異世界生活物語

花屋の息子

騒動の訪れ

 軟化の魔法のお陰で、まげわっぱ用の薪が簡単に薄板に加工できる事は、非常に高効率になったのは良いのだが、需要と供給で需要の方が上回っている現在、この状況をどうにかしない事には、焼け石に水的な感じが否めない。


「御免、西区の守備隊の者だが、軟膏を受け取りに来た」


 玄関前で高らかに納屋まで聞こえる通る声で、口上を述べてくれるのは聞いているこちらが恥ずかしくなるので、止めて頂きたいが南以外の隊は、皆さん口上を述べる伝統のようだ。
 対応している母さんは、あまり気にしていないようなので、これが気になるのは俺だけなのだが。


「北面守備隊の者だ。軟膏を至急用立てて貰いたい」俺の精神地獄を、本格的に肉体へと落とし込んだのは、その口上で、ようやく忙しい事に体が慣れ始めて来たと言うところに、北の守備隊は爆弾を投下してきたのだ。
 領軍の納品は毎日方面別に、引取りに来て貰うようにしてあり、南北西で一巡するようにローテーションを組んでいる、全隊の納品を、纏めたりなどした日には、途轍もない事になると、日を分けていたのだし、北軍が取りに来るのは明日の予定になっている、トラブルの香りがプ~ンとして来そうな口上でもあった。


「北はどうした?」
「南面の者だな。火急の用件により、これをこちらに譲ってもらいたい」
「こちらだって必要なのだ、横入りは困る。そちらは明日の予定だろ」
「だから火急と言っているではないか」
「これで無くとも新たに作って貰えば良いだろう」
「今すぐに必要なのだ」
「少しお待ち下さい、今エドワードを呼んでまいります」


 対処できなくなった母は、慌てて俺を呼びに・・・とは言っても、トラブルの声で母屋の方に来て、聞き耳を立てていたので、怒られる前にと廊下に飛び出たのだが、母にはばれていそうな感じで、『聞いていたわね~』と、目が若干釣りあがった感じであったが、夕飯抜きにはしないで貰えると在り難い。


「お待たせしましたエドワードです。大きな声でしたので、大体の感じは聞こええていたのですが、お急ぎとは、いかが致しましたか?」


 北の人は、この子供がと言う目線を向けてきたが、少しオーバーに言ったものだから、冷静な南の人は面食らった感じだった。
 どちらも子供扱いとは、失礼なおっさん達だ。子供だけど。


「では話が早いな、南面の者に新しいのを作ってやってくれ」
「何を言っている!お前が新しいのを作って貰えば良いではないか」
「解からんヤツだな、何度言えば気が済むのだ」
「お前こそ・・・」


「シャ~ラ~プ」思わず英語も出来なかったにもかかわらず、大きな声を張り上げたのは、黙れと言う日本語ではなく、英語のShut upだったのは、お恥ずかしい事だ。
 もちろんこちらの人に意味が伝わることは無く、子供が大声を上げた用にしか見えなかったのだが、注意がこちらに向いた事は、一先ず成功と言えるだろう。
 さてどうなる事やら、どちらの言い分を聞くにしても、時間と手間は掛かるんだけどな~

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