モンスターのスキルを奪って進化する〜神になるつもりはなかったのに〜(修正中)

刺身食べたい

第28話:豹変

 執務室から出たあと俺は聞いた。

「何処に行くのですか?」
「これから庭に向かいます」

 相変わらず、丁寧な言葉遣いの人だ‥‥‥数間前にあったばかりだから丁寧も何もないけど。










 父さんの執務室から歩いて外にある庭に出た。庭には色とりどりの花や植物があった。俺には花の良し悪しなんてわからないが、素人が見ても綺麗と思わせる見事な配置だ。

 とまあ、花を見るのはここまででいいだろう。今は花を見るために庭に来たわけではない。
 しかし、なんで剣術の指南をするのに庭にくる必要があるのかと思って歩いていたが、ある場所に着いたら「ああ、そうか」と納得した。

 理由はその場所が前世の学校の運動場よりは小さいが、体を動かすのに適しているほど開けていたからだ。

「ここで剣術の練習をするのですか?」
「そうでーーああもう、めんどくせぇ。タメ口で話すぞ」
「‥‥‥」

 ‥‥‥。はっ!危ない。今一瞬、意識が飛びそうになった‥‥‥その原因はバークス先生の突然の豹変によるものだ。

「あのー先生‥‥‥どうしたのですか?」
「あ?何だよ」

 怖い‥‥‥すごく。何というか‥‥‥凄みがある。それでも俺は意を決して聞いた。なんだか今日はビビってばっかりだな‥‥‥父さんの謎のオーラやバークス先生の謎の凄みに。

「いえその‥‥‥口調が‥‥‥」
「あ?‥‥‥あ、すまねぇな。俺は本来こういう口調だ。ビビらせたならすまなかった」
「い、いえ‥‥‥」

 なんだ‥‥‥元の口調に戻っただけか‥‥‥てっきり、突然グレたのかと思った‥‥‥。

「よし、これから坊主に剣術の指南をする。指南といっても、スキルで剣の振り方ぐらいは分かる。だから俺が教えるのは、素振りの仕方とかだ」
「最初から鉄剣なんてもたせたら怪我をするかもしれないから、取り敢えずこの木剣を持て」

 そう言ってバークス先生は俺に茶色い剣を渡した。俺は木剣を受け取った瞬間、あまりの重さに木剣を地面に落としそうになった。

「‥‥‥お、もい‥‥‥」
「重いのか‥‥‥よし、素振りをやめて筋力をつける訓練に変えるか」

 バークス先生が何かを話していたが、正直、木剣がが重すぎて落とさないようにするのに必死で全く話を聞いていなかった。
 そろそろ、腕が限界‥‥‥と思っていると、バークス先生が手を伸ばして木剣を片手で掴んだ。

「はぁはぁはぁ」

 やっとの重労働(?)から解放された俺は倒れこむように地面に座った。

「重かったか?少し休憩しとけ」
「は、はい‥‥‥」

 休憩しろという指令が出たんだ。ここは素直に休憩しとこう‥‥‥。









「休憩は終わりだ」

 もう休憩はおわりなのか‥‥‥もうちょっと休みたい気もするけど、結構休憩した気もするから訓練に戻るか。

「さっきので坊主には筋力がないのがわかった。だから剣術の指南の前に筋力をつけるために『腕立て伏せ』をしてもらう」
「腕立て伏せ‥‥‥ですか?」
「そうだ。腕立て伏せを知っているか?」

 知ってるーーと言いたいところだが、5歳児が腕立て伏せを知っているのはおかしいと思う。仮にここが前世だったら知る手段なんて一杯あるけど、この世界ではその類いが書かれた本は一度も見たことないから存在してないだろう。俺が知らないだけで存在しているかもしれないが。

「知りません」
「今から俺がやるのを見て後で真似しろ」
「分かりました」

 バークス先生は腕立て伏せをし始めた。一人で。暫く見ていたが、なんて事ないただの普通の腕立て伏せだった。準備体操時にやるようなやつ。
 流石に観るのにも飽きてきたな。俺もそろそろ始めよう。

 俺はバークス先生の横で、腕立て伏せを始めたーーのは別にいい。いいのだが‥‥‥1回も出来ない。両手を地面について、体を曲げようとするとなぜか倒れてしまう。その前に待機状態の時には腕がプルプルと震えて曲げることが出来ない。‥‥‥何言ってんだろう、俺は。

「おいおい、なんだよその無様な様はよぉ~。敬語なんか使ってお高くとまっている貴族様には運動も出来ないんでちゅね~。お前と同じ5歳のやつら、最低でも10回は出来るぞ~」

 ‥‥‥何だこいつ‥‥‥なんか、すごく腹たつ‥‥‥。

 こっちは一生懸命、頑張ってんだよ。なのに何でそんなモチベーションを下げるようなことを言うんだよ。そこはもう少し「頑張れ」とか言うところだろ。‥‥‥怒りっぽいのは何が原因かは知らないけど、今はそんなことはどうでもいい。

 『殴りたい』‥‥‥ただそれだけだ。

 堪忍袋の尾が切れるほど、貶された俺は逆上してバークス先生ーークソ野郎に向かって殴りにかかった。が、当然身長差や体格差といったものが劣っている俺は片手で動きを止められた。

「悔しいかぁ?悔しいなら20回は出来るようになってみろよぉ~」
「やってやる!!絶対に20回以上出来るようになってやるッッッ!!」

 啖呵を切った俺はクソ野郎からの拘束を解いて激しい怒りを感じながら自分の部屋に向かって走った。

「なんだよ‥‥‥絶対に見返してやるッッッ!!」

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