少年愛玩ドール

成瀬瑛理

略奪

ローゼフの慌てた姿に使用人達は、何事かと騒ぎを聞きつけた。男はピノを拐うと、馬に鞭を入れ続けて逃げ切ろうとした。彼はその男のあとを懸命に追いかけた。森の奥を馬で駆け抜けると、ローゼフは分かれ道を右折して近道を通って先回りした。男は気づかないで安心すると、一瞬気が緩んで馬の速度を落とした。すると突然、男の隣にローゼフが現れた。
「バカめ、油断をしたようだな!」
「ローゼフ!」
ピノは彼に手を伸ばすと必死で助けを求めた。
「ローゼフ助けてぇ!!」
「待ってろピノ! 今すぐ助けてやる!」
男は隣に並ぶローゼフに剣を向けると、いきなり攻撃してきた。彼はとっさによけると反撃した。 鞭で手を叩くと、男は右手に持っている剣を地面に落とした。その隙に彼は再び鞭で男の顔を叩いた。男が気を緩めた隙に、ローゼフはピノに手を大きく差しのべて叫んだ。
「さあ、ピノ! この手につかまれ!」
「お、落とさないでよ……!」
「お前を絶対落とすものか! さあ、来い!」
「うん……!」
ピノは勇気を出してローゼフの手を掴んだ。そして彼は、自分の腕の中にぎゅっと力強く抱き寄せた。 抱き寄せてつかの間に、ピノは大きな声をあげて叫んだ。
「ローゼフ前、危なーい!」
「し、しまった……!」
目の前には断崖絶壁が一面に広がっていた。男は顔に鞭をくらって気をとられていると、気がついた時には遅かった。視界には崖が辺り一面に広がっていた。そして、慌てて馬の手綱を引くが、馬は興奮した様子で止まらず、そのまま男を乗せたまま崖から勢いよく転落したのだった。ローゼフは崖から落ちる手前で手綱を力強く引くと、馬は崖の手前で走りを止めた。あやうく彼らも崖に落ちる所だった。2人は命拾いしたと思うとそこでホッとため息をついた。ローゼフはピノが目の前で拐われて死ぬほど焦ったのか、今も緊張状態が続いていた。そして思わず腕に力が入った。
「ロ、ローゼフ苦しいよ……!」
彼はピノを強く抱き締めると、あの者が何者だったかをその場で考えた。
ただの人拐いが、私の屋敷に来るなどとは不自然過ぎる……。私には身内は一人もいないのに、何故この子を拐おうとしたんだ……? もしや何者かが、私からピノを拐えと命じたのか? そうだとしたら、一体誰が……。も、もしや……!
彼は不意に何かを思いつくと、顔を青ざめさせて震え上がった。そして胸のうちに僅かに怒りを込み上げた。
「どうしたのローゼフ?」
ピノは心配そうに彼に尋ねると、ローゼフは心配させまいと明るく振る舞った。
「さあ、帰ろう…――」
「うん……!」
ローゼフは白い馬を走らせると、2人は屋敷に帰ったのだった。

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