少年愛玩ドール

成瀬瑛理

舞踏会

ローゼフは戻ると長椅子に座った。 そこにお皿をもったピノが現れた。ピノは彼を見るなり、自分のほっぺたを膨らませて不機嫌な顔になっていた。そして、彼の隣に座るとお皿に乗っている料理を無言でムシャムシャと食べ始めた。
「ピノ、ずいぶんとご馳走を持ってきたな。どこから貰ってきた?」
彼の質問にピノは仏頂面でヘソを曲げて答えた。
「あっち……!」
「ん? どうしたピノ、なんだか不機嫌だな?」
「ほっといてよ……!」
「コラ、なにヘソを曲げてるんだ?」
ローゼフは隣でそう話すと、ピノからお皿を取り上げて話しかけた。
「どうしたんだピノ? 言ってみなさい」
「………」
「ん?」
ローゼフが優しく話しかけると、ピノは不機嫌になりながらボソボソと下をうつ向いて話し出した。
「ローゼフ踊ってたでしょ……?」
「ああ、彼女に誘われたからな。それが何か問題か?」
「ズルい……! ボクもローゼフと一緒に踊りたい……!」
「わがままを言うんじゃない。それに踊ると言っても、私とお前とでは背丈がちがうだろ?」
ピノの不機嫌な理由を知ると、ローゼフは呆れた表情で言った。
「いいもんボクそれでも……! ローゼフ、一緒に踊ってよ……!」
ピノは呆れてるローゼフにそう言うと、彼の腕を掴んでグイグイと引っ張った。
「まったく、人形の癖にヤキモチか? そう言うことは大人になってから言いなさい……!」
「ボク子供じゃないもん!」
「ピノ……?」
ローゼフは不意に目を向けると、ピノは涙ぐんでいた。そして、今にも泣きそうな表情で彼のことをジッとみていた。
「いいか、ピノ。あれは礼儀作法の一つだ。舞踏会とはそう言うところなんだ。社交界とは、言わば上流階級の貴族達の交流場だ。歌に踊りに世間話や、社会情勢や政治についての意見をかわしたりする場でもある。踊りはその一つだよ。私だって好きで踊りたくはないが、この場で踊らなくては怪しまれる。それに女性からの誘いを断れば、あとで叩かれるのは私の方だ。だからわかってくれピノ…――」
ローゼフは優しくそう言って説明すると、ピノの頭を撫でた。するとピノは突然、大きな声を出して彼に言い返した。
「ローゼフのバかぁーっ!!」
「コラ、待ちなさい……!」
ピノは泣きながらそう言うと、その場から走り去って行った。ローゼフはピノが走り去ると、とっさに後を追いかけた。
「コラ! 待ちなさいピノ!」
ローゼフは後を追いかけながら必死で名前を呼んだ。だが、ピノは立ち止まらずに舞踏会から抜け出すと廊下を泣きながら走った。すると目の前で男性の人にぶつかった。ピノは派手に倒れて地面に尻餅をつくと、男性はそれに気がついた。そして、大きな手を差し出すと軽々と両手で持ち上げたのだった。

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