スミレ

体温

もしこの腕の中の温もりが、ある日突然無機質なものになったとして
僕は何か変わるだろうか。

いつものように触れ
いつものように寄り添い
いつものように瞳を向けてくる

無くなったのは指先から感じる温かさだけ。

それだけで、この愛くるしいものに対する気持ちは、何か変わるのだろうか?



ニンゲンが呼吸を辞めた時、21グラム分の何かが失われる。
らしい。

もし、21グラムの何かがこの愛おしいぬいぐるみから抜け落ちたとして
何か変わるのだろうか?

いつものように後ろをついてまわり
いつものように食べものを口にし
いつものように同じ寝具で寝る

無いのはその綿毛のようなカラダから伝わる温度だけ。

それだけで、共に過ごした時間が無になってしまうなんてあるのだろうか。

そうなっても僕はきっと、知らないフリを続けるんだろう。
21グラムの何かなんて、初めからないのだから。


それはきっと、ニンゲンが作り出した言い訳だ。

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