ブラザーシスター★コンプレックス

鉄筋農家

№06 『やる気スイッチ』



それからというもの、毎日修行場へ足を運んでは魔力切れの症状が起こるまで何度も木を殴り蹴りの暴行を加え、魔力を使い続けた。


明くる日も明くる日も魔力が切れて頭がぐわんぐわんとするまで。二日酔いの気持ち悪さはあるが、前世のお陰で慣れっこだ。毎週付き合いで呑まされたからな。


魔力を使っている時間が5倍程延び続け、グングンと魔力が増えるのが分かる。魔力とは不思議なものだ。理屈は分からんがジーク兄さんが言ってた通り、ギリギリ使えば使うほど魔力の量は伸びているように思える。


武の民は皆ではないが幼い頃からやっている修行の一つらしい。魔力が増えれば魔法の使用時間も延び、戦闘においてそれは、強みになる。


そうして一年を過ぎた時、問題がおきる。俺の修行場として使っていた木々が多い繁っていた場所の周りの木がボロボロに折れてしまったのだ。根っこは残っているが軽く広場みたいになってしまった。


これを見たジーク兄さんは「あらら」と呟き、


「これはやりすぎかな…… 僕とした事がウォルカ君に間違った修行法を教えてしまったみたいだ。すまない」
「いえ、ジーク兄さんは悪くないですよ。俺がバカでした。黙々と木を殴りつけて折れる事に、喜びと達成感を味わってましたから」


木をへし折って喜ぶ俺も可笑しいが、強くなっている実感があってどうしても止められなかった。
この惨状に流石のジーク兄さんも頭を悩ませる。


しかし、この修行を止めるように言われたら、俺は強くなれない。それだけは避けたい所なのだが。


じっと悩むジーク兄さんの言葉を待った。すると、ぽん、と手を叩き。


「よし、これからはウォルカ君に武の民直伝の型を教えよう」
「それってまさか!?」


俺はその日からを使った武十二ノ型筋トレを始める事になった。




******




渋々、俺は≪腕部強固≫アームプロテクト≪脚部強固≫レッグプロテクトを使用した状態で、第一ノ型うでたてふせをやってみた。


正直どうなるかは知っていたが、結論を言うとあまり出来なかった。毎日木を殴ったり蹴ったりしただけの筋力は付いているが、それでも数を数えても六歳児並みの回数しか出来ないのである。




理由は分かっている。この魔法は拳や、足を固くしているだけで、基礎の身体能力は上がっていないから当然の事だ。


これじゃ固い人間ってだけでジーク兄さんのように素早い動きや力強いパンチなど繰り出せない。だとしたら、どうすればいいのか。


ジーク兄さん曰く――
「魔力の性質には三つあって、一つはウォルカ君の『個』、僕の『気』、そして『水』。生れつきそれぞれ性質を持っていて、それによって身体に付加される強化も違うんだ。
ウォルカ君の『個』の性質を使う≪腕部強固≫アームプロテクトは純粋に強度を上げる、つまり殴っても傷つかない拳や脚になる。僕の『気』の性質を使うと≪腕部放出≫アームバーストって言って第一の型をしても『固』の性質と同じく、回数は増えない。
そしたらどうするか、三つ目の性質『水』へ魔力をさせる、『水』の魔力を腕に宿した時、それは≪腕部強固≫や≪腕部放出≫じゃなく≪腕部強化≫アームブーストと呼ぶんだ」


そう―――― 新たなる魔法≪腕部強化≫アームブースト。それを使うには性質変化という、高度な魔力操作技術を取得しないといけないらしい。


俺が生まれ持つ『個』の性質を『水』に変える………
ジーク兄さんは続けて答える。


「この性質変化も魔力操作の一種、つまり高い意識と集中力が大事だね。自分の中に秘める魔力を使いたい魔力へ変える、自分に問いかけるっていうのかな? 僕は最初から出来たし分かんないや」


天才かよくそ。ジーク兄さんは放っておいて、とりあえずその言葉を頭に刻み、胡坐を組んで瞑想する事、三日。そして頭にイメージする事が出来て、使用に至るまでさらに三日かかった。


瞑想期間の話は飛ばすが、そうして性質変化を取得したのだ。さっそく俺は『水』の性質を持つ≪腕部強化≫アームブーストを使い、第一ノ型を始める。


性質変化さえ出来れば身体に馴染むまで時間は掛からなかった。日に日に回数は伸びていき、十回行かなかったのに軽く五十回を超えるほどまでなる。自分でも驚きが凄い。魔法はなんて万能なんだろう。


五十回を越えた辺りで潰れてしまうものの、魔力はまだ残っている事から、魔力で強化を掛けたとはいえ、素の筋力も必要になってくるみたいだ。


それに次の日の凄まじい筋肉痛、どうやら筋肉を無理して使っているようだった。これはやばい。魔力で無理に動かした為の、反動か、気を付けよう。


俺は第一ノ型うでたてふせから第十二ノ型しんこきゅうまでこれを魔力切れか筋肉痛が生じるまで毎日続け、ジーク兄さんに教えられた食事をしっかり取り、徐々に筋肉も付き始めた。


子供の成長は早いもんだ。身長もぐんぐんと延びハイハイしていた頃がもう昔のように思える。筋トレしたら身長は伸びないと聞くがそうでもないらしい。


そんな俺を見て大人達は神童と呼び、筋肉たちに囲まれて過ごす毎日に慣れてしまった。


俺、このまま世界最強になっちゃったりして?



「ブラザーシスター★コンプレックス」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く