おじさん→女子高生=?

キー坊

目覚めるのは朝だけでいい

目が覚めると病室だった

「え?」
そこで気づいた
なぜ死んだはずの自分は目覚めたのだろうか

「なんで?え?声が...」
驚きと同時に声がおかしいことに気づいた
いくら掠れてるという理由でもまるで女みたいな声が出るのはおかしい

「なんで俺生きてるんだ」
とりあえず声の問題は置いといて原因について考えた
自分は確かに臓器提供に承諾し人生を終えたはずだったのだ
しかも心臓の移植となればまず間違いなく自分は死んだであろう

そして管に繋がれてない左手で自分の胸に手を置いて違和感を感じた

「え?胸?」
感触を確かめるように触るがやはり女の胸のようであった
そして気づいた全身の違和感と特に下半身にあるはずのものがない感覚を

「なんだこれ!?俺はなんで!?」
その叫び声が聞こえたのか看護婦が駆け込んできた

「風見さん!起きたんですか!」
看護婦は自分を見て風見と確かに呼んだ
風見 栞 確か自分が臓器提供した少女の名前だった気がする

「看護...婦さん...鏡...ありますか?」
そう尋ねると病室に備え付けてある洗面台から鏡を外し看護婦は俺の顔が映るように持ってくれた

そこに映ったのは少女だった
しかも写真で見た風見 栞である
写真より少し大人びていてややつり目の大きな瞳に小さな鼻と口、そして酷く白い肌
寝ていて気づかなかったが体を起こした時に主張してきた腰ほどまでに伸びた髪はまるで夜のように綺麗な黒髪で反射する光が青みがかっていた
どう見ても髭が生えたおっさんではなく深窓の令嬢と言った風貌の少女おんななのであった

「そんな...俺はなんなんだ!?」
叫んだ俺は看護婦に宥められ横に寝かされ容態の確認をされ、それから看護婦は出ていった
女になったこと以外は体が重い他に異常は感じなかった
1人になって固まっていると部屋に医師が入ってきた。元の本橋と同じ医師である永瀬だ。

「やあ風見くん目覚めてよかったよ。無事手術も成功して前よりも心臓の活動が安定するようになったし経過も見ないといけないがほぼ異常は起こらないはずだよ。」
永瀬の言葉を聞き成功してよかったという気持ちもあるがしかし喜べなかった
俺はこの子の心を消してしまったのかもしれないのだから

「しかし風見くん、先程聞いたんだがなにか自分に戸惑っていたようだけどなにか異常でもあったのかい?」
この人には言うしかない


「永瀬さん俺は風見 栞じゃないんです」 


永瀬の目を見て答えた。永瀬は俺の言葉がよく分からないのかそれとも一人称の俺に対するものなのか疑問の表情を浮かべている


「俺は...俺の心は本橋です」


ようやく理解したのか永瀬は驚きの声を上げた

「そんな...まさか君は...」

「そうです。俺は風見 栞の意識に入ってしまったみたいです」
驚きの表情を浮かべていた永瀬は流石は医師なのかすぐに考え込むような表情を浮かべた

「信じられない事態だけど確かに風見くんには本橋くんの話はしていない。だから君の言葉は本当なのだろう。
しかしそうなると風見くんの意識はどうなってしまったんだろうか」

「僕はもしかしたら風見くんの心を消してしまったのかもしれない」
そう言い永瀬は悲しみの表情を浮かべた。今言ったことが本当なら1人の少女を殺してしまったということになるのだから

「彼女は...風見くんはよく笑う子だった...。小さい時から病気で苦しんでいたのにあまり弱音を吐かない強い子だったんだ。手術前日にも笑って僕に言ったんだ。『先生に治してもらったらやりたいこと全部やるんです』ってね」
俺は風見 栞を全然知らないが話の通りとてもいい子で元の俺よりも先が明るい子だったのだろう。

「しかしだけどね、本橋くん。君には罪を感じて欲しくない。こうなってしまったのは僕の責任だ。だけどね一つだけお願いがあるんだ」
俯けていた顔を上げそのお願いを口にした

「君には風見 栞の分まで風見 栞として生きて欲しい」
その言葉は俺も心のどこかで考えていたことだった。この子には親も友達もいる。明るい将来だってあったに違いない。こんなどこにでもいるおっさんとは比べ物にならないほど未来は明るいのだろう
1度は失った命この子の為に命を注ごうと
その決意を永瀬に向かって口にした

「俺は...いえ私は風見 栞として生きます」
もう口にしたのだもう後戻りなどできない。まあもともと戻る道などないのだから。
俺はこの子の代わりとして生きていくことしか選択肢はない

「君は強いね...。うん!僕も全力でサポートするよ!」
良かった、永瀬は自分を責めていただろうけど俺はこの人に感謝しなければいけないのだから。だけどそれは風見 栞として俺が生きていくことで永瀬の為になると俺は、永瀬の笑う顔を見て思ったのだった

「差し当っての問題は君に風見 栞としての記憶がない事なんだ」
先程の笑顔から一転真面目な顔に戻ってそう言う

「だけどこれに対しての対策はね一応あるんだよ」


「君には記憶喪失になってもらう」


一瞬自分の記憶を消されるのかと考えてしまったがそうじゃないとすぐに考えた

「風見 栞は手術の影響で記憶を失ってしまった。つまりそういうことにしないといけないんだ」
だがそうすると風見の両親などはは悲しむだろうと。
その心配が伝わったのか永瀬は苦笑いを浮かべながら答えた

「こうなってしまったのは僕のせいだ。少なくともご両親には僕は糾弾されないといけない。だから君は気にしなくていい、これは僕が背負うべき責任なんだ」
お前のせいじゃない!と伝えようとしたが決意に満ちた目を見て俺は言うことができなかった

「でも永瀬さんあんただけの責任じゃない俺にも代わりに生きていく責任があるんだ。あんた1人で背負うな、俺達はお互い背負わなきゃいけないんだからな。」
俺は笑顔を浮かべ左手を伸ばし永瀬の頭を撫でた


「君、前はモテたろ?」
目の前のニヒル笑いした医師程ではないに違いない

そして今日俺は風見 栞として目覚めた

コメント

  • Coro

    面白いっす!

    0
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