異世界生活物語

花屋の息子

完成、やっぱり異世界だな

 油を掬った水はもったいないから、そのまま再利用する、何か溶けていてもあまり変な事にはならないだろう、この骨から作るものはズバリ骨粉だ。
 畑用の肥料源として利用できるのではとの発想だ、本当は硫酸で処理した方が良いらしいけど、硫酸なんて手に入らないしここはただ骨粉としての利用が、手っ取り早くて良いだろう。
 植物が育つ肥料の三要素窒素とリン酸にカリウム、窒素は排泄物から補給されているし、カリウムは灰を撒く事で補っている、しかしリン酸は排泄物中に含まれているもの意外では、補給されていない。
 現状以上のものとなると、単純に思いついた物はこの骨だ、骨はリン酸カルシウムで構成されている、これを畑に撒く事で今まで以上の実りが期待できるはずだ。
 しかも煮て砕くだけと、作り方も超が付くほど単純にして、廃棄されている物のリサイクルにもなる、煮る手間分はかかるが、それを補う収量は地球の歴史が証明してくれている、地球でもこの世界でも骨の構成が同じであれば、確実に成果は上げられるばず。
 グツグツ強火で煮る小骨は、激しく鍋の中で踊っている、リン酸カルシウム骨格以外を煮溶かして、排出させるのが、この作業だから鍋の中で踊るのは、一番良い状態なのだろう。
 夏の室内でいくら窓などを開けているとはいえ、ガンガン火を上げるカマドの前は、一種サウナの中と言えるほど汗が流れ落ちる。
 鍋の中は透明だった水が、次第に濁り黒いスープに変わり始めている。
 油を煮た時もそうだったが、こんな濁った原因物質が入っている物を、日常的に食べていて体に変調をきたさない事の方が驚きだ、泥水を日常的に飲まざるをえない、発展途上国ですらお腹を壊すと言うのにだ、俺の常識で濁ったものは危ないと思っているだけで、この濁り自体には悪影響が無いのかもしれないが、どう見ても安全そうには見えないんだよなこれ。
 骨からは、灰汁はあまり出なかった、油の時は中に血が混じっていたせいも有るだろうが、骨にだって骨髄などが含まれているのだから、表面を拭った程度で灰汁が無くなるとは思えない、まさに魔法みたいだな。
 濁ったスープが取れてしまった訳だが、朝日がしっかり上った辺りを見ると、2時間以上は煮たと思うので、このあたりで完了しても良いだろう。
 所詮は手羽先の骨程度しか無い小骨だ、これ以上煮たところでと言ったところだろう。
 そう思い持ち上げようと匙で触れた時だった、ホロっと触れた所から崩れる、柔らかい、石か何かで叩き崩す事を考えていた俺としてはありがたい事なのだが、ここまで柔らかくなど成る物なのだろうか。
 どれをとっても不思議に満ち溢れていて、タイクツさせない世界だことだとほくそ笑んでしまった。
 まあ何にせよ、目的とした油と骨粉は完成した。

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