ちょびっとだけ。

 この作品は天真爛漫で明るい、結音(ゆいね)とクールで優しい幼馴染、律(りつ)の七転び八起きの30年の物語。
 
 同じ病院で同じ日に生まれた二人。生まれてすぐに隣にいて、共に成長してきた二人。思い立ったらすぐに行動を起こす危なっかしい結音を助け、支える律。それが二人にとって一番良い関係だと、これで良いと、そう思っていた…。
 
 天真爛漫な結音ですが、誰よりも怖がりでそれでいて強がりです。傷つきたくない、傷つけたくない、文字だけで描かれた物語、文字だけで描かれた結音ですがそんなところは私達に本当に共感されるキャラクターだと思います。律は結音にとってはお兄ちゃんのようなヒーローのような存在です。勉強も運動もでき、容姿端麗、この小さな田舎町の大きな期待の星でした。ですが自分に自信を持てず、臆病で不安に弱く、結音のヒーローでいることで自分を強くさせてもらえてるというところがあります。二人の間にある長い長い思い出の記憶と新しい感情という境界線。二人はお互いをどう大切にしていくことを選ぶのでしょうか。そして結音、律を見守る温かい家族にもご注目いただきたいです。
 
 タイトルの「ちょびっとだけ」というのは結音の性格から繋がっています。小さい頃から持病で体が弱かった結音が、自分よりお母ちゃんが怖がっているのを見て、私が泣いてはいけない、怖がったらいけない、そういう責任のようなものを感じている人間です。でも律のそばにいると安心してしまい、涙が出てしまう。そんな時に結音が使う言葉「ちょびっとだけ」。他のたくさんの場面でも結音がその言葉を発することで家族を、律を、私達を前向きに、勇気を与えてくれる、そんな言葉をタイトルにしました。
 
 それでは是非最終話までお楽しみください。