異世界生活物語

花屋の息子

手当て開始

 聞いた事の無いスケールボアなる、魔獣?魔物?の襲撃で傷ついた兵士達が運ばれていたのは、南門そばの開けた場所で、死人が出なかった事が幸いしているのか、野戦病院ほどの鬼気迫るものは無い状態、トリアージで言ったら緑とか黄色に分類されそうな怪我を負った者達だった、小さな怪我の内に戦線離脱させて、死者を出さない戦法なのか、それとも大怪我を負った者達は別の場所にいるのか、俺の心情からしたら生死の境みたい人間を見るのは、心が耐えられそうに無いので助かる話だ。
「ニパーチ、こんな所にガキ連れて来るって何考えてんだ、ヤツが来るかも知れねんだぞ」
 怪我人に肩を貸しながら重い足取りで、こちらに下がってくる男が、デカイ声を張り上げてきた。
「ホルトマン!、こちらはエドワード君、クライン殿のお孫さんだ口を慎め、エドワード君申し訳ないね戦いで気が立っているんだ」
「大丈夫です、それよりも早く傷の手当てを、回復魔法より時間がかりますから」
 声を張り上げたおっちゃんに軽く礼をして作業を始める。
 じいちゃんが少し離れた場所に居たせいか、ただのガキ扱いにされてしまったのは、仕方の無いことかも知れないが、ニパーチと呼ばれたおっちゃんも、いつ戦闘に撒き込まれるか分からない場所に来た俺の事を、考えてくれての事だろうと思うし。
 医療的な考え方からしたら逆だが、軽傷者から見ていく事にした、それなりの怪我ををした人は、かなりの時間をかけなければ回復しないのだし、自力でも動ける程度の人であれば、戦闘終了までに回復を終えて再度前線に戻る事もできるかも知れないからだ。
「ニパーチさん、さっきの箱を貸して下さい」
 そういってクリームを受け取ると、指先ですくい取り患部に塗りつけていく、軽傷と言ってもやはりアカギレ程度とは比べるレベルで無いほど傷は深く何箇所も付いている、塗ったクリームがしみたのか少し顔が引きつる。我慢してくれてるんだろうな。
「これでこのまま押さえて置いて下さい、ニパーチさん、このくらいの傷でしたら、指先に付くくらい塗ってもらえば十分です、僕はこっちからニパーチさんはそちらをお願いします」
 左右に分かれて次々に傷の手当を行い、本当の軽傷者は5分程度で見終わった、20人くらい診ての5分なら早いと言えるんじゃないかな。
 次に控えている人たち、言葉の意味は違うが”中傷者”、トリアージレベルイエローの人たち、骨は見えないけどと言った怪我を負っている人たちだ、肉が裂けて血が滴り落ちている、ボアって言っていたからイノシシの仲間なんだろうな、牙でえぐられたと考えるなら順当な裂傷だろう。
「我慢して下さいね」
 先ほどより多めのクリームで傷口を埋めていく、光景だけ見れば車のパテ盛り・・・人を車に見立てるのはデリカシーが無かったか、眉間にしわを寄せながらグとウの中間音が洩れるが、痛みには耐えてくれそうだ。
「傷口が塞がるまで、動かないようにして下さい」
 包帯とかあれば便利なんだけど、その辺は姉ちゃんに考えてもらうとしよう、これ以上はオーバーワーク過ぎる。



「異世界生活物語」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く