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友だちといじめられっ子

咲葉

1

 少女は、薄暗い教室の窓辺に立ち、ぼんやりと外を眺めていた。


 教室には、少女一人。


 暫く外を眺めていた少女は、教室を片付け始めた。


 不規則に並んだ机を並べ直し、ロッカーの上に散乱したクシャクシャになったプリントやパンの袋を片付け、大分ホコリの残った床までも掃除した。教室はみるみるうちに綺麗になっていった。


 教室の片付けが終わった頃、下校時間を伝えるチャイムが鳴り、少女は急いで荷物を持ち、教室を後にした。


 それから数日後、少女の席は空いていた。その次の日も、また次の日もずっと。
 少女は学校に来ていなかった。来れずにいた。




 ある朝のこと。


「おはよー」


 少女は、いつも通りに学校に行き、いつも通りに挨拶をした。


 ──でも、いつもは帰ってくる挨拶が聞こえず、少女の声で少しだけ静まった教室も、直ぐに騒がしくなった。


 それは、少女にとって一週間ぶりの登校だった。
 一週間体調を崩し、少女は学校を休んでいたのだ。その一週間で雰囲気が変わったのだろう、と思っていた。


「あ、休んでいた分のノート、見せてもらってもいい?」


 ふと思い出したように、少女は、何気なく聞いた。席も近く、仲が良かったはずの子に。


「えっと、ごめん」


 その子は何故か、そそくさと少女の元を去って行った。
 少女は不思議に思った。休んでいた間に、何があったのだろう、と。


「おはよー」


 次の日も、その次の日も、少女の挨拶に返事はなかった。何があったかを尋ねても、答えが返ってくる事もなかった。


「私、何かしたかな⋯⋯」


 部活をしていなかった少女は、学校で一人になった。やがて、教室にも行きづらくなり、教室は愚か、学校にも行けなくなった。




 行けなくなって一ヶ月程がたった頃。「保健室登校でいいから」と、言われて少女は、学校に行くことにした。


「お、おはようございます」


 保健室に行くと、先生が笑顔で少女に言った。


「おはよー、加奈ちゃん」


 少女は嬉しかった。挨拶を返されなくなってから、挨拶するのが怖かった。保健室は、とても安心出来た。誰かに無視されて辛くなることもない。先生と話をしたり、勉強したりするのは楽しかった。


 でも、保健室に他の生徒がいる時は、決まってカーテンを閉めたベットにいた。気付くと少女は、生徒に心を開く事が出来なくなっていた。
「教室、行ってみない?」と先生が尋ねても、少女が縦に首を振ることはなかった。


 教室に行けなくなった理由は話していた。
「皆ももう、反省していると思うよ?」
そう言われても、また同じことをされたら、と少女は怖かった。




「先生、私、明日行って見ます。教室に」


 ある日、少女は先生に、そう告げた。


「そっか。無理そうだったら、いつでもおいで」


 先生は、笑顔でそう、少女に行った。




 次の日、少女は、久しぶりに教室へ行った。教室に行くのは、もう五ヶ月ぶりだった。


「お、おはよう」


 恐る恐る教室に入り、そう言った少女。


「おはよう。久しぶりだね」


 挨拶が返ってきた。それだけでも少女は、とても嬉しかった。少し、ほんの少しだけ、安心した。


 放課後、少女は自分一人になった教室を見回した。ロッカーにはプリントやゴミが散乱し、机もバラバラに並んでいた。


「よしっ!」


 少し気合を入れる少女の声が、誰もいない教室に響き、少女は片付けを始めた。散乱していたロッカーを片付け、バラバラの机も綺麗に並べた。


 その日から、少女は毎日、学校に来るようになった。少女はそれから毎日のように教室の片付けをして帰った。


 それは、誰も居なくなった後に、一人でやっていた事だった為、クラスメイトは誰も、少女のしている事を知らなかった。綺麗になっている、と気づいても、先生の誰かがしたのだろう、と思うだけだった。

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