異世界生活物語

花屋の息子

何度見ても馴無いものは・・・

 カンッカンッ小気味良い音が響きわたり伐採が始まった、無粋な前世のチェーンソー伐採の音と違い、斧での伐採は風情が感じられる、もっとも、その風情と引き換えにスピードはとんでもなく遅いのが、悲しい所ではあるのだが。
 俺はそんな音の外側で、待機中である。
 回復軟膏をそばに置きながら怪我人を待つのは、意味の無い事に思えるのだが、俺以外の救護班員が伐採に行ってしまったので、結果俺が一人救護班になってしまったのだ。
 今回の伐採で前回と大きく違う所は、集積地が防護柵内側に設けられている点だ、木の方を運ぶよりも焼き物の素地を運んできた方が、効率が良いとの意見が採用された結果、現集積地である未開墾地を使う事で、前回のように集落の広場まで運ばずに、作業の効率を上げようと柵の内側に設けられた臨時集積地兼野焼き場に置く事になった。
 さらにもう一つ違う所がある、それは枝葉がそのまま残されている事だ、三角ホー製作時に使用した簡易乾燥術が、今回も再利用される事になっているため枝葉はそのまま残されている。
「風で水抜きしちゃうと、運ぶ時には軽くて良いけど魔力切れで量が切れないし、そのままだと量は切れるけど重たい、良いとこ取りとはいかないな」
 水抜きに関しては安全な柵の中で、女性陣や年寄りが担当する予定が組まれている。
 いくら護衛部隊がいるとはいえ、柵の外で万が一にも敵に戦列を抜かれてしまえば、戦力の無い乾燥隊は危険が伐採隊のその比では無いからだ。
 それを補うために乾燥隊に厚い護衛戦力を貼り付けた場合、伐採隊の護衛が手薄になるので、それではなんのための護衛部隊なのかが解らなくなる、無駄に危険を増やすのであれば重量がある生木を運び込む手間をかけた方がまだ良かった。
 しかしそれも、このシュールな光景の前では、たいした手間には感じられ無いのが笑えるところなのだが。
 俺の目に映るのは、小型金剛力士の軍団なのだ。
 身体強化でムキムキマッチョになったおっちゃん達が斧を振り上げ、生身なら数人係で持ち上げる伐採木を、二人で大八車にくくり付けて運んでいく、その光景はこの世界の人からとったら日常でも、俺にはポカンっと口が開きながら「ははは」と笑いが洩れてしまう。苦笑いと言うよりもあきれ笑いの率が幾分か増した笑いだ。
 そんな小型金剛力士が力を使わない時には、元のおっちゃんに戻り、また金剛力士にと電源スイッチの様に切り替えながら働く姿には、流石にシュール以外の言葉が浮かばない、流石にカチカチと切り替えている訳ではないが、そこには魔力操作の妙技のようなものを感じ取れた。
「エコ魔力は、解かるけど、・・・器用過ぎるだろ。これでファンタジー並みの魔力があったら、そこいらの農家のおっちゃんでも副業にC~Bの冒険者出来るんじゃね・・・」

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