夏の記憶

きのこたけのこ

再会

あの夏から、もう3年。


私はそうっとアルバムを開いた。


私の高校時代の吹奏楽部のメンバーがいた。


クラリネットの夢叶ゆめか


サックスのみやこ


トランペットの真衣子まいこ


トロンボーンの慧希さとき


チューバの菜生なお


ホルンの晃史こうし


みんなまだあどけなさの残る表情で、かわいい。


―そして、私と一緒に
フルートをやっていたみなみ



私はアルバムを旅行カバンにいれ、家を出た。




2014年  夏


都会の夏は暑い、と私はここへ来て何度思っただろう。

東京駅で待ち合わせをして、地元に帰る。

地元では夏に成人式をする。

私はそのために、ふるさとに戻るのだ。

待ち合わせの相手は晃史。

同じ市内で結構仲が良く、大学も同じ方面のところに行った。だから、今でも結構会っている。


爽空そら早いね〜」
「早いね〜じゃないよ!
もー!新幹線来るから行くよ」

のんびりした晃史を引きずるようにして、新幹線に乗る。




私は、あまり戻りたくなかった。


みなみのことを、思い出してしまうから。








足利の駅には都が来てくれていた。

「爽空ー!!晃史ー!!」

「きゃー!都ー!!」

はしゃぐ私を尻目に晃史は二人分の荷物とお土産たちを持って車に乗せた。


「迎えありがとうね!みんなもう来てる?」
「来てるよー
2人が最後。夜7時に学校前で待ち合わせだから、家で休んでて。」


そう言って、都はちょっと不安な運転で私を家まで乗せてってくれた。


家の引き戸を開けると、中から母さんの声がした。

「おかえりぃ爽空。早かったじゃない」

「新幹線だったしね」

「これから、どっか行くの?
……あ、……お墓参りか。……今年でもう3年だもんね。」

「……それは夜。それよりお土産開けてよ!結構美味しいもの買ってきたんだから!」
「なにかしら!マカロンかなぁ……」
そう言うと、私はお土産開封を始め、母の声で2階にいた妹と弟が降りてきた。





「すいませーん」

玄関に晃史が来ていた。

「あら、晃史君じゃないの。
爽空ー!!晃史君来てるわよー!!」

「えっ?はぁーい」

リビングで犬のミライと戯れていた私は、よっこらせと立ち上がって玄関に行く。

「どしたの?」

「学校まで一緒に行かないかな、と思って……学校の中に入れて貰えるよう電話したんだよね。」

「行く!ちょっと待ってて」

慌てて私は準備を始めた。

カバンの中にアルバム、ケータイ、ハンカチ……とかを詰めて、いってきまーす!と声をかけた。









私たちの通った高校の吹奏楽部は今日はおやすみの日だったようだ。

「懐かしいねー!ここで練習してたのかぁ……」
「ほんの二年前だけどな」

「遠い昔みたい……
……ねぇ、演奏した中でなんの曲がいちばん好きだった?」
私は椅子に座って晃史に聞いた。
「俺は……さくらのうたかなぁ。でも、宝島も好きだったしな……決めらんないや」

晃史はそう言って笑った。

「爽空は?何が一番好きだった?」

「私はねぇ、どの曲も好きだけど
…………I got rhythmかな
みなみと二人でやった…」

懐かしさがこみ上げてきた。

あの曲を吹いたのもこんな暑い時だった。


ふと、フルートの音が聞こえた気がした。

私はガっと立ち上がって、教室を出た。

「ちょっ、おい、爽空!?」

後ろから晃史の声が聞こえたが無視して学校内を歩き回った。だんだん音は大きくなる。

教室棟の間にある渡り廊下の上の屋上の扉の向こうに人影が見える。

よくここで練習したなぁ、と思いながら近寄って、そっと扉を開ける。

「……うそ。」

そこにいたのは、まぎれもなく、みなみだった。
あの時、高校生の時の姿のままの、みなみ。


みなみはこちらに気がつくと、にっこり笑って、
「爽空ちゃん?」
と言った。


私が声が出ないままでいると、晃史が追いついて来た。

「おい、爽空!急に走んなよ…
…………えっ……」

私は声をふりしぼってこういった。
「晃史……みなみだよね?」
「あぁ。でも、みなみはあの時……」
晃史の声が震えている。


みなみはこう続けた。
「爽空ちゃんも晃史も久しぶりだね!
……今年は成人式でしょ。」


「みなみなの……?
ほんとにみなみなの?!」

私が近寄って触れようとしたが触れられない。

みなみは寂しそに
「ごめん。触れないよ」
と言った。

「そっか……」

みなみは私と晃史に向かってこういった。

「爽空ちゃん、晃史、お願いがあるの。
私は、この夏に3つの願いを叶えないと成仏できない。

私の願いを叶えるのを手伝ってくれない?」


それは、思いもよらない再会だった。




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