少年愛玩ドール

成瀬瑛理

閉ざされた過去

そこには果てしない暗闇が広がっていた。そして、その暗闇の中に彼と両親がいた。どこか楽しそうで、そして、ひどく懐かしいような光景だった。父は彼の手をとると母も彼の手をとった。親子3人で仲良く散歩している風景が目に飛び込むと、彼はそれを眺めてみつめた。それは彼の中の極小さな幸せの思い出の欠片だった。彼は暗闇の中でその光景をもう1人の自分の目で眺めていた。そして、場面がかわるとそこには両親の葬儀の光景が暗闇の中に現れた。それは彼にとって思い出したくもない記憶だった。教会で行われた葬儀の参列に、小さい彼は喪服姿で大人と一緒に列に並んだ。手には赤い薔薇を持ち、その薔薇を祭壇の上に置いた。彼は思い出したくもない記憶を暗闇の中で見せられると、大声を出してわめいた。
「やめろ……! こんなもの見せるな……! 頼むから見せないでくれ……!」
彼の意思とは関係なく、暗闇の中で誰かのヒソヒソ声が聞こえた。
「かわいそうに……。まだ10歳なのに両親をいっぺんに亡くすなんて…――」
「仕方ないさ。あれは事故だったんだから…――」
「やめろ!」
「あの年で伯爵だとはな。シュタイン家も落ちぶれたものだ」
「やめろ……! やめろ……!」
「かわいそうなローゼフ。マリアンヌ様を亡くされてさぞかしいお辛いでしょうね…――」
「頼むからやめてくれ! こんなこと思い出させるな――っ!!」
彼は暗闇の中で悲痛な声で叫んだ。

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