少年愛玩ドール

成瀬瑛理

閉ざされた過去

彼は夢に魘されて起きると、パーカスが彼の横に付き添っていた。
「ああ、ローゼフ様。お気づきになられましたかな?」
「パーカス……。私は一体……?」
ローゼフはベッドの上で目を覚ますと、辺りを見渡した。
「ローゼフ様、貴方様は少し錯乱なさっただけです」
「そうか、私としたことが…――。それよりピノは……? ピノはどうしたパーカス……?」
彼の質問にパーカスは首を横に振って表情を曇らせた。
「残念ですが、まだ見つかっておりません……」
彼のその言葉にローゼフは途端に、ベッドから起き上がった。
「こうしてる場合ではない! 早くピノを探さなくては……!」
「ローゼフ様、いきなり起き上がられたら大変です……! 少しお休みを……!」
「離せパーカス! あの子は私のドールだ! きっと今頃どこかで泣いてるかも知れないだろ!?」
「そのお身体では無理でございます……! 貴方様はあれから丸一日の間、ベッドで寝込んでいたのですよ……!?」
「そ、それは本当か……?」
「ええ、寝込んでいる間。貴方様はひどく魘されていました。一体どんな夢を見たのでしょうか? よければ私に教えて下さい」
パーカスがそう話すと、ローゼフは重い口を開いた。
「とても嫌な夢だった……。真っ暗な淵でさ迷っている気分だった。そして、悪夢のような夢の中で私は自分を見ているのだ。それだけじゃない。父と母と私の夢も見た。あと、葬儀の夢も……。もうあんな辛い夢は沢山だ…――!」
彼はそう言ってパーカスに見た夢のことを打ち明けると、小刻みに震えた。そして、悲しそうな顔で思い詰めた。パーカスは右手に持っているものを彼に見せた。
「こんな状況で貴方様に見せるのもお辛いですが、見てくださいローゼフ様。これはピノの服の切れ端です。貴方様がお休みになられている間、屋敷の庭もくまなく探しました。そうしたら、今は使われていない秘密の通り道にこれが小枝に引っ掛かっていたのです」
パーカスがそれをみせるとローゼフは、表情が一気に凍りついた。
「こ、これは間違いない……! それはピノが着ていた服の切れ端だ…――!」
ローゼフは服の切れ端を見た途端、肩を震わせて怒りに満ちた。
「今はもう使われていないあの小道をピノが1人で通って行ったと私は考えられません。それにあの小道を知っているのは、ここでは僅かな人間しかおりません。やはり誰かがピノをこの屋敷から拐ったとしか…――」
パーカスのその仮説に対して彼は頷いた。
「ああ、そのとおりだ……! ピノはこの屋敷から、何者かに連れ拐われたのだ……!」
「おお、やはり誰かがピノを……!?」
パーカスはその言葉に衝撃を受けると困惑したのだった。
「誰がピノを拐ったかは検討がつく……!」
「そ、それは誰でしょうか……?」
「オーランド公爵だ!」
「な、なんと……!? オーランド公爵様がピノをお拐いに……!?」
ローゼフはピノの服の切れ端を握ると、今まで感じたこともないような激しい怒りを込み上げた。

          

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