異世界生活物語

花屋の息子

ようやくの完成

拾った鏃は人には見せずに、腰巾着へとしまった。人目にさらすのは試験運用が終わった後で、お披露目すれば良い、弓矢の知識の無い人たちに説明した所で、???と頭の上にはてなマークを浮かべられても、説明のしようが無いのだ。
洗い物は着々と進んでおり、綺麗にされた形がそれぞれの鍋は、良い色合いを皆の前で披露していた。
これほどのモノを俺一人が占有するのは申し訳ないと思えるが、油脂生産には欠かせない物なので勘弁してもらいたい。
天秤棒で水を運んできたおっちゃん達も、うっとりとしているがノンスタイリッシュなゴリラのうっとり顔など誰得だというのだ。まったく、需要は美女の呆け顔・・・何故そっちは無いのだ。
くだらない事を考えながら鍋の状態をチェックするが、金属被膜?のおかげか水漏れも無く全てが使用可能な状態であった。
「これは義兄も巻き込んで、既成婿として手伝ってもらっても良いのではないか?」
3~4年は早い気がするけれども、そもそもいきなり子作りに勤しむ訳ではない、同い年同士で結婚した者のような例外を除けば、そちらの事は御預けで適齢期になるまでは自分達の食い扶持を稼ぐ事で精一杯、嫁にしろ婿にしろ相手の実家に入った者は、転がり込んだヒモと大して変わらない、まずは自分の食い扶持の畑を開墾しなければならず、その後子供を食わす畑を広げてようやくという流れだ、そうしなければ子供が生まれたところで食わす事が出来ないのだから。
しかし畑作業以外でも、今回の油脂業のような仕込みが必要な仕事であれば、早くからウチに来てもらって仕事を覚えながら、製品精度を上げて金を稼ぎ生活の安定をしたところで、結婚という運びに持って行く事も良いのではないだろうか。
ウェイン義兄さんにしても、ここ数年の内にはウチの畑を広げる事になっているのだから、早く来てもらう事には問題も無いだろう。
俺の軟膏にしてもハッキリ言って荒削りな商品なのだから、このまま売り続けるには日本人のキョウジと言うヤツが許さない、精度の上昇は急務と言えるし、一生軟膏だけを扱うのもどうかと思うので、別の新商品の開発もしなければならない、3~4年などあっという間だ。多分。
出来上がったばかりの鍋を前に、そこまで姉夫婦の将来設計を描いてあげる、なんとも出来た(いらぬおせっかい)な弟な事か。
そんな妄想に浸っていると、洗いが終わったようで声がかかった。
「エド帰ってお祝いよ」
「これでやっと開放されるな」
「かあちゃんにせっつかれる事も無くなるな」
「アンタ聞こえてるよ」
「わはははぁ」
にぎやかな事だ、粘土探しから、一度目の失敗を経て、軍備品にも手を出して、ようやく辿り着いた鍋の完成、なんと長かった事か。
それも元はただ時計代わりのろうそくを作った、蛇足部分からスタートしただけのモノだったのだけど、なんと大事になった事だろう、みんな有難う。

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