2人はノンアルを飲んでいる。(いいのか?)

「みんなおおきくなったねぇ!これサービス!」
そう言っておばちゃんは大きなだし巻き玉子を出してくれた。
ふんわりだしがきいていておいしい。

「ねぇねぇ都ちゃん彼女できた〜?」

ノンアルのはずなのに夢叶は酔っ払っているような喋り方だ。

「うるさいわ!」
夢叶は、都はまじめなので、モテないと言って怒らせていた。

「うわぁ!おいしそう……」と言っているのはみなみだ。もちろんみんなには聞こえてない。私はみなみの前の取り皿に玉子焼きを乗せてあげる。

「爽空ちゃん……大好きっ!」

と抱きつかれて、ちょっとヒヤッとした感覚を覚える。


隣に座ってた菜生がもう既に酔っ払っていて、
「爽空ちゃーん、好きぃ……」
と言って抱きついてきた。

晃史はそれを見て吹き出している。

「香椎(というのは菜生の苗字)もう水にしとこ、な?」
と言って慧希が水を渡すと、
「さときうるひゃい!そらちゃんがいいのー!!
……てか、いつもみたいに菜生って呼べよぉ」

騒ぎまくってたみんなが一瞬にして静まる。

「ばか、なんで今そういうこと言うかな」
と慧希が慌てると
「ばかじゃないし!
……ねぇ爽空ちゃん、慧希ね、いつも菜生のことギューってして寝るんだよ!かわいいよねぇ…」

思わぬ爆弾発言に慧希は赤面して、喋れなくなっている。

ここぞとばかりに夢叶と真衣子が、2人の進捗具合を聞き出す。

その傍でプルプル震えているみなみをみつけた。

「どしたの?」とこそっと聞くと

ボロ泣きしていた。

「なおぢゃん、おめでどう……
爽空いっぱいおめでとうって言ってあげて……」

私はうんと頷く


「それから、慧希に
『菜生を泣かせたら、枕元に立って末代まで呪う』って言って置いて……」


それはやだ。







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