ブラザーシスター★コンプレックス
№00 『人の果て』
あの日…… 予定も覚悟も無く――――   僕らは死んだ。
11月の第三日曜日。冬が本気を出して寒くなってきた頃の夕暮れ時。日に日に辺りが暗くなるのが早くなっていた。
寒さに弱い俺は、週に一回の大事な休日だし日頃は家でゴロゴロするだけだが、今日は一番下の妹が8歳になる誕生日。流石の俺も今日は外に出て妹のショッピングに付き合う他ない。
最後はケーキを買って帰る。周りから見れば何気ない休日、しかし少しだけ奇跡が起きた。長女と次男も付いてくると言うのだ。なかなか兄弟四人全員集まらないのに、その日は四人で一緒にケーキを買いに行くという奇跡が起きた日だった。
末子である妹は兄弟のアイドル的な存在、仲が良くもなく悪くもない、年を取るたび気まずくなっていった俺達兄弟の架け橋になってくれる。
長男である俺としては、家では顔を会わせるにしろ家族全員が揃い、目的を共通している事がとても嬉しかった。
そう四人兄弟が俺の家族。
言葉では恥ずかしくて言えないがかけがえのない家族だ。
両親はだって? 俺が23歳の時に末子の妹、優黄が生まれて直ぐに他界した。
会社に連絡がきたときは何かの冗談だと思ったよ。ドラマか何かかなって。
車による交通事故である。
仕事場から病院へ向かった時には既に遅く、ほぼ即死だったらしい。
葬式を行う時には俺は喪主となり、遠い親戚に助けられどうにか終わると、少しの休養を得て、ゆっくりと戻ってくる何もない日常にやっと両親の死を理解した。
残された四人の子供。そして、これからはその長男としてしっかりしないといけない心に誓ったのである。
親戚に助けられながらも、俺ら兄弟四人は必然と助け合い、残った保険金と貯金合わせて2000万で生きていくことになった。
そんなこんなであっという間に8年が経った今日この日。
小さかったあの妹、優黄は俺の手を握り満面の笑みを見せていた。
俺はそんな大きくなった天使の頭を撫でながら、微笑み返す。
長女の朱音も、次男の翠もそんな笑顔に何度救われてきたか。
この子のため、仕事尽くしの朱音も早く帰宅し、引きこもりの翠も当たり前のように外に出る。
優黄は俺らを繋ぎ止める魔法を持った妹だ。
これが幸せなんだろうと満喫して信号待ちをしている中、クラクションとブレーキ音が聞こえ、気がつけば真横には大型のトラックが歩道側まで突っ込んできていた。
逃げる動作もできず、思考は固まるが、ただ目の前にいる家族を守りたいがため俺はトラックに背を向け、覆いかぶさるように抱きしめた。
そして、走馬灯を見る暇もなく辺りは真っ暗になった――――
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