異世界生活物語

花屋の息子

肉屋の騒動1

「終わったから、お買い物行くわよ」
待ちに待ったって言っても作業していたから時間的には待ってもいないのだが、やっと懸案の主原料調達に行ける、器もある燃芯も作った、後は油だけだったのだから。
「ちょっと待ってて~、今行く~」
作業台の上にある燃芯の束を片付けて、散らばったゴミを下のゴミ箱に落としてスペースを確保した、これで脂身を持ってきても作業台に置けると言う訳だ、食べる物でも無いので地面に置いても問題は無いのだが、そこは気分の問題だと思う。
「お肉屋さ~ん、お肉屋さ~ん」
テンション高めなヘンテコソングを歌いながら母の元に駈けて行った。
獣脂灯明の話はしていないので、母からすれば「またウチの子は変な事考えてるわね」って言いたげな顔をしていたが、そこはご愛嬌という事にしておこうじゃないか。
「今度は何を考えているのかしら?」
ビンゴ、若干ジト目と言う物をしながら、何でウチの子はこうも変な事を考え付くの?と言われないだけましと思っておこう。
「ママ、僕を変人みたいな言い方しないでよ」
「まあ、危ない事でなければ良いけど、気を付けるのよ」
そんな事を言われながら、今日の夕食のメインになる肉を買いに、俺は脂身を貰いに、向かった肉屋で相も変わらずテンションだだ下がりの店主が、若いアンちゃん達に絡まれていた、貧相なおっちゃんに若いのが3人とか、オヤジ狩りか?といった光景だ。
「…だとしても何でファングラビがそんな値段なんだよ」
「だからね、何度も言うけど血抜きが悪すぎて肉は食べられないし、ズタズタに傷だらけで皮も駄目では、買い取り自体出来ないんだよ、さっき言ったこれは歯の値段なんだよ、本来なら解体費用を貰いたいくらいなんだ」
持ち込んだのは、なりたての戦士モドキだろう、持ち込まれた化け兎は何度も剣撃を繰り返され、それもどれも浅く致命傷にならない、ただいたずらに皮をズタボロにしただけの、稚拙な攻撃でやっと倒した感が漂う、素人の俺が言える話では無いが何ともお粗末な一体だった、血抜きが悪いと言っていたが、血抜きの悪い肉など、誰が好き好んで食べると言うのか、昔鉄砲撃ちをしていた猟友会のおっちゃんに、玄人と素人の仕留めた肉を両方貰った事があったけど、素人の方は噛めば噛むほど臭みが広がるマズイ肉だった、この兄ちゃんのウサギもそんな肉だって事なんだろう、いつも肉屋に売られている量からしてこれを買う人間なんか居ないから、これをを食べるのはこの世界では魔物くらいしか居ないだろう。
「そんな事言って、儲けるつもりなんだろ、まだ駆け出しだからって馬鹿にすんなよ」
「そうだぞ、いい加減な事言うんじゃねぞ」
「ちゃんと買い取れ」
本当にオヤジ狩りにしか見えない光景に、マジの不安を覚える、どう見ても俺達が助っ人に入ってどうこうなる感じでも無い、おっちゃんピンチ、どうなる俺の脂身!!!

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