少年愛玩ドール

成瀬瑛理

ローゼフはピノの無邪気な眩しい笑顔に胸を痛めると、不意に表情が曇った。
「そうか、やはりな。まさかとは思っていたが…――」
「ローゼフどうしたの?」
ピノは心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
「では、私の愛がなくなったらお前はどうなる…――?」
ローゼフのその言葉にピノは驚くと、急に胸の奥を貫かれたおもいに襲われた。そして小刻みに震えると、今にも泣きそうな表情で聞き返した。
「ど、どうしてそんなこと急にいうの……? ローゼフはボクのこと飽きちゃったの?」
「何を言っているんだ? 私はただ――」
「触らないで!」
「ピノ……!?」
「触らないでよ!」
「わかった……! ローゼフはボクのこと飽きちゃったんだ……! もう好きじゃなくなったんだ……! だからそんなこと……!」
「違う、私はただ……!」
彼が言い聞かせようとすると、ピノはいつの間にか涙を流していた。その表情はとても深く、傷ついた瞳だった。ローゼフは知らぬ間に自分がピノを傷つけたことに気がつくとすぐに謝った。
「すまん……。私はお前を傷つけるつもりはなかった。どうか許してくれ、もうこんなことは二度と聞かないから頼む……!」
ローゼフはそう言って、ピノを自分の腕の中にぎゅっと抱き締めた。ピノは彼の腕の中で大きな声を出して泣きじゃくった。そして、彼は心の中でピノの恐怖を悟った。人形のピノにとって動けなくなることがどんなに恐ろしく、怖いことかを――。
ましてや子供のピノにとって、死も恐怖も知るには幼すぎ年頃だった。ローゼフは愛玩ドールの隠された秘密を知ると、ひどく困惑した。そして自分の胸を痛めた。
私の愛がなくなれば、この子は動けなくなるのか……。私はなんて愚かな質問を聞いたんだ。この子にとって私の愛は必要不可欠なのか。ならば、私はピノを……。
彼は泣きじゃくるピノを優しく抱き締めてあやすと、自分の胸の中に密かなおもいをしまいこんだのだった――。

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